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【短編小説】読心薬

ある日の夕方、浮かぬ顔をした青年が街中の小さな薬屋を訪れた。 その青年が店に入ると、「あら、この間のお客様ではありませんか。この間の風邪は治りましたか」 と、店主は商売用の笑顔で青年に話しかけてきた。 「ええ」 「今日はどうされました。また、風邪か何か」 「・・・」 「では、便秘か何か。でなければ、歯痛とか頭痛とか」 「・・・」 「さては、痔とか」 だが、いくら店主が尋ねても青年は首を横に振るばかりであった。 「もしかして、お客様。恋患いか何か」 と、店主が冗談混じりに云うと、青年の肩がピクリと動いた。それを見た店主はニャッと笑った。 「いくら何でも、こんな薬屋に恋患いに効くような薬など置いてないとお思いでしょうが、ところが、当店にはとっておきの薬があるんですよ」 と云って、店主は店の奥から黒い薬瓶をを出してきた。 「これなどはいかがでしょう。これを飲めば、人の心を読むことができますのでお客様の悩みもすっきりと解消すると思いますが」 だが、青年はその薬瓶を手にとりながらも、「読心薬」と、疑い深げに店主の顔を見た。 「別に怪しげな薬ではないので副作用などははありません。ただ、お値段の方が少々お高くなっていまして、はい」 と云って店主は、高額の値段を青年に提示した。 いきなり、青年は財布から一万円を数枚出した。 そして、それを店主の目の前に置くと、その薬の瓶を開けその中の錠剤を一粒、口に入れた。すると、店主はいささか慌てながら、 「お客様、いま飲んだからといって、いま効くような薬ではないのです」 と、云った。 ところが、青年には、にわかに店主の心の中が、読めたのだ。 (しめしめ。こ
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