看護研究を始めるとき、
最初に考えるものの一つが、
研究タイトル
だと思います。
研究計画書を書く。
倫理審査へ提出する。
院内研究の計画を立てる。
卒業研究を始める。
こうした場面では、
研究のタイトルを書く欄があります。
そこで、
一生懸命タイトルを考える。
そして一度決めると、
「もうこのタイトルで研究を進めないといけない」
と思ってしまうことがあります。
でも、
研究を進めていると、
最初に考えていたことと、
実際に調べる内容が少しずつ変わることがあります。
そんなとき、
タイトルも変えてよいのでしょうか。
今回は、
研究内容とタイトルの関係
について考えてみます。
最初から完璧なタイトルを作るのは難しい
研究を始めたばかりの段階では、
まだ決まっていないことがたくさんあります。
誰を対象にする?
何を調べる?
どんな方法を使う?
何と何を比較する?
どこまで明らかにする?
こうしたことを、
研究計画を作りながら具体的にしていきます。
つまり、
研究開始時点では、
研究そのものがまだ完全には固まっていない
ことがあります。
その段階で、
最終的な研究内容を完璧に表したタイトルを作るのは、
意外と難しいものです。
研究が具体的になるとタイトルも具体的になります
例えば、
最初は、
「新人看護師のストレスに関する研究」
というテーマだったとします。
研究計画を考えていくと、
対象は、
就職後1年以内の新人看護師。
調べたいのは、
ストレス全般ではなく、
夜勤開始後に感じる困難。
さらに、
その困難と職場で受けている支援について調べる。
というように、
少しずつ具体的になってきたとします。
そうなると、
最初の、
「新人看護師のストレスに関する研究」
では、
実際の研究内容を十分に表せなくなるかもしれません。
タイトルに研究を合わせない
ここで注意したいのが、
最初に決めたタイトルを守ろうとすること
です。
「タイトルにストレスと書いたから、ストレスについて全部調べないと」
「タイトルを変えたくないから、この項目も残しておこう」
となると、
研究内容をタイトルに合わせることになります。
でも、
本来は逆だと思います。
研究内容があって、それを表すものがタイトル
です。
タイトルを守るために研究内容を広げるのではなく、
研究内容が変わったなら、
それに合わせてタイトルを見直します。
タイトルは研究の「看板」のようなもの
論文や抄録を探すとき、
最初に目に入るものの一つが、
タイトルです。
タイトルを見て、
「自分が探している研究かもしれない」
と思えば、
要旨を読みます。
逆に、
関係がなさそうなら、
そのまま次の論文へ進むこともあります。
つまり、
タイトルには、
「この研究では何を調べたのか」
を読者へ伝える役割があります。
タイトルだけで全部説明する必要はありません
だからといって、
研究内容をすべてタイトルへ入れる必要もありません。
対象者。
研究場所。
研究方法。
調査時期。
使用した尺度。
分析方法。
結果。
これらを全部入れたら、
非常に長いタイトルになってしまいます。
大切なのは、
研究の中心が伝わること
です。
何について調べた研究なのか。
必要なら、
誰を対象にしたのか。
どのような視点から調べたのか。
そのあたりが伝わるタイトルを考えます。
「〇〇について」だけでは広すぎることがあります
看護研究では、
例えば、
「新人看護師のストレスについて」
「術後患者の不安について」
「看護師の退院支援について」
といったタイトルを考えることがあります。
もちろん、
研究内容によっては問題ありません。
でも、
少し広すぎる場合もあります。
例えば、
「術後患者の不安について」
だけでは、
不安の何を調べたのかが分かりません。
不安の程度?
不安の内容?
不安に関連する要因?
看護介入との関係?
患者さんへのインタビュー?
タイトルを見ただけでは、
いろいろな研究が考えられます。
研究目的とタイトルを並べてみる
タイトルを考えるとき、
私は、
研究目的と並べて確認する
方法が分かりやすいと思います。
例えば、
研究目的
「手術を受ける患者が術前に感じる不安の内容を明らかにする」
タイトル
「手術患者の不安について」
少し広いかもしれません。
研究目的では、
術前
不安の内容
を調べています。
それなら、
タイトルにも、
その研究の焦点が伝わる表現を入れられないか考えてみます。
「タイトルから想像する研究」と実際の研究は合っていますか?
