連続小説『DNA51影たちの黒十字』17

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連続小説『DNA51影たちの黒十字』17
(続ロザリンド物語)  

小説『DNA51影たちの黒十字』
(続ロザリンド・フランクリン物語) 〜17〜
Rosalind Franklin Photo51
Rosalind Franklin Photo#51

   18         戴冠式からダービーへ

★★★★☆★★★★☆★★★★☆★★★★☆
 1953年6月2日。
エリザベスⅡ世戴冠式がウェストミンスター
の地を中心に執り行われた。重く大きな冠を
頭に被せられて華奢な新女王の首は動かせな
い状態となりつつも、エリザベスⅡ世は正式
に国王として即位する儀式を全うしたのであ
る。この儀式には世界各国からの要人が多数
参列して豪華なる王族外交が繰り広げられ、
日本国からは昭和天皇の名代として19歳の若
き皇太子殿下が式に参列した。

 大英帝国の威光を受け継いでいるかのよう
な盛大なる戴冠式の4日後・・・。
 新国王即位式の余韻が多分にまだ市中内に
残り漂う中、新女王エリザベスⅡ世27歳はロ
ンドンの近郊リッチモンドから約20kmほど
南方に位置したエプソム競馬場にその姿を現
わした。
 伝統の第174回英国ダービー開催である。
競馬場には朝から何万人ともみられる観衆が
詰めかけていた。その大群衆に囲まれるなか
を来場してきたエリザベス新女王はロングド
レスにロングのブルーコートを身に纏いロイ
ヤルスタンドへ向かってターフ内を外ラチ沿
いに歩いて行く。
 ロザリンドはスミス・サミュエ商会の用意
したスタンド席からこの様子を眺めていた。

 「今日も、まだ、まだ王室の行事が続いて
いるような雰囲気で実に国際フェスティバル
の景観ですなぁ」

ロザリンドの隣に陣取っているポール・スミ
スが双眼鏡を覗きながら呟きを漏らした。
見るとアラビアン衣装を纏ったアラビア人
の王族らしき一群も来場していたり、ター
バンを巻いたインド人風の人物が歩いてい
たりと、それは国際色豊かな風景であった。
 ダービー競走以外の小レースが前座レース
のごとく行われている中、第3レースが始
まる直前の頃だろうか、ロザリンドは覗く
双眼鏡の先をロイヤルスタンドに向けると、
あるひとつの光景を見つ出していた。

「あっこに居られるんはエリザベス女王と
日本の皇太子はんと違いますやろか?」

第3レースを前にしてエリザベス新女王と
日本国皇太子がロイヤルスタンドで並んで
レース観戦していたのだ。

「あぁ、ホントですな。確かに女王の右隣
りにおられるのは日本の皇太子殿下ですな。
しかし、ロザリンド先生、よく見つけられ
ましたなぁ。ロザリンド先生はB型構造核
酸結晶の発見といい、皇太子殿下発見とい
い、発見するのが素早い! さすがっ!
見事なもんですなぁ」

ポール・スミスは何かにつけてロザリンド
を褒めるのである。

「あれが、王族外交とゆうモンなんですや
ろなぁ・・・」

「はい。かつては、英日同盟の間柄でした
しね、政府同士が戦争しても王族の交際は
変わりなく続行されるということなんでし
ょうね・・。ちなみに、あそこのスタンド
のずうっとずうっと右側・・・・・・・
ユダヤ大財閥サッスーン卿のスタンド席の
ようですよ。今日はダービー優勝候補とし
て所有馬が出馬してきたので大層盛り上が
っているようですねぇ」

「でもなぁ、今のところの一番人気の馬は
エリザベス女王の所有馬オリオールになっ
てますやん。あれは即位ご祝儀相場なんで
すやろか?」

「いやぁ、ユダヤ財閥の所有馬ピンザ号も
王室のオリオール号も両方ともに強いです
から、甲乙付け難いですな」
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この日の朝の時点で、
  一番人気がオリオール号、
  二番人気がピンザ号、
なのであった。
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