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連続小説『DNA51影たちの黒十字』19

連続小説『DNA51影たちの黒十字』19連続小説『DNA51影たちの黒十字』第19回Rosalind Franklin Photo51Rosalind Franklin Photo#51  20       第174回ダービー覇者の凱旋★★★★☆★★★★☆★★★★☆★★★★☆ オリオールのいれ込み仕草が依然と続いている状態の中、ダービー競走スタートの火蓋は切って降ろされた。 エプソム競馬場のコースは “Cニ” の文字型が描く蹄鉄図形のようなルートとなっていて”C二“ 文字型の右上端からスタートして暫く長い直線馬場が続く。この直線馬場を3歳の若駒たちが一群となって突き進んで行く。 発進直後は好発進のシティースキャンダルがリードし、二番手にエンペラーハニーが付けるという体勢だ。その後ろの馬群の中の7番手にピンザ、更にその後ろ中段馬群の中にオリオール。 スタート後の長い直線が終わってルートはカーブして左回りのタッテナムコーナーにさしかかる。ここの時点で先頭はブリンカーを着装したゼッケン12番のシーカンプールに取って替わった。オリオールは依然として中段の馬群の中だ。鞍上のハリー・カー騎手は馬群の中に敢えてオリオールを入れることで馬を落ち着かせようとしているのであろうか・・。 長いコーナーの曲線馳走では4馬身差を取ってシーカンプールが先頭で通過していく。 最終コーナーを抜けて最後の直線ルートに馬群が入ると2番手まで順位を押し上げて来たゼッケン2番ピンザがロングスパートの猛追をかけてきた。 最終直線の半ばで遂にシーカンプールをかわしたピンザが先頭へ踊り出る。 最終直線半ばでオリオ
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連続小説『DNA51影たちの黒十字』17

連続小説『DNA51影たちの黒十字』17(続ロザリンド物語)  小説『DNA51影たちの黒十字』(続ロザリンド・フランクリン物語) 〜17〜Rosalind Franklin Photo51Rosalind Franklin Photo#51   18         戴冠式からダービーへ★★★★☆★★★★☆★★★★☆★★★★☆ 1953年6月2日。エリザベスⅡ世戴冠式がウェストミンスターの地を中心に執り行われた。重く大きな冠を頭に被せられて華奢な新女王の首は動かせない状態となりつつも、エリザベスⅡ世は正式に国王として即位する儀式を全うしたのである。この儀式には世界各国からの要人が多数参列して豪華なる王族外交が繰り広げられ、日本国からは昭和天皇の名代として19歳の若き皇太子殿下が式に参列した。 大英帝国の威光を受け継いでいるかのような盛大なる戴冠式の4日後・・・。 新国王即位式の余韻が多分にまだ市中内に残り漂う中、新女王エリザベスⅡ世27歳はロンドンの近郊リッチモンドから約20kmほど南方に位置したエプソム競馬場にその姿を現わした。 伝統の第174回英国ダービー開催である。競馬場には朝から何万人ともみられる観衆が詰めかけていた。その大群衆に囲まれるなかを来場してきたエリザベス新女王はロングドレスにロングのブルーコートを身に纏いロイヤルスタンドへ向かってターフ内を外ラチ沿いに歩いて行く。 ロザリンドはスミス・サミュエ商会の用意したスタンド席からこの様子を眺めていた。 「今日も、まだ、まだ王室の行事が続いているような雰囲気で実に国際フェスティバルの景観ですなぁ」ロザリンドの
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連続小説『DNA51影たちの黒十字』16 (続ロザリンド物語)

