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連続小説『DNA51影たちの黒十字』18

連続小説『DNA51影たちの黒十字』18連続小説『DNA51影たちの黒十字』第18回(続ロザリンド・フランクリン物語) 〜18〜Rosalind Franklin Photo51Rosalind Franklin Photo#51   19       伝統の第174回ダービー★★★★☆★★★★☆★★★★☆★★★★☆ いよいよダービー競走が始まる時刻が近づいてきた。その年の3歳馬の中から出馬する馬は27頭。1950年に何千頭と生まれたサラブレッド馬の中から2歳・3歳の時に優秀な成績をレースで残して、今日のダービー競走の出走にまで漕ぎ着けてきた3歳の駿馬たち27頭がパドック(下見所Parade Ringパレードリング)に登場した。「あのゼッケン1番を付けて、鼻に白い輪っかを巻いた馬、大層元気そぅどすなぁ」ロザリンドが双眼鏡を覗きながら言った。「ゼッケン1番?・・・・おぉっ、あれはエリザベス女王の所有馬オリオールですよ。鼻の白い巻物はブリンカーと言って、馬が脚元の影などを見て驚かないようにと、馬の脚元への視界を遮ぎる為に付けているモノなんですが・・・・・・。これは・・、どうも、オリオールはいれ込みが激しいようですね。盛んに脚踏みを繰り返すのは元気がいいのではなく、興奮度合いが高い状態だからなんです。実際にレースが始まると有利には働かない兆候です」隣のポール・スミスも双眼鏡を覗きながら、知ったかぶりの解説をする。「ロザリンド先生は、そうゆう所を直ぐ発見しますね。流石です。どうやらオリオールのあの入れ込み具合を見るに、オリオール優勝危うしですかな?」 パドックでのオリオールの仕草や
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連続小説『DNA51影たちの黒十字』17

連続小説『DNA51影たちの黒十字』17(続ロザリンド物語)  小説『DNA51影たちの黒十字』(続ロザリンド・フランクリン物語) 〜17〜Rosalind Franklin Photo51Rosalind Franklin Photo#51   18         戴冠式からダービーへ★★★★☆★★★★☆★★★★☆★★★★☆ 1953年6月2日。エリザベスⅡ世戴冠式がウェストミンスターの地を中心に執り行われた。重く大きな冠を頭に被せられて華奢な新女王の首は動かせない状態となりつつも、エリザベスⅡ世は正式に国王として即位する儀式を全うしたのである。この儀式には世界各国からの要人が多数参列して豪華なる王族外交が繰り広げられ、日本国からは昭和天皇の名代として19歳の若き皇太子殿下が式に参列した。 大英帝国の威光を受け継いでいるかのような盛大なる戴冠式の4日後・・・。 新国王即位式の余韻が多分にまだ市中内に残り漂う中、新女王エリザベスⅡ世27歳はロンドンの近郊リッチモンドから約20kmほど南方に位置したエプソム競馬場にその姿を現わした。 伝統の第174回英国ダービー開催である。競馬場には朝から何万人ともみられる観衆が詰めかけていた。その大群衆に囲まれるなかを来場してきたエリザベス新女王はロングドレスにロングのブルーコートを身に纏いロイヤルスタンドへ向かってターフ内を外ラチ沿いに歩いて行く。 ロザリンドはスミス・サミュエ商会の用意したスタンド席からこの様子を眺めていた。 「今日も、まだ、まだ王室の行事が続いているような雰囲気で実に国際フェスティバルの景観ですなぁ」ロザリンドの
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連続小説『DNA51影たちの黒十字』16 (続ロザリンド物語)

連続小説『DNA51影たちの黒十字』16(続ロザリンド物語)  小説『DNA51影たちの黒十字』(続ロザリンド・フランクリン物語) 〜16〜Rosalind Franklin Photo51Rosalind Franklin Photo#51   17        戴冠式とダービー 倫敦大学と賢振寺大学との合同による3論文一挙掲載が雑誌に発表され、エリザベス女王陛下の戴冠式も間近という5月の日曜日。スミス・サミュエ商会のポール・スミスがキングスカレッジ倫敦のロザリンド研究室を訪問していた。ポールもロザリンドもユダヤ人なので所謂キリスト教での安息日・日曜日は特別な日ではなく、キリスト教会に行くこともない。ユダヤ人にとっては金曜日の日没から土曜日の日没までの24時間が安息日となっている。「Nature誌で発表されたロザリンド先生の論文読ませていただきましたぁ〜。いや〜、とても素晴らしい内容の論文でしたぁ〜」ポールはロザリンドをしきりに褒め称える。しかし、ロザリンドは浮かぬ顔。「それがなぁ〜、3番手の掲載ですやん。雑誌の編集はん、何考えてますのやろ。ほんまに困ったもんですがな。あの順番やったら、賢振寺の予想が先に有って、それを補強するような証拠データを倫敦大学が見つけて提示してるような、後追いの格好になりますやん? 研究内容からはキングスカレッジ倫敦の方が先行しておりますのんやでぇ。今回は、その先行するキングスカレッジ倫敦の領域に賢振寺の方が追いかけて来とるんでっせ」ロザリンドは憤懣やる方ない様子だ。「まぁ編集者も商売人ですから、読者にウケる掲載方針ってのがあるのでしょう。
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小説『DNA51影たちの黒十字』(続ロザリンド物語) 〜12〜

小説『DNA51・影たちの黒十字』(続ロザリンド・フランクリン物語) 〜12〜     13       危険スモッグ サッスーン卿が所有する競走馬ピンザ号(2歳)は10月のニューマーケット競馬場でのデューハーストステークスもまた圧勝してレースを終えた。サッスーン卿のピンザによるダービー制覇の夢はまた一歩現実味を帯びて膨らんでいく。       ☆                       ☆ 11月末から12月にかけて倫敦では大問題が起ってきた。スモッグ問題である。工場の動力源や冬の暖房源として石炭を燃やし過ぎているのが原因であった。倫敦では19世紀からこの問題が度々起きてきてはいたのだが、この年は特に酷く、1万人ほどが呼吸器疾患などの健康被害を被って死亡した。 倫敦の中心部に位置するキングスカレッジロンドンは倫敦東部の工業地帯とも近いため、スモッグに覆われる日々が続いている。天候次第では自動車の運転さえも前方視界の不良にて困難となる始末である。このままでは、いずれは肺をやられてしまう。 ついに、ロザリンドは倫敦西部のイーリング地区に住む友人宅に一時避難することにした。イーリングはアクトンの西方2kmにある閑静な住宅地ともいえる街である。 居住地を工場地帯から距離を取って離れた場所にしたとはいえ、暖房には石炭を燃やすので街には煤煙が不穏な様相で立ち込めている。しかも、勤務先の倫敦大学キングスカレッジが倫敦市街のほぼ中心部に位置していることには変わりはない。 12月に入って状況はさらに悪化する気配だ。冬の寒気が倫敦の上層部に居座り、地上近くの低層気団をブロックして閉じ込
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