甕星(みかぼし)とミカエル ― 火水(カミ)の神、そして水火(ミカ)の鏡 ―
茨城県日立市。大甕(おおみか)神社の名に刻まれた「甕(みか)」という文字。それは単なる土器の名ではなく、光を封じ、神性を宿す器として、古代人の深い意識に根ざしていたのではないでしょうか。社伝によれば、かつて天に背いた星神(ほしがみ)――天津甕星(あまつみかぼし)、別名天香香背男(あめのかがせお)がこの地に封じられたといいます。鹿島・香取の二柱の武神でも鎮められなかった荒ぶる星の力を、最後に武葉槌命(たけはづちのみこと)が討ち、磐座に封じたそうです。それが、大甕(おおみか)神社の「宿魂石(しゅくこんせき)」として伝えられています。この「封じ」「星」「甕(みか)」「荒魂」という四つのキーワードは、まるで宇宙的なドラマの断章のように感じられます。神が創造した秩序と、人が挑んだ光。その緊張の狭間に、「甕星(みかぼし)」の物語はあるのです。✴ 甕星(みかぼし)=金星=堕天の光古代の星神「甕星(みかぼし)」は、しばしば金星(明けの明星)と重ねて考えられています。明けの空でひときわ強く輝く金星は、夜を切り裂くように光を放ちながらも、太陽の光に溶けて消えていきます。西洋では、この金星をルシファー(Lucifer)=光をもたらす者と呼びました。美と光の象徴である一方で、「神に背き、天から落ちた存在」として――光の裏側に“傲慢”と“堕落”の影を併せ持つ存在とされたのです。古代オリエントでは、金星はイシュタル/アシュタルトの女神の象徴でもありました。愛と戦い、創造と破壊という二つの相反する性質を併せ持つ神として崇められていたのです。その流れを辿ると、甕星もまた、「天界に背く光」「封じられた創造衝動」
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