『ロザリンド・フランクリン物語』 〜06〜

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『ロザリンド・フランクリン物語』

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ここで 視点を極狭域部に集中させて、
ウィルキンス論文の ”24行目からの部分“ をみてみましょう。

ーーーーウィルキンス論文24行目から引用(Nature誌1953年4月)ーーーーー
Oriented paracrystalline deoxypentose nucleic acid
( ‘Structure B’ in the following communication by Franklin and Gosling)
gives a fiber diagram as shown in Fig. 1 (cf. ref. 4).

【筆者による訳文】
D.N.A.結晶(ロザリンド&ゴスリングによって報告されている ‘B構造’ のもの)
は図1に示されるような繊維画像を見せてくれています。(比較参照4)

(もっと読みやすい表現をするとすれば)
ロザリンド&ゴスリング報告による ‘B構造’   のD.N.A.結晶体は
図1に示されるような繊維画像となっています。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー(引用おわり)ーーーーーーーー


これは論文に使われている図1を紹介している部分の表現となる訳ですが、
  『図1はロザリンド研究室で獲得されたX線回折画像なんです・・』
とほぼ言っているようなものです。もっと端的な表現をするならば、
『図1の画像はロザリンド作成によるB型D.N.A.のX線回折画像です』
との表現で、その意味を解釈してもよいのではないでしょうか。
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以上のことを考えてみれば、
当時、“B型DNA結晶” のX線回折画像の作成についての
世界の第一人者はロザリンドだったということです。
そもそも、A型、B型の類型を発見したのがロザリンドです。
ロザリンド研究室以外ではA型・B型があることすら知らない。
ロザリンドが研究成果を論文公開していないからです。
このような状況下でA型・B型を明確に識別できて、
B型を撮影対象と見なしてB型の画像を作製できるのは
ロザリンドだけだと言うことになるからです。
ウィルキンスでさえロザリンド作成のB型画像を
引用せざるをえなかったのでは・・・、
という当時の様子がここから窺えるのです。
また、核酸のX線回折画像研究の最先端にいた研究所の一つは、
紛れもなく、ロザリンドやウィルキンスのいるロンドン大学だった、
ということにもなるのではないでしょうか。

科学実験では実験装置・実験方法をいかに上手く作るかが、
実験成果・実験成功の鍵を握っています。
  “いかに上手な実験方法を手に入れるか”   
は科学技術、あるいは科学技能の世界となります。
最先端の領域での実験装置は他所で売っているものではありませんので、
自分たちで独自にオリジナルのものを製作しなければなりません。
そうなると、もう、それは、“技” の世界となっていきます。

例えばの話ですが、いかに優れた天体望遠鏡をつくるかが、
天文学の発展の鍵を握っている、と言えば簡単で解り易いかと思います。

このような ”作製する技“   の領域で
ロザリンドは
『DNA結晶作成術の技』、『X線回折画像作成術の技』
を磨いていたのでしょう。


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