「研究目的が2つ、3つになってない?」1つの研究で“明らかにしたいこと”を広げすぎない
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看護研究の計画を考えていると、
最初はシンプルだった研究が、
少しずつ大きくなっていくことがあります。
例えば、
最初は、
「看護師の〇〇に対する認識を明らかにしたい」
という研究だった。
でも、
考えているうちに、
「経験年数によって違うかも調べたい」
「所属部署との関連も見たい」
「〇〇に影響する要因も知りたい」
「必要な支援についても明らかにしたい」
と、
どんどん調べたいことが増えていく。
そして最終的には、
「この研究、結局何を明らかにしたいんだろう?」
となってしまうことがあります。
今回は、
看護研究で意外と起こりやすい、
研究目的の広げすぎ
について考えてみます。
「たくさん調べる=良い研究」ではありません
せっかく研究をするなら、
いろいろなことを調べたくなります。
アンケートを配る。
インタビューをする。
データを集める。
それなら、
できるだけ多くのことを聞いておいた方が、
研究として充実するような気もします。
でも、
研究で大切なのは、
どれだけ多くのことを調べたか
ではありません。
研究目的に対して、
必要なデータを集め、
そこから何が分かったのかを、
きちんと示せることの方が大切です。
目的が増えると必要なデータも増えます
例えば、
最初の研究目的が、
看護師の〇〇に対する認識を明らかにする。
だったとします。
これなら、
〇〇に対する認識を調べるための質問を考えます。
ところが、
さらに、
経験年数との関連を明らかにする。
が加わった。
すると、
経験年数についても、
どのように分類するのか考える必要があります。
さらに、
〇〇に影響する要因を明らかにする。
まで加える。
すると今度は、
影響する可能性のある要因を、
どこまで調査するのか考えなければなりません。
目的が増えるとアンケート項目も増えやすい
研究目的が増える。
↓
必要な情報が増える。
↓
質問項目が増える。
↓
アンケートが長くなる。
ということがあります。
以前、
「アンケート項目を増やせば良い研究になる?」
という記事を書きました。
質問項目が増えてしまう原因は、
単に、
「いろいろ聞きたいから」
だけではありません。
その前の段階で、
研究目的そのものが広がりすぎている
こともあります。
「これも聞いておこう」が積み重なる
アンケートを作っていると、
よく出てくるのが、
「せっかくだから、これも聞いておこう」
です。
年齢。
経験年数。
所属部署。
役職。
資格。
研修経験。
勤務形態。
さらに、
〇〇について。
△△について。
□□について。
一つひとつを見ると、
確かに、
何か関係がありそうです。
でも、
研究目的と直接関係しない項目まで増えていくと、
分析するときに、
「この項目、何のために聞いたんだっけ?」
となることがあります。
研究目的は「データを集める理由」になります
例えば、
アンケートに、
「経験年数」
という項目を入れる。
なぜ必要なのでしょうか。
研究対象者の基本属性として、
集団の特徴を示すため?
経験年数による違いを比較するため?
〇〇との関連を調べるため?
同じ「経験年数」という項目でも、
研究の中での役割は違います。
そのため、
質問項目を考えるときには、
「このデータは、どの研究目的に必要?」
と考えてみます。
目的が増えると分析も増えます
データをたくさん集めれば、
当然、
分析することも増えます。
例えば、
全体の傾向を見る。
経験年数で比較する。
部署別に比較する。
資格の有無で比較する。
相関を見る。
関連要因を検討する。
というように、
分析が増えていきます。
すると、
結果も増えます。
表も増える。
グラフも増える。
そして、
考察しなければならない結果も増えていきます。
結果がたくさん出ても「何が重要?」となることがあります
分析をたくさんすると、
結果もたくさん出ます。
一見すると、
研究として充実しているように見えます。
でも、
結果が、
10個。
20個。
30個。
と並んだとき、
読者からすると、
「この研究で一番分かったことは何?」
が見えにくくなることがあります。
研究は、
結果の数が多いほど、
必ず良くなるわけではありません。
考察も広がります
結果が増えれば、
考察する内容も増えます。
例えば、
経験年数では差があった。
部署では差がなかった。
年齢とは関連があった。
資格の有無では違いがなかった。
研修経験では差があった。
こうなると、
それぞれについて、
先行研究を探し、
理由を考え、
意味を検討する必要があります。
すると、
考察全体が、
あちらこちらへ広がってしまうことがあります。
「いろいろ分かったけど、まとまらない」
これは、
研究で意外と困る状態です。
データはある。
結果も出た。
統計解析もした。
でも、
論文を書こうとすると、
何を中心に書けばよいのか分からない。
こうした場合、
文章力だけが原因とは限りません。
そもそも、
研究目的が広く、
研究全体の中心が見えにくくなっている可能性があります。
研究目的を1文にしただけでは「1つ」とは限りません
例えば、
本研究は、看護師の〇〇に対する認識の実態を明らかにするとともに、経験年数による違いおよび関連要因を明らかにし、今後必要な支援について検討することを目的とする。
一応、
1文です。
でも、
よく見ると、