連続小説『DNA51影たちの黒十字』16(続ロザリンド物語)  小説『DNA51影たちの黒十字』(続ロザリンド・フランクリン物語) 〜16〜Rosalind Franklin Photo51Rosalind Franklin Photo#51   17        戴冠式とダービー 倫敦大学と賢振寺大学との合同による3論文一挙掲載が雑誌に発表され、エリザベス女王陛下の戴冠式も間近という5月の日曜日。スミス・サミュエ商会のポール・スミスがキングスカレッジ倫敦のロザリンド研究室を訪問していた。ポールもロザリンドもユダヤ人なので所謂キリスト教での安息日・日曜日は特別な日ではなく、キリスト教会に行くこともない。ユダヤ人にとっては金曜日の日没から土曜日の日没までの24時間が安息日となっている。「Nature誌で発表されたロザリンド先生の論文読ませていただきましたぁ〜。いや〜、とても素晴らしい内容の論文でしたぁ〜」ポールはロザリンドをしきりに褒め称える。しかし、ロザリンドは浮かぬ顔。「それがなぁ〜、3番手の掲載ですやん。雑誌の編集はん、何考えてますのやろ。ほんまに困ったもんですがな。あの順番やったら、賢振寺の予想が先に有って、それを補強するような証拠データを倫敦大学が見つけて提示してるような、後追いの格好になりますやん? 研究内容からはキングスカレッジ倫敦の方が先行しておりますのんやでぇ。今回は、その先行するキングスカレッジ倫敦の領域に賢振寺の方が追いかけて来とるんでっせ」ロザリンドは憤懣やる方ない様子だ。「まぁ編集者も商売人ですから、読者にウケる掲載方針ってのがあるのでしょう。
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小説『DNA51影たちの黒十字』(続ロザリンド物語) 〜13〜

小説『DNA51・影たちの黒十字』(続ロザリンド・フランクリン物語) 〜13     14              ニューマーケット奇譚 クリックは驚いているロザリンドに   『新知見』 を一刻も早くロザリンドに聞いてもらって見解が聞きたいので自分から訪問して来たのだと告げると、核酸の様態を分子結合の構造から浮かび上がらせる試みを繰り返していたところ、   “二重螺旋構造“をとっているのではないかとの結論が出てきたと語るのだった。「分子結合を専攻する教授にアドバイスを色々もろうて 模型製作も何回も試みたところ、とうとう・・、 ついに・・・・・・・、なんと、 この ”二重螺旋” に辿り着いたんですわ」 クリックはロザリンドが英国医学研究機構に送った報告書に関する事項は一切語らずに、分子結合の試行を繰り返した結果、二重螺旋構造が表出されてきた事を強調した。「分子結合の試行を何度も繰り返していましてね、 これからは、生物の研究も分子単位で見ていかなあかん、 つくづく、そう思うようになりましたわ。 ロザリンドはん、どう思はります?」そう語るクリックの口調は、何かを極めきった大家のようである。「確かに、微細を見る方向へ行けば、行くほどに、分子に 突き当たりますよってに、そないな視点は大切なんと ちゃいますかぁ」ロザリンドもクリックの考えに意味なく同意した。「この二重螺旋構造の結果でもってワシは論文一本書こう 思いますのんやぁ。ロザリンドはんも今までの研究結果 から一本書きはりません? 倫敦大学と賢振寺大学とで 合同の論文執筆・・なんて、宜しおますやろ?」「はぁ。何
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小説『DNA51影たちの黒十字』(続ロザリンド物語) 〜11〜

小説『DNA51・影たちの黒十字』(続ロザリンド・フランクリン物語) 〜11〜                    12     ニューマーケット密会 ユダヤ系大財閥サッスーン家の准男爵ヴィクター・サッスーン卿がニューマーケットに現れたのは10月のことであった。 ニューマーケットは賢振寺(ケンブリッジ)から20km程東方に位置する町で、田舎の本当に小さな小さな町ではあるのだが、競走馬の馬産地として世界的に有名な町である。 この20km程の距離を京都駅から東方約20km位置で捉えるならば、それは琵琶湖東岸、滋賀県の草津市や栗東市の位置に相当することになろうか。現在、その東方20kmの所、栗東市には競走馬のJRA栗東トレーニングセンターがあるので、京都駅と栗東トレーニングセンター間の距離感覚で考えると、賢振寺とニューマーケット間の距離感が実感できる。 サッスーン卿がこのニューマーケットで手に入れた仔馬ピンザ(2歳)が9月のタターソールセールステークスを圧勝して頭角を現した為、サッスーン卿はすこぶる上機嫌となった。ピンザ号が10月にはニューマーケット競馬場で開催されるデューハーストステークスに出馬するということで、上機嫌のサッスーン卿は知人たちをレース当日に合わせてニューマーケットに招いたのであった。ピンザが翌年の3歳の最高峰レースであるダービーをも狙える程の類い稀なる逸材であると踏んだサッスーン卿はピンザ号を知人たちに自慢したくて仕方がなかったのかもしれない。或いは、翌年にダービー出走が叶えば、優勝が間違いないことを周囲の人々に確認して同意してもらいたかったからかもしれない
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小説『DNA51影たちの黒十字』(続ロザリンド物語) 〜10〜

