連続小説『DNA51影たちの黒十字』19

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連続小説『DNA51影たちの黒十字』19


連続小説『DNA51影たちの黒十字』第19回
Rosalind Franklin Photo51
Rosalind Franklin Photo#51

  20       第174回ダービー覇者の凱旋
★★★★☆★★★★☆★★★★☆★★★★☆
 オリオールのいれ込み仕草が依然と続いて
いる状態の中、ダービー競走スタートの火蓋
は切って降ろされた。
 エプソム競馬場のコースは “Cニ” の文字型
が描く蹄鉄図形のようなルートとなっていて
”C二“ 文字型の右上端からスタートして暫く
長い直線馬場が続く。この直線馬場を3歳の
若駒たちが一群となって突き進んで行く。

 発進直後は好発進のシティースキャンダル
がリードし、二番手にエンペラーハニーが付
けるという体勢だ。その後ろの馬群の中の7
番手にピンザ、更にその後ろ中段馬群の中に
オリオール。

 スタート後の長い直線が終わってルートは
カーブして左回りのタッテナムコーナーにさ
しかかる。ここの時点で先頭はブリンカーを
着装したゼッケン12番のシーカンプールに取
って替わった。
オリオールは依然として中段の馬群の中だ。
鞍上のハリー・カー騎手は馬群の中に敢えて
オリオールを入れることで馬を落ち着かせよ
うとしているのであろうか・・。
 長いコーナーの曲線馳走では4馬身差を取
ってシーカンプールが先頭で通過していく。
 最終コーナーを抜けて最後の直線ルートに
馬群が入ると2番手まで順位を押し上げて来た
ゼッケン2番ピンザがロングスパートの猛追を
かけてきた。
 最終直線の半ばで遂にシーカンプールを
かわしたピンザが先頭へ踊り出る。
 最終直線半ばでオリオールも追い上げに
入りシーカンプールをかわすと2番手浮上。
ゴール間際でオリオールはピンザに追い迫る
が4馬身差は縮まらず。
 ピンザ1着でゴール板まえを通過。
 2着オリオール。
オリオールと共に追い上げをかけてきた
ピンクハウスがシーカンプールを
ゴール間際でかわして3着へ浮上。
シーカンプールは4着に沈む。
5着にはチャッツワースが入線・・・・。

 遂にダービーを制覇して3歳馬の頂点に
立ったのはユダヤ財閥サッスーン卿の愛馬
ピンザであった。

 メイン競走のダービーステークス発進時に
は集まる観衆が何十万人規模にまで膨れ上が
っており、彼らによって生み出される熱狂の
渦がロイヤルスタンド前の直線ターフ周りに
巻き起ると、凱旋帰走してくるピンザ号と鞍
上のゴードン・リチャーズ騎手をサッスーン
卿やバーティー調教師等が共に出迎えた。
 この時、ピンザは1番人気での優勝であっ
たので群衆が熱狂をもってピンザの凱旋を讃
える光景は誰もが納得できるものであった。
群衆の多数がピンザ優勝を本命で予想して、
結果がその通りになったからである。スタン
ド席からロザリンドは双眼鏡越しにその光景
を垣間見るのであったが、暫くして、小さく
驚きの声をあげると、また何かを発見した様
子だった。
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「あれはクリック博士・・・」
ロザリンドはそう呟いた。

「今度はクリック博士を発見したですか?」
ポール・スミスも驚いた様子で双眼鏡を胸元
に下ろすとロザリンドの方を振り返った。

「ピンザを取り巻く人達の中、白いドレスの
御寮はんの直ぐ後ろ、黒ハットの紳士。
あっこに居はるんのはクリック博士ですわ」
ロザリンドは双眼鏡を覗いたままで指差した。

ポール・スミスは急いで双眼鏡をまた覗き
見返す。
「ほほう、あの人ですか。右隣にはマックス
・ペルーツ博士も居られるようですなぁ」

「マックス・ペルーツ博士?」

「英国医学研究機構の予算担当をしている
マックス・ペルーツ博士ですよ」

「医学研究機構の予算担当のお方とクリック
博士が揃おてピンザの応援に???」

「たぶん、サッスーン卿つながりなんで
しょうなぁ。サッスーン卿は賢振寺大学出身
でもいらっしゃるようですし・・・・・」

「・・・・・・」
この時、
ロザリンドは発する言葉を失っていた。
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