看護研究の考察を書いていると、
「もっと文献を使った方がいい」
と言われることがあります。
そこで文献を探す。
関連しそうな論文を見つける。
考察に引用する。
さらに別の文献も追加する。
気付けば、
考察の中にたくさんの参考文献が入っている。
それなのに、
「考察が浅い」
と言われてしまう。
そんなことがあります。
文献もしっかり調べた。
引用も増やした。
それなのに、
なぜ考察が深くならないのでしょうか。
今回は、
考察における参考文献の使い方
について考えてみます。
文献が多ければ考察は深くなる?
例えば、
今回の研究で、
「経験年数の長い看護師ほど〇〇得点が高かった」
という結果が出たとします。
そこで考察に、
Aらは、経験年数と〇〇には関連があると報告している。
Bらも、経験年数の長い看護師ほど〇〇が高いと報告している。
また、Cらは〇〇には臨床経験が影響すると報告している。
と書く。
文献は3つ使っています。
一見すると、
しっかり文献を調べた考察に見えます。
でも、
ここで少し考えてみます。
「今回の研究結果について、自分は何を考えた?」
この部分が、
まだほとんど書かれていません。
文献を紹介することと、考察することは少し違う
もちろん、
先行研究を示すことは大切です。
自分の研究結果だけを見て、
自由に理由を考えればよいわけではありません。
でも、
文献をたくさん紹介するだけでは、
考察というより、
「先行研究の紹介」
に近くなることがあります。
大切なのは、
文献そのものをたくさん見せることではなく、
今回の研究結果を考えるために文献を使うこと
です。
主役は「今回の研究結果」
考察を書いていると、
文献を探すことに一生懸命になって、
いつの間にか先行研究が主役になってしまうことがあります。
でも、
考察の中心にあるのは、
今回の研究で得られた結果
です。
今回、
何が分かったのか。
その結果は、
先行研究と同じなのか。
違うのか。
なぜ、そのような結果になったのか。
その結果には、
どんな意味があるのか。
そこを考えるために、
先行研究を使います。
「一致していた」で終わっていませんか?
よくある書き方の一つが、
本研究の結果は、Aらの報告と一致していた。
です。
これは必要な文章になることがあります。
でも、
ここで終わってしまうと、
「同じでした」
という確認だけになります。
そこで、
もう一歩進めてみます。
なぜ一致したのだろう?
今回の対象者と、
先行研究の対象者に、
共通する特徴はなかったでしょうか。
研究環境は似ていなかったでしょうか。
同じような教育や経験が、
結果に影響していなかったでしょうか。
「一致していた」の先を考えると、
文献が考察の材料になってきます。
「一致しなかった」も大切な材料です
反対に、
今回の結果と先行研究が違うこともあります。
そんなとき、
「この文献は使えない」
と思ってしまうことがあります。
でも、
むしろ違っているからこそ、
考えられることがあります。
例えば、
先行研究では、
経験年数が長いほど〇〇得点が高かった。
しかし、
今回の研究では差がなかった。
では、
なぜ違ったのでしょうか。
対象者の年齢?
経験年数?
所属部署?
施設規模?
教育体制?
使用した尺度?
調査した時期?
こうした違いを見ていくと、
今回の結果について考えるヒントになります。
自分の研究と文献を「比較」してみる
文献を見つけたら、
単に、
「この論文も〇〇について書いている」
で終わらせず、
今回の研究と比べてみます。
例えば、
今回の研究
大学病院の看護師が対象
先行研究
地域の中小規模病院の看護師が対象
同じような結果が出ていても、
対象となる施設が違います。
それでも同じ結果だった。
ここから、
施設の違いにかかわらず共通する可能性
を考えられるかもしれません。
逆に結果が違えば、
施設環境が影響した可能性を考えるきっかけになります。
文献の「結果」だけを見ない
論文を探していると、
自分が欲しい結果を見つけた瞬間に、
「これ使える!」
と思うことがあります。
でも、
その論文が、
誰を対象にしているのか。
どんな方法で調査したのか。
何人