小説『DNA51・影たちの黒十字』(続ロザリンド・フランクリン物語) 〜10〜         11       スミス・サミュエ商会からの男 賢振寺のキャヴェンディッシュ研究所においてクリックがマックス・ペルーツ博士へロザリンド報告書の件を問い合わせている頃、倫敦大学キングスカレッジのホイートストン物理研究所では一人の男が誰もいない日曜日の朝からひっそりとロザリンド研究室を訪問していた。 秋も酣(たけなわ)。落ち葉の一群がカサカサと舞ってはロザリンド研究室が入居する建物の入り口でたむろしていた。研究室にはロザリンドのみが来室している状態で、共同研究者である学生のゴスリングさえも来ては居なかった。研究室は訪問者の為だけに明かりを灯しているのだった。「わたくし、スミス・サミュエ商会のポール・スミスと申します」と訪問者の男は真新しい名刺をロザリンドに差し出すと言葉を続けた。「当スミス・サミュエ商会はロザリンド博士様のお父様からも出資頂いておる商会でして、主には医薬品関連の商品などを扱っています」「フォートナム・メイソンのお紅茶などいかがですか?」ロザリンドは盆の上にあった紅茶入りの来客用カップをポール・スミスと名乗る男の前へと静かに押し勧めた。「いやぁメイソン紅茶ですかぁ。これはどうも、有難うございます。 ああ、これはいい香りだぁ」訪問者ポールは出された紅茶に口を付けると、感嘆の声を上げ、話を更に続けた。「我がスミス・サミュエ商会はですね、製薬会社様からもまた出資を頂いておりまして、新薬などの市場開拓をも行なっておるところなんですが、この度、新薬開発の為には基礎学術にも目を向
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小説『DNA51・影たちの黒十字』(続ロザリンド物語) 〜9〜

小説『DNA51・影たちの黒十字』(続ロザリンド・フランクリン物語) 〜9〜          10                 賢振寺のクリック賢振寺(ケンブリッジ)に戻ったワトソンは研究室の先輩であるクリックに倫敦大学で見たB型核酸のX線回折画像の話をしました。ワトソンとクリックとの間では、研究情報については常にオープンで、自分達が得た知識を互いに披露し合い、疑問点や感想、意見、見解など率直に語り合う日常がそこにはあったのでした。「B型核酸っちゅうモンが有るってかぁ・・・ とゆうことはやなぁ・・2種類の核酸が現れて来おるゆうことやな。 今までワシらが見せられていたんは、その一方だけや。 そうゆうこっちゃないか? 倫敦大の連中、出し惜しみしよるなぁ」ワトソンの話を聞きながら、手に持ったコーヒーをグイッと飲み干すと、クリックの興味は徐々に拡大していくようです。「まぁ、連中にしてもそれは最近発見したような様子でしたし、 発見者はロザリンド研のようですね。 論文発表する前に私に教えてくれたので、 出し惜しみということではないとは思いますが・・」ワトソンは画像を見せてもらった手前、さすがに倫敦大学のことを非難することはできません。クリックはタバコパイプに火を付けると一息けむりを吐き出しました。「しっかしやな、英国医学研究機構には報告書を送っておる、 さっきワトソン君、キミそうゆうてはったやないか。 報告書を書く時間あるんやったら論文も同時にサッサ〜と書いてやなぁ、 発表しはったらええんとちゃうか? しかも、B型画像を見せてくれたんは発見者ロザリンドやのうて、 ウィルキンス博士や
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『小説・ロザリンド・フランクリン物語』 〜08〜