いくつかの目的が入っています。
① 認識の実態を明らかにする
② 経験年数による違いを明らかにする
③ 関連要因を明らかにする
④ 必要な支援を検討する
1文だから、
研究目的が1つ、
というわけではありません。
「明らかにする」が何個あるか見てみる
研究目的が広がっていないか確認するとき、
簡単な方法の一つが、
「何を明らかにすると書いている?」
と分解してみることです。
〇〇の実態。
〇〇の特徴。
〇〇との関連。
〇〇に影響する要因。
〇〇の効果。
〇〇に必要な支援。
これらが、
いくつも並んでいるなら、
一つの研究で、
かなり多くのことを調べようとしているかもしれません。
もちろん研究目的が複数あってはいけないわけではありません
ここは、
誤解しないようにしたいところです。
研究目的は、
絶対に1つでなければならない、
という話ではありません。
研究によっては、
複数の目的を設定することもあります。
例えば、
主となる目的があり、
それに関連する副次的な目的を設定する。
ということもあります。
大切なのは、
目的が複数あること自体ではなく、それぞれが一つの研究として整理されているか
です。
「主目的は何?」と考える
目的がいくつもあるとき、
私は、
まず、
「この研究で一番明らかにしたいことは何?」
と考えます。
例えば、
看護師の〇〇に対する認識の実態を知りたい。
これが一番なのか。
経験年数による違いを知りたい。
こちらが一番なのか。
関連要因を明らかにしたい。
これが一番なのか。
中心が決まると、
必要なデータや分析も整理しやすくなります。
「知りたいこと」と「研究目的」を分ける
研究テーマについて考えていると、
知りたいことは、
たくさん出てきます。
これは、
悪いことではありません。
むしろ、
研究テーマを深く考えているからこそ、
疑問が増えることもあります。
ただ、
知りたいことを全部、今回の研究目的にする必要はありません。
ここは、
分けて考えてもよいと思います。
研究ノートに「次に知りたいこと」を残す
今回の研究には入れない。
でも、
気になる。
そんな疑問は、
捨てる必要はありません。
例えば、
今回の研究
→ 〇〇の実態を明らかにする。
次に調べたいこと
→ 経験年数による違いは?
→ 〇〇に関連する要因は?
→ どのような支援が有効?
と、
次の研究候補として残しておきます。
すると、
一つの研究へ無理に全部入れなくてもよくなります。
1本の研究から次の研究へつながってもよい
例えば、
研究①
〇〇の実態を明らかにする。
↓
結果から、
経験年数によって違う可能性が見えてきた。
↓
研究②
経験年数による〇〇の違いを検討する。
↓
さらに、
ある要因との関連が考えられた。
↓
研究③
〇〇に関連する要因を検討する。
このように、
一つの研究から、
次の研究へつなげることもできます。
研究を小さくすることは「弱くすること」ではありません
研究目的を絞ると、
「内容が薄くならない?」
と不安になることがあります。
でも、
目的を絞ることは、
必ずしも研究を弱くすることではありません。
むしろ、
研究目的。
方法。
結果。
考察。
結論。
が、
一本の線でつながりやすくなります。
広い研究と深い研究は違います
いろいろなことを調べると、
研究の範囲は広くなります。
でも、
範囲が広いことと、
内容が深いことは、
同じではありません。
一つの問いについて、
必要なデータを集め、
先行研究と比較し、
丁寧に考察する。
こうした研究にも、
十分な価値があります。
「支援を検討する」まで本当にできる?
看護研究では、
研究目的の最後に、
「今後必要な支援について検討する」
という言葉が入ることがあります。
もちろん、
研究内容によっては、
適切な目的です。
ただ、
実態を調査しただけで、
具体的にどの支援が有効なのかまで、
本当に言えるでしょうか。
ここも、
少し考えてみてもよいと思います。
「実態が分かった」から「この支援が必要」までには距離があります
例えば、
新人看護師の多くが、
夜勤に不安を感じていた。
この結果から、
「支援が必要かもしれない」
と考えることはできます。
でも、
どの支援が、
どの程度有効なのか。
それは、
別の研究が必要になるかもしれません。
研究目的を広げると、
得られたデータ以上のことを結論で言いたくなる
ことがあります。
「影響する要因」も簡単ではありません
例えば、
年齢。
経験年数。
所属部署。
研修経験。
これらと〇〇との関連を調べた。
そこで関連が認められたから、
「〇〇に影響する要因である」
と言えるでしょうか。
研究デザインによっては、
そこまで言えない場合があります。
以前の記事でも触れましたが、
関連と因果関係は、
同じではありません。
目的を大きくすると、
必要な研究デザインも変わってくることがあります。
研究目的と研究方法はセットです
例えば、
実態を知りたい
→ 実態を把握できる調査方法を考える。
2群を比較したい
→ 比較できる対象者・データ・分析方法が必要。
関連を調べたい
→ 関連を検討できるデータが必要。
効果を検討したい
→ 効果を評価できる研究デザインが必要。
つまり、
研究目的を一つ追加すると、
単に、
目的の文章が1行増えるだけではありません。
研究方法全体に影響する可能性があります。
研究目的から質問項目を逆算する
アンケート調査なら、
目的が決まったあと、
質問項目を考えます。
例えば、
研究目的
「看護師の〇〇に対する認識の実態を明らかにする」
↓
必要なデータは?
