経営者にとって最も関心が高いテーマの一つが「助成金」です。
賃上げ、
正社員化、業務効率化(IT導入)、
従業員のリスキリング(学び直し)など、
国の施策に連動した助成金を自社でどう活用できるか、
最新の要件変更を踏まえた提案を社労士に求めています。
1. 全体トレンドの押さえ方
※2025年度(2025年4月~2026年3月)時点の一般的な整理
雇用・リスキリング関連の助成金は、
厚生労働省の「雇用関係助成金」が中心です。
国の政策的な重点は、
概ね以下の4本柱で整理できます。
◎雇用維持・労働移動の支援(雇用調整・出向等)
◎賃上げ・正社員化・処遇改善
◎業務効率化・生産性向上(IT導入を含む)
◎従業員のリスキリング・人材育成
以下、この4本柱ごとに
「経営者から特に聞かれやすいメニュー」を中心に、
2025年度時点のトレンドとして整理します。
2. 雇用調整・在籍出向まわりの最新トレンド
(1) 雇用調整助成金
趣旨:
景気変動や産業構造の変化など
経済上の理由で事業活動が縮小し、
休業・教育訓練・出向を行って雇用維持した場合、
休業手当や賃金の一部を助成する制度です。
※コロナ特例は令和5年3月末で終了し、
通常制度ベースに戻っています。
「最新トレンド」という意味では、
コロナ禍のような“広く使える特例”は終了
代わりに、
構造的な需要減への対応・リスキリング・出向を含めた
雇用の質的転換が重視される流れという位置づけになっており、
単純な休業よりも
「教育訓練」「出向」と絡めて使うケースの重要性が高まっています。
(2) 産業雇用安定助成金(在籍型出向・人材移動)
事業活動縮小企業から、他社へ在籍型出向を行い、
人材のスキルアップや雇用維持を図る場合などに活用できる助成金です。
コロナ後は、「単純な一時避難」から、
・成長分野への人材シフト
・出向先でのスキル獲得 → 将来の配置転換・転籍
といった
中長期的な人材ポートフォリオ見直しのツールとして
位置づけられる傾向があります。
3. 賃上げ・正社員化・処遇改善のトレンド
(1) 業務改善助成金(賃上げ+業務効率化・IT投資)
「事業場内最低賃金」を一定額(30円以上など)引き上げつつ、
生産性向上に資する設備投資や
人材育成を行った場合に
費用の一部が助成される制度です。
対象は中小企業・小規模事業者が中心で、
事業場単位で申請します。
トレンドとして押さえておきたい点:
※2025年度
助成額の上限は、
・引き上げ額(30円・45円・60円・90円コース等)
・引き上げる労働者数
・事業場規模(30人未満かどうか)
・特例事業者
(申請事業場の最低賃金が1,000円未満、物価高騰等要件に該当、等)
で段階的に拡充されており、
最大600万円までの枠組みが整備されています。
特例事業者で物価高騰等要件を満たす場合、
一定の自動車やPC等の端末も助成対象になり得る年度構成となっており、
物流・訪問型サービス・IT化投資との親和性が高まっています。
「みなし大企業」は対象外とされ、
中小・小規模への政策集中がより明確になっています。
賃上げ計画の事前提出を省略できる特例(賃上げ後申請)が設けられ、
「既に最低賃金対応で賃上げしてしまったが、業務改善助成金を検討したい」という相談にも一定範囲で対応できるようになっています。
3. 賃上げ・正社員化・処遇改善のトレンド
(1) 業務改善助成金(賃上げ+業務効率化・IT投資)
「事業場内最低賃金」を一定額(30円以上など)引き上げつつ、
生産性向上に資する設備投資や
人材育成を行った場合に
費用の一部が助成される制度です。
対象は中小企業・小規模事業者が中心で、
事業場単位で申請します。
(2) キャリアアップ助成金(正社員化・処遇改善)
・有期雇用→正社員化、
・無期転換、
・賞与・退職金制度導入、
・賃金規定改定等
を行った場合に活用される
代表的な処遇改善系助成金です。
今後も
「非正規から正社員化」
「立ち上がり賃金の底上げ」は
国の重点テーマであり、
年度ごとにコース構成・要件の見直しが続いています。
4. 業務効率化・IT導入と助成金
「IT導入=経産省のIT導入補助金」というイメージが強いですが、
雇用関係助成金の中でも以下のルートがあります。
◎業務改善助成金
ITツール・機器導入が
「生産性向上に資する設備投資」に該当すれば
対象になり得ます。
特に特例事業者であれば、
自動車やPC等の範囲が広がる年度構成があり、
・勤怠管理システム
・配送ルート最適化ツール
・訪問介護用車両・タブレット
など、賃上げと一体で提案しやすい傾向にあります。
◎人材確保等支援助成金・人材開発支援助成金の一部コース
テレワーク導入、
勤務間インターバル等の働き方改革とセットで、
・在宅勤務用PC・システム導入
・テレワーク規程整備と教育
を支援するコースが毎年度整備されています。
5. リスキリング・学び直し(人材開発系)のトレンド
厚労省の「人材開発支援助成金」が、
リスキリング分野の中心的な助成金です。
対象:
雇用保険被保険者等を対象に、
・職務関連訓練、
・デジタル人材育成等の訓練、
・教育訓練休暇制度
などを実施した企業
トレンド:
・DX・デジタルスキル(データ分析、プログラミング、DX推進)
・事業再構築・新分野展開に伴うリスキリング
への重点が強まりつつあり、
「事業転換(例:対面販売→EC・オンラインサービス)に伴う社員教育」
などと紐づけた利用が想定されています。
併せて、
・在籍型出向(産業雇用安定助成金)で他社に送り出しつつ、
新分野のOJT+OFF-JT研修を組み合わせる
・雇用調整助成金の「教育訓練」を活用して、
業務が薄い時期に計画的なリスキリングを行う
といった形で、
「休ませる」のではなく
「学ばせる」方向への政策誘導が強くなっています。