線路に降りる

記事
ライフスタイル
2000年代の初頭。

長く勤めていた派遣社員の仕事を辞めてからは、

仕事が本当にうまく行かず、
派遣社員をいくつか渡り歩きながらも
ちょっと仕事を覚えると、打ち切り、打ち切り、打ち切り・・・。

踏んだり蹴ったりの日々を過ごしていました。

そんな傍らで
独学でSEO(検索エンジン上位表示最適化)には、
興味があり、独自ドメインとレンタルサーバーを借りたりして
適当にHTMLの手打ち程度であれば、個人サイトは作れるようになります。


ちょっとしたキーワードなら上位に上げられるようになり
アフィリエイトの仕組みを覚えつつありました。

新しいスキルを身に着けようと

名古屋のとあるWEBデザインのスクールに通うものの、
30歳過ぎてから新しいスキルを身に着けるのはなかなか大変でした。

そんななか、スクールから

あるサービスを提供する企業から、
求人があるという事で、
応募することとなります。

そして、面接することとなり、
採用されて、派遣として働くことになります。

あるサービスって?

出会えない、出会い系の運営会社です。

デザインも、まったくダメ。

写真やイラストも書けない。

それでも、採用されたのは、
素人に毛が生えた程度のSEOの知識でした。

不倫、愛人、援助・・・。

ふだんの私とまったく関連の無いキーワードを抜き出します。

これも生きていくためと割り切るしかありませんでした。



不倫とは?不倫って?不倫はここで・・・。

1ページの中にやたら、キーワードを入れ込みます。

1ページの中で、キーワードの検出率が高いと、
検索エンジンにアピールしやすいのです。

<STRONG>不倫</STRONG>

<B>不倫</B>

<P>不倫</P>

こんなふうに、キーワードをHTMLのタグで装飾します。


日本人ってSEOが苦手だろうなって思います。

というのは、
国語の小論文で、主語は省いて書くって習ったように記憶しております。

それもあって、小論文の授業っぽく、文章を書くと
不倫は・・・って、主語は省きたがるので、
SEOは、それとは反対にやたらと主語を入れ込むことになるのです。

小論文で習った手法を否定しながら、文を考える業務・・・。

そして、「出会いはコチラ」って出会えない、出会い系サイトのURLに誘導リンクするための
HTMLサイトを手打ちで量産させられました。

その業務のほかに、メールアドレスを集めるソフトもあり、
いろんな書き込みをされている掲示板から、メールアドレスを抜き取っていき
メールアドレスに向けて、
出会えない、出会い系ソフトに誘導するためのメールを送信する一助も担当させられました。

そういったメールの文章は、
冴えないおっさん達が、打ち合わせで書いていたものです。

勤め始めは、違和感だらけだったのに、
どんどん毒されていってしまい、いつしか見慣れてしまう自分。

出会えない、出会い系サイトの集客のほかに、
ライブチャット業務も立ち上げられます。

毎日、ちょっとやつれた30~40代と思しき女性が面接を受けに来られていました。

ライブチャットのオペレーターは

個人、個人で仕切られたテーブル、椅子。そして電話。

どんな会話がされていたかは知る由もありませんが、
おそらく、
長く会話させれば通話料金を稼げるのだろうから
話の長い方は優秀なのでしょう。


出会えない、出会い系サイト運営会社らしく、
ここの会社のオーナーは、

ポルシェのカイエンに乗ってブイブイ言わせます。

ベンチャーらしく独善的であり、
朝令暮改の典型で、すぐにやること、
いうことコロコロ変わります。


どんどん、スタッフも入れ替わります。

その中に、私も含まれてしまい、
一か月半ほどで、
ハイそれまでョ(植木等さんの口調で)

またしても、私は仕事を失いました。

はたらけどはたらけど猶わが生活楽にならざりぢっと手を見る

BY 石川啄木


意気消沈。


なんだか、生きるのって、めんどくさいな。

もう、生きるの休んでもいいよな。


仕事の最終日、12月中旬の寒い日。


いつもの駅で降り、ホームから改札口に向かおうと歩き出します。

目の前で中年男性が反対側の線路に向かって、
よろよろと近づいていきます。

落ちそうだし危ないなあと思って見てたら、
線路に落ちてしまいました。

私も相当に驚いたが、助けないとやばいので線路に飛び降ります!

すると、もうひとりの男性も飛び降りて、
この落ちた中年男性をうつ伏せになっているのを、仰向けにしてあげます。
相当に酔っていて、携帯電話を線路に落としたとこで、
見つけようとして落ちてしまったと言っていました。

男性と私とで線路の付近を見渡したが、携帯など見つかりません。

その様子を見ていた女性客が駅員を呼んできてくれて、
危ないので、男性と私を線路から出るように言われます。

調べたら酔い潰れていた男性の携帯は自分のポケットに入っていました。

その中年男性を、みんなでホームに引っ張り上げ、駅長室に運びます。

その後は、もう帰って良いですよと言われたので帰りますが、
それにしても線路に落ちる人なんて初めて見ました。

線路に飛び込むと、
こんな気分になるのか。

自殺なら、世間に迷惑をかける不届き者。

人助けなら、善良な通行人Aさんとしてお礼を言われる。

線路から見る目の前の電車は、いつもより大きく見えたものです。

こんな物に体当たりされたら、一瞬ですべてが終わる。


心が折れかけていた自分を擬似体験させてくれた貴重な機会でした。



後日談。

出会えない、出会い系サイト運営会社のオーナー氏は
数年後に所得税法違反により在宅起訴されます。

私は、ずいぶん後ですが、
小さいなりにも経営者となりました。

カラカラに乾いたぞうきんでも、まだ絞れる!

そんな意気込みで生きています。




サービス数40万件のスキルマーケット、あなたにぴったりのサービスを探す ココナラコンテンツマーケット ノウハウ記事・テンプレート・デザイン素材はこちら