〇〇に対する認識。
対象者の特徴。
↓
必要な質問項目は?
というように、
目的から逆算します。
質問項目から目的を作らない
反対に、
アンケートへ、
いろいろな質問を入れた。
せっかく聞いたから、
全部分析したい。
そして、
分析するために、
研究目的を追加する。
こうなると、
順番が逆になってしまいます。
以前の記事でも書きましたが、
研究は、
「何が調べられるか」ではなく「何を明らかにしたいか」
から考える方が整理しやすくなります。
統計ソフトで分析できるから分析する、にも注意
データを集めたあと、
統計ソフトを見ると、
いろいろな分析ができます。
比較。
相関。
回帰分析。
クロス集計。
など。
すると、
「これもできそう」
「これも調べてみよう」
となることがあります。
でも、
分析できることと、
研究目的に必要なことは、
同じではありません。
結果の表を作ったときに確認する
研究結果をまとめるとき、
表が、
表1。
表2。
表3。
表4。
表5。
……。
と増えてきたら、
一度、
「この表は、どの研究目的に答えるためのもの?」
と確認してみます。
答えられない表があるなら、
研究目的との関係を、
もう一度確認してもよいかもしれません。
考察でも研究目的に戻る
考察を書いていると、
結果から、
いろいろなことを考えたくなります。
でも、
考察も、
研究目的から離れすぎると、
まとまりにくくなります。
この研究で明らかにしたかったことは何?
その問いに対して、
結果は何を示した?
なぜその結果になった?
先行研究と比べてどう?
看護としてどんな意味がある?
というように、
目的を中心に考えていきます。
研究目的は「研究全体の中心線」
私は、
研究目的を、
研究全体の中心線
のように考えると、
分かりやすいと思います。
研究目的
↓
研究方法
↓
必要なデータ
↓
分析
↓
結果
↓
考察
↓
結論
これらが、
できるだけ一本につながっている。
目的が増えすぎると、
この線が、
2本。
3本。
4本。
と分かれていきます。
もちろん、
複数の線を整理できる研究もあります。
でも、
初めて研究をする場合などは、
一本の線をしっかり作る方が、
研究全体をまとめやすいことがあります。
私なら目的が広がったときに5つ確認します
研究目的が、
どんどん増えてきたら、
私は次のように考えます。
① 一番明らかにしたいことは何?
今回の研究の中心を確認します。
② それ以外は今回必要?
面白い疑問でも、
今回調べる必要があるとは限りません。
③ 目的を追加すると何が増える?
質問項目。
対象者数。
分析。
結果。
考察。
必要な作業まで考えます。
④ 今回の研究方法で本当に答えられる?
「影響」
「効果」
「必要な支援」
など、
目的の表現が研究デザイン以上になっていないか確認します。
⑤ 次の研究に回せない?
今回すべて明らかにしなくても、
次の研究テーマとして残すことができます。
研究計画書が複雑になってきたら目的へ戻る
研究を考えているうちに、
何をしているのか分からなくなってきた。
アンケートが長くなった。
分析方法が増えた。
結果のイメージがまとまらない。
そんなときは、
一度、
研究目的だけを見てみます。
そして、
「今回、本当に明らかにしたいことは何?」
と考えます。
ここが整理されると、
不要な質問項目や、
分析が見えてくることがあります。
「削る」のではなく「次に残す」
せっかく思いついた疑問を、
研究目的から外すのは、
少しもったいなく感じるかもしれません。
でも、
削除する、
と考えなくてもよいと思います。
今回は調べない。
次の研究に残す。
と考えます。
研究をしていると、
一つの研究から、
次の疑問が生まれることがあります。
それは、
研究が続いていくきっかけにもなります。
まとめ
研究を考えていると、
知りたいことは、
どんどん増えていきます。
実態も知りたい。
経験年数でも比較したい。
関連要因も知りたい。
必要な支援も考えたい。
どれも、
興味のある問いだと思います。
でも、
すべてを、
一つの研究で明らかにする必要はありません。
研究目的が増えると、
必要なデータが増える。
質問項目が増える。
分析が増える。
結果が増える。
考察も広がる。
その結果、
「結局、この研究で一番分かったことは何?」
が見えにくくなることがあります。
そんなときは、
「今回、一番明らかにしたいことは何?」
へ戻ってみます。
目的を絞ることは、
研究を小さくすることではありません。
むしろ、
目的。
方法。
結果。
考察。
結論。
を、
一本につなげるための整理になることがあります。
そして、
今回入れなかった疑問は、
捨てるのではなく、
次の研究へ残しておく。
1本の研究ですべて答えを出そうとしなくても大丈夫です。
一つの問いに答えたら、
そこから、
また次の問いが生まれる。
それも、
研究を続けていく面白さの一つだと思います。
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