看護研究の研究計画書や論文を書いていると、
「本研究の目的は、〇〇について明らかにすることである」
という文章をよく使います。
私自身も使う表現ですし、「明らかにする」という言葉そのものに問題があるわけではありません。
ただ、ときどき気になるのが、
「明らかにする、と書いたことで研究目的が完成したように見えてしまう」
ことです。
文章としてはきれいにまとまっている。
でも、よく読んでみると、
「結局、何を明らかにするの?」
が少し曖昧。
今回は、そんな研究目的の「広すぎる問題」について考えてみます。
「〇〇について明らかにする」だけでは分からないことがあります
例えば、
「手術室看護師の器械出しについて明らかにする」
という研究目的があったとします。
一見すると研究目的らしい文章です。
でも、少し考えてみると、
何を明らかにするのでしょうか。
器械出し看護師の、
認識?
困難?
経験?
技術?
特徴?
学習過程?
熟練者との違い?
いろいろ考えられます。
つまり、
研究テーマは分かるけれど、研究で答えたいことまでは分からない
状態です。
「何について」と「何を明らかにする」は少し違います
研究テーマを決めると、
「〇〇について研究したい」
というところまでは比較的考えやすいと思います。
でも、
「〇〇について、何を知りたいのか」
まで絞ると、少し難しくなります。
例えば、
新人看護師の離職について研究したい
だけでは、まだかなり広いです。
そこから、
「新人看護師が離職を考える要因を明らかにしたい」
「離職を考えた新人看護師が、就業を継続した理由を明らかにしたい」
「新人看護師の職場適応と離職意向との関連を明らかにしたい」
となると、研究の方向がかなり変わります。
テーマが同じでも、
何を明らかにしたいかによって研究は別物になります。
目的が広いと、質問項目も増えやすくなります
研究目的が曖昧なまま質問紙を作ると、
「あれも聞いておこう」
「これも関係ありそう」
となりやすいです。
年齢。
経験年数。
勤務部署。
教育経験。
職場環境。
人間関係。
仕事への満足度。
自己効力感。
ストレス。
研修参加状況……。
気付けば、
「何のために聞いている質問なのか分からない項目」
まで増えてしまうことがあります。
以前、アンケートの質問数についても書きましたが、質問項目を減らす前に、
研究目的をもう一度確認する
ことが大切です。
「この質問は、研究目的に答えるために必要?」
と考えると、必要な項目が見えやすくなります。
「誰の」「何を」「どのように見るか」を確認してみる
研究目的が広いと感じたら、私は次のように分けて考えると整理しやすいと思います。
誰を対象にするのか
↓
その人たちの何を知りたいのか
↓
どのような視点から見るのか
例えば、
「看護師の手術室勤務について明らかにする」
ではなく、
「手術室へ異動した看護師が、異動初期に感じる困難を明らかにする」
とすれば、
かなり具体的になります。
さらに、
「手術室へ異動後1年以内の看護師が、器械出し業務を習得する過程で感じる困難を明らかにする」
とすると、
対象や焦点がさらに見えてきます。
ただし、細かくすればよいわけでもありません
ここで注意したいのは、
具体的=長い研究目的
ではないことです。
例えば、
「A病院の〇〇病棟に勤務する経験年数〇年以上〇年未満の看護師を対象として、〇〇と〇〇と〇〇について……」
と条件を全部目的文に詰め込むと、今度は読みにくくなります。
対象者の細かな条件は、
研究方法に書けばよいものもあります。
研究目的で大切なのは、
「この研究は何を知るための研究なのか」が伝わること
です。
目的をたくさん詰め込むのも注意です
逆に、
「〇〇の実態を明らかにし、関連要因を検討し、課題を抽出し、支援方法を考察する」
のように、目的が増えていくこともあります。
やりたいことは分かります。
ただ、
一つの研究ですべてに答えられるでしょうか。
実態を明らかにする研究と、
関連要因を検討する研究では、
必要なデータや分析方法が変わる可能性があります。
さらに「支援方法の有効性」まで検討するなら、別の研究デザインが必要になるかもしれません。
研究目的は、
立派に見せるために増やすものではありません。
研究方法は目的に合わせて決まります
研究目的が具体的になると、
方法も考えやすくなります。
例えば、
「実態を明らかにする」
なら質問紙調査が候補になるかもしれません。
「経験を明らかにする」
ならインタビューが適しているかもしれません。
「AとBの関連を検討する」
なら、それぞれを測定して統計的に検討する必要があります。
つまり、
目的 → 方法
の順番です。
方法を先に決めて、
「アンケートをやりたいから、アンケートで調べられる目的を考える」
となると、研究全体が少し不自然になることがあります。
研究が終わったときに「答え」が出せる目的ですか?
研究目的を確認するときに、もう一つおすすめしたいのが、
研究終了後を想像すること
です。
例えば、
「看護師の〇〇について明らかにする」
という目的だったとして、
研究終了後に、
「その目的に対して、何と答える予定ですか?」
と考えてみます。
答えが思い浮かばない場合、
目的がまだ広すぎる可能性があります。
結果と目的を並べてみる
研究が進んでいる場合は、
目的と結果を並べて確認する方法もあります。
研究目的
「〇〇を明らかにする」
↓
研究結果
「〇〇という特徴がみられた」
↓
結論
「〇〇であることが示唆された」
この流れが自然につながるでしょうか。
もし、
研究目的には書いていない内容が結果の中心になっていたり、
逆に、
目的に書いたことに結果で答えていなかったりする場合は、
どこかにズレがあるかもしれません。
「明らかにする」が悪いわけではありません
ここは誤解のないようにしたいところです。
「明らかにする」という表現を使ってはいけない、という話ではありません。
研究目的では普通に使われる表現です。
問題なのは、
「明らかにする」と書いたことで安心して、
その前にある「何を?」を十分に考えなくなること
です。
「〇〇について明らかにする」
と書いたら、一度、
「〇〇の、何を?」
と自分に聞いてみる。
それだけでも目的がかなり具体的になることがあります。
研究目的は“立派な文章”にしなくていい
研究計画書を書くと、
どうしても学術的な文章にしようとします。
難しい言葉を使ったり、
長い文章にしたり、
研究らしい表現を使ったり。
でも、
研究目的で一番大切なのは、
読んだ人が「この研究で何を知りたいのか」を理解できること
だと思います。
短くても構いません。
むしろ、
研究者本人が一文で説明できるくらいの方が、
研究全体の軸はぶれにくくなります。
私なら研究目的をこう確認します
研究目的を書いたら、
次のように確認してみます。
「誰について調べるの?」
「何を知りたいの?」
「それが分かったら、研究目的に答えたことになる?」
そして、
「その答えを得るために、本当にこの研究方法でよい?」
ここまでつながれば、
研究目的と方法の関係もかなり整理できます。
まとめ
研究目的に、
「〇〇について明らかにする」
と書くこと自体に問題はありません。
ただ、その文章を見たときに、
「〇〇の何を明らかにするの?」
と聞かれて答えられるでしょうか。
研究目的が広すぎると、
質問項目が増える。
分析する内容も増える。
考察も広がる。
そして最後に、
「結局、この研究で何が分かったの?」
となりやすくなります。
研究目的は、
立派に書くことよりも、
研究が終わったときに答えられる形にすること
が大切です。
研究目的を書いたら、
一度、
「この研究が終わったとき、私はこの一文に答えられるだろうか?」
と考えてみてください。
意外と、研究全体を整理するきっかけになると思います。
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