『小説・ロザリンド・フランクリン物語』 〜08〜『小説・ロザリンド・フランクリン物語』           9        DNA51これまで辿ってきた幾つか事実の経緯からみると、ロンドン大学の研究室グループではDNAの実像形態としては 螺旋体 をしているのではないかとの噂のような、予測のような、予言のようなものがストクスやウィルキンスの間で立ってはいましたが、それはまだ内部保留、内部機密の段階に留まっていました。ただ、二重螺旋体 とまでは至ってはいなかったようです。また、ロザリンドの発見したAタイプとBタイプの結晶、そして、そのAタイプ、Bタイプの生成方法もまた内部保留、内部機密の段階に留まっているのでした。それが1952年に決定的証拠となるロザリンドのBタイプ画像撮影成功があり、それを見たウィルキンス、「こりゃ、確実に螺旋体ですがな」と唸り声を上げ、ウィルキンスを中心に論文発表への意思が強まりました。しかし、当の撮影成功者ロザリンドは論文発表に積極的ではありません。「どや、ひとつ此処らで論文発表してみぃひんか?」最新51番画像写真を広げた机に両手をついたウィルキンスは見上げる視線をロザリンドに投げながら、そう促してみるのでした。「まだよぉ〜。まだ、まだ。 A型とB型の生成メカニズムも完全解明されてないし・・」と腕組みをしながらロザリンドはあくまでも控えめな口調です。メカニズムが明らかにならないとロザリンドは気が済まない性分なのでしょうか。「何言ってはるんや、もう論文発表の段階、来てるやないのぉ〜」とウィルキンスは内面苛立ちを隠せません。研究の途中段階でも、新局面に入ったら
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『ロザリンド・フランクリン物語』 〜06〜

『ロザリンド・フランクリン物語』           7ここで 視点を極狭域部に集中させて、ウィルキンス論文の ”24行目からの部分“ をみてみましょう。ーーーーウィルキンス論文24行目から引用(Nature誌1953年4月)ーーーーーOriented paracrystalline deoxypentose nucleic acid( ‘Structure B’ in the following communication by Franklin and Gosling)gives a fiber diagram as shown in Fig. 1 (cf. ref. 4).【筆者による訳文】D.N.A.結晶(ロザリンド&ゴスリングによって報告されている ‘B構造’ のもの)は図1に示されるような繊維画像を見せてくれています。(比較参照4)(もっと読みやすい表現をするとすれば)ロザリンド&ゴスリング報告による ‘B構造’   のD.N.A.結晶体は図1に示されるような繊維画像となっています。ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー(引用おわり)ーーーーーーーーこれは論文に使われている図1を紹介している部分の表現となる訳ですが、  『図1はロザリンド研究室で獲得されたX線回折画像なんです・・』とほぼ言っているようなものです。もっと端的な表現をするならば、  『図1の画像はロザリンド作成によるB型D.N.A.のX線回折画像です』との表現で、その意味を解釈してもよいのではないでしょうか。以上のことを考えてみれば、当時、“B型DNA結晶” のX線回折画像の作成
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『ロザリンド・フランクリン物語』 〜05〜

『ロザリンド・フランクリン物語』           6ロザリンド&ゴスリングの論文から明確に判ることは、次のようなことです。ロザリンドの研究室では、❶核酸の結晶体を上手に作ることができました。❷幾度も幾度も結晶体を作る作業を繰り返していくうちに、 2タイプの結晶が出来上がることが判りました。❸それぞれにAタイプ、Bタイプとの名称を付けて区別しました。❹作る際の湿度条件が変わることによって、 A構造タイプとB構造タイプに2分類できることが分かりました。❺どうすれば意図的にこの2タイプの結晶体を得ることができるのか、 その現象的な事実を発見しました。ロザリンドはこれらの研究成果については公表することはなく、『非公開研究データ』としてまとめたものを『年次報告書』として 英国医学研究機構にのみ提出していましたので、2タイプの結晶体が生成されてくる現象メカニズムの謎は広く知れ渡っているものではなかったと思われますし、当時、『影たちの黒十字』写真を得ることのできるのはロザリンド研究室だけだったのではないでしょうか。ロザリンドと同じロンドン大学で同様にX線回折法で核酸研究をしていたモーリス・ウィルキンスは  “結晶体2タイプ生成”      の研究ではロザリンドの方が先を行っていると認識していた筈です。しかし、結晶体を構造解析する面ではウィルキンスのほうが螺旋構造を先に直観予測していました。『影たちの黒十字』51番写真が現実となって現れたとき、ウィルキンスはロザリンドと共同執筆で論文発表したかった筈です。ところが、ロザリンドは発表には積極的でありません。業を煮やしたウィルキンスは論
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