タイトルを見た人は、
そこから研究内容を予想します。
例えば、
「看護師の〇〇に影響する要因」
というタイトルなら、
読者は、
「〇〇に関連する複数の要因を調べた研究かな」
と考えるかもしれません。
でも実際には、
1つの項目について単純に比較しただけだった。
となると、
タイトルから受ける印象と、
実際の研究内容に差が出ます。
「影響」という言葉にも注意
研究タイトルでは、
「〇〇に影響を与える要因」
という表現を使いたくなることがあります。
でも、
研究方法によっては、
本当に「影響」と言えるのか、
慎重に考える必要があります。
例えば、
ある時点でアンケートを行い、
AとBに関連があった。
この結果だけで、
「AがBへ影響した」
とまで言えるでしょうか。
関連があることと、
原因になっていることは、
同じではありません。
タイトルの言葉が、
研究結果より強くなっていないか確認します。
「効果」も同じです
例えば、
「〇〇指導の効果」
というタイトル。
「効果」と書くと、
その介入によって変化が生じたことを、
研究で評価している印象があります。
でも、
実際には、
指導を受けた人へ感想を聞いただけだった。
という場合、
「効果」という言葉が適切なのか、
考える必要があります。
タイトルは短いですが、
一つの言葉によって研究の意味が大きく変わる
ことがあります。
対象者をタイトルに入れた方がよい場合もあります
例えば、
同じ「不安」を扱う研究でも、
新人看護師。
看護学生。
手術患者。
患者家族。
では、
研究の意味が大きく違います。
対象者が研究の特徴として重要なら、
タイトルに入れることで、
内容が伝わりやすくなります。
一方で、
タイトルが長くなりすぎる場合には、
どこまで入れるかを整理します。
研究方法をタイトルに入れる場合もあります
例えば、
インタビュー調査
質問紙調査
文献レビュー
など、
研究方法そのものが、
研究を理解するうえで重要な場合があります。
特に、
「〇〇の経験」
「〇〇に対する認識」
といったテーマでは、
インタビューによる研究なのか、
質問紙による研究なのかで、
得られる内容も違います。
ただし、
これも必ず入れなければならないわけではありません。
研究内容に応じて判断します。
タイトルを長くすれば正確になる?
研究内容を正確に伝えようとすると、
どんどん情報を追加したくなります。
対象者。
場所。
方法。
調査内容。
分析方法。
結果。
全部入れたら、
確かに詳しくなります。
でも、
今度は、
タイトルだけで一文のように長くなる
ことがあります。
正確さは大切ですが、
読みやすさも大切です。
タイトルで伝える情報と、
要旨や本文で説明する情報を分けて考えます。
副題を使う方法もあります
タイトルへ情報を入れたいけれど、
長くなってしまう。
そんな場合、
研究や提出先のルールによっては、
副題を使う方法もあります。
例えば、
〇〇に対する新人看護師の認識
―インタビュー調査を通して―
という形です。
主題で研究テーマを示し、
副題で、
対象や方法などを補足できます。
ただし、
学会や雑誌によって、
タイトルの形式や文字数などに決まりがある場合もあるので、
投稿規定などは確認します。
結果が出てからタイトルを見ると違って見えることがあります
研究計画の段階では、
「このタイトルで大丈夫」
と思っていた。
でも、
分析が終わり、
結果を書き、
考察まで進んでから、
もう一度タイトルを見る。
すると、
「あれ?実際に明らかになったことと少し違うな」
と気付くことがあります。
これは、
それほど不思議なことではありません。
研究を始めたときより、
終わりに近づいたときの方が、
自分の研究が何を明らかにしたのか
を理解できているからです。
タイトルは最後にもう一度確認する
そのため、
最初にタイトルを決めたとしても、
最後にもう一度確認することをおすすめします。
研究目的。
研究方法。
結果。
考察。
結論。
これらがまとまったあとで、
タイトルを見る。
そして、
「このタイトルは、本当にこの研究を表している?」
と確認します。
ただし、いつでも自由に変更できるとは限りません
ここは大切です。
研究が進んだから、
タイトルは好きなタイミングで自由に変えてよい、
という意味ではありません。
例えば、
倫理審査を受けている研究。
研究計画書を正式に提出している研究。
研究登録を行っている研究。
助成を受けている研究。
学会へ演題登録した後。
こうした場合には、
タイトル変更について、
所定の手続きや確認が必要になることがあります。
特に、
タイトル変更だけではなく、
研究目的や対象、方法まで変わる場合
は、
単なるタイトル修正とは話が違います。
所属施設や倫理審査委員会、学会、投稿先などの規定を確認する必要があります。
