学会発表や研修の資料を作っていると、
「スライドもできたし、あとはこれを読めば大丈夫」
となることがあります。
もちろん、スライドに書いてある内容を説明するので、ある程度同じ内容になるのは当然です。
でも、
スライドに書いてある文章を、そのまま読み上げるだけ
になってしまうと、少しもったいないと感じます。
聞いている人も同じスライドを見ています。
発表者が書いてある文章をそのまま読み、聞いている側も同じ文章を読む。
それなら、
「発表者は何を説明すればいいの?」
という話になります。
今回は、スライドと発表原稿の役割について考えてみます。
スライドと発表原稿は役割が違います
私は、
スライド=見て理解するもの
発表原稿=聞いて理解するためのもの
と分けて考えると分かりやすいと思っています。
例えば、スライドに、
対象者:A病院に勤務する看護師50名
と書いてあるとします。
発表でも、
「対象者はA病院に勤務する看護師50名です」
と読む。
もちろん間違いではありません。
でも、これだけなら聞いている人はスライドを読めば分かります。
例えば、
「今回はA病院に勤務する看護師50名を対象として調査を行いました。それでは、続いて調査方法について説明します」
と話せば、次の内容への流れも作れます。
同じ情報でも、
「見せる情報」と「話す情報」では使い方が少し違います。
スライドに全部書かなくてもいい
発表が不安だと、
「話すことを忘れないように」
と、発表原稿をそのままスライドに入れたくなることがあります。
すると、
文字がどんどん増えていきます。
発表者は安心するかもしれません。
でも、聞いている側は、
スライドを読むのか、発表者の話を聞くのか
迷ってしまいます。
以前の記事でも書きましたが、スライドは文字を減らせばよいという単純な話ではありません。
ただ、
発表者が話せば伝わることまで、すべてスライドに載せる必要はない
と思います。
発表原稿は「スライドの文章版」ではありません
発表原稿を作るとき、
スライドの文章をコピーして、
少しだけ「です・ます」を付ける。
これだけでも原稿は作れます。
でも、それでは、
スライドを文章に変換しただけ
になってしまいます。
発表では、
「ここで何を見てほしいのか」
「なぜこのスライドを出しているのか」
「次のスライドとどうつながるのか」
まで説明できます。
これは、スライドだけでは伝えにくい情報です。
結果のスライドで考えてみます
例えば、研究結果として、
A群はB群より有意に高かった(p<.05)
とスライドに示したとします。
発表でも、
「A群はB群より有意に高かったです。p値は0.05未満でした」
と読むだけでは、ほぼスライドと同じです。
例えば、
「こちらをご覧ください。A群ではB群と比較して有意に高い結果となりました。特に〇〇の項目で差が大きくなっています」
と説明すれば、
聞いている人に「どこを見てほしいか」を伝えられます。
グラフを出しているなら、
「青色がA群、灰色がB群です」
「右側の〇〇に注目してください」
と案内してもよいでしょう。
発表者には、
聴衆の視線を案内する役割
もあります。
「こちらをご覧ください」は意外と大切です
発表している本人は、
次に何が出てくるか分かっています。
でも、聞いている人は初めて見ています。
新しいグラフが表示された瞬間に、
いきなり細かな結果を説明されても、
まだグラフの構造を理解できていないかもしれません。
そんなとき、
「こちらは〇〇の結果を示したグラフです」
「横軸が〇〇、縦軸が〇〇を示しています」
と一度案内する。
それだけでも、
聞いている側は内容を追いやすくなります。
スライドとスライドの間をつなぐのも発表原稿の役割
スライドには、
研究背景
↓
研究目的
↓
研究方法
↓
研究結果
と並んでいたとしても、
実際の発表では、その間を言葉でつなぐ必要があります。
例えば、
「以上の背景から、本研究では〇〇を明らかにすることを目的としました」
「続いて研究方法について説明します」
「それでは結果です」
といった言葉です。
文章として見ると、とても地味です。
でも、この一言があるだけで、
聞いている人は今どこを説明しているのか分かりやすくなります。
発表原稿は「耳で聞いて分かる文章」にする
論文の文章と発表の文章も少し違います。
論文では理解できる文章でも、
一度聞いただけでは理解しにくいことがあります。
例えば、
「Aとの関連性を検討することを目的としてBを対象にCを用いた横断的調査を実施し……」
と長く続くと、
途中で内容を見失うことがあります。
発表では、
「本研究の目的は〇〇です。」
「対象は〇〇としました。」
「調査には〇〇を使用しました。」
と分けても構いません。
読めば分かる文章と、一度聞いて分かる文章は同じではありません。
原稿を作ったら、一度声に出して読んでみる
発表原稿ができたら、
私は一度声に出して読んでみることをおすすめします。
黙読では自然だった文章が、
声にすると、
「長いな」
「ここで息が続かない」
「何を言っているのか自分でも分かりにくい」
と気付くことがあります。
さらに、
発表時間も確認できます。
10分発表なのに、原稿を読むだけで13分かかる。
これは実際に読んでみないと気付きにくいものです。
原稿を一字一句覚える必要もありません
発表原稿を作ると、
今度は、
「この通りに話さなければ」
と思ってしまうことがあります。
でも、発表原稿は台本ではありますが、
必ずしも一字一句同じに話す必要はありません。
むしろ、
「このスライドでは何を伝えるのか」
を理解していれば、
多少表現が変わっても大丈夫です。
原稿を読むことに集中しすぎると、
スライドを見る余裕や、
聞いている人を見る余裕がなくなることもあります。
スライドを見なくても分かる、でもスライドを見るともっと分かる
理想を一言で表すなら、
「話を聞いても分かる。でもスライドを見ると、さらに分かる」
という状態だと思います。
スライドだけですべて説明する。
発表原稿だけですべて説明する。
ではなく、
それぞれが少しずつ役割を持つ。
発表者の話とスライドが組み合わさることで、
初めて一つの発表になります。
「スライドを読むだけ」になっていないか確認してみる
発表原稿が完成したら、
スライドと並べて確認してみてください。
原稿のほとんどが、
スライドに書いてある文章とまったく同じ
になっていないでしょうか。
もしそうなっていたら、
少しだけ、
「このスライドで何を見てほしい?」
「ここで何を補足したい?」
「次のスライドへどうつなぐ?」
と考えてみます。
それだけでも、発表原稿は変わってきます。
まとめ
スライドと発表原稿は、
同じ発表のために作るものです。
でも、
同じ文章にする必要はありません。
スライドは、
見て理解する情報。
発表原稿は、
聞いて理解するための情報。
そして発表者は、
スライドに書いてあることを読むだけではなく、
どこを見てほしいのか
何が大切なのか
次に何の話をするのか
を案内できます。
発表原稿を作ったとき、
一度スライドと見比べてみてください。
ほとんど同じ文章になっていたら、
「このスライドに書いていないことで、私が伝えるべきことは何だろう?」
と考えてみる。
それだけでも、
「スライドを読み上げる発表」から、
「スライドを使って伝える発表」
に少し変わると思います。
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