「タイトルを変えた」ではなく「研究内容が変わっていないか」
例えば、
最初は、
新人看護師の不安を調べる研究だった。
途中から、
新人看護師と中堅看護師を比較する研究に変えた。
これは、
タイトルだけの問題ではありません。
対象。
研究目的。
分析方法。
なども変わる可能性があります。
そのため、
「タイトルだけ変えれば大丈夫」
とは考えない方がよいと思います。
タイトル変更には2種類あると考えると分かりやすい
例えば、
① 内容は同じで表現を整える
「新人看護師の〇〇について」
↓
「新人看護師が感じる〇〇の特徴」
研究内容自体は大きく変わらず、
より正確な表現へ調整しています。
② 研究内容そのものが変わっている
「新人看護師の〇〇について」
↓
「新人看護師と中堅看護師における〇〇の比較」
こちらは、
対象や研究目的そのものが変わっている可能性があります。
この2つは、
分けて考えた方がよいと思います。
タイトルを見直すと研究のズレに気付くこともあります
タイトルを考える作業は、
単なる名前付けではありません。
例えば、
研究目的では、
「〇〇の実態を明らかにする」
としている。
でも、
タイトルでは、
「〇〇に影響する要因」
となっている。
この場合、
目的とタイトルが少し違います。
タイトルを確認することで、
研究目的・方法・結果のズレ
に気付くことがあります。
「この研究を一言で説明すると?」と考えてみる
タイトルが決まらないとき、
私は、
「この研究は何を調べた研究?」
と一言で説明してみる方法が分かりやすいと思います。
例えば、
手術を初めて受ける患者が、術前にどのような不安を感じているのかをインタビューした研究。
ここから、
研究の中心となる言葉を拾います。
手術を初めて受ける患者。
術前。
不安。
内容・経験。
インタビュー。
全部を入れる必要はありません。
でも、
何が研究の中心なのかは、
かなり見えてきます。
私ならタイトルを5つの視点で確認します
研究タイトルを考えたら、
次の5つを確認します。
① 研究目的と合っている?
タイトルを読んで想像する研究と、
実際の目的が一致しているでしょうか。
② 実際に調べたことが書かれている?
調べていないことまで、
タイトルに含めていないでしょうか。
③ 言葉が強すぎない?
「影響」
「効果」
「原因」
など、
研究方法以上のことを表していないでしょうか。
④ 広すぎない?
「〇〇について」だけで、
何を調べた研究なのか分かるでしょうか。
⑤ 長すぎない?
すべてをタイトルで説明しようとしていないでしょうか。
最初のタイトルは「仮タイトル」でもよい
研究を始める段階では、
まだ研究内容が固まっていないことがあります。
そんなときは、
最初から、
「これが完成版のタイトル」
と思わなくてもよいと思います。
まず、
研究の方向性を示すタイトルを置く。
研究目的や方法が具体的になったら、
もう一度見直す。
分析が終わったら、
さらに確認する。
このように、
研究と一緒にタイトルも具体化していく
と考えると、
少し作りやすくなります。
もちろん、正式提出後の変更については、
必要な手続きを確認します。
タイトルを守るのではなく、研究を正しく表す
一度タイトルを決めると、
なんとなく、
変えてはいけないような気がします。
でも、
大切なのは、
最初に考えた言葉を最後まで守ることではありません。
最終的な研究内容を、できるだけ正確に表すこと
です。
研究が具体的になれば、
タイトルの表現を見直す必要が出てくることもあります。
それ自体は、
研究がぶれているというより、
研究内容が整理されてきた結果
の場合もあります。
まとめ
研究タイトルは、
研究を始めるときに決めることが多いと思います。
でも、
最初から完璧なタイトルを作れるとは限りません。
研究を進める中で、
目的が明確になる。
対象が決まる。
方法が具体的になる。
分析する内容が見えてくる。
結果が出る。
すると、
最初のタイトルと、
実際の研究内容に、
少しずれが出ることがあります。
そんなときは、
タイトルに研究を合わせるのではなく、研究内容にタイトルを合わせる
という視点を持ってみます。
そして最後に、
研究目的。
方法。
結果。
結論。
とタイトルを並べて、
「このタイトルは、本当に今回の研究を表している?」
と確認する。
研究タイトルは、
最初に決めて終わりではなく、
研究がまとまってきたときに、もう一度見直すもの
と考えてもよいと思います。
ただし、
倫理審査や正式な研究計画書などを提出した後は、
変更に手続きが必要な場合があります。
「タイトルの表現を整えただけ」なのか、
「研究内容そのものが変わった」のかも含めて、
必要に応じて所属施設などのルールを確認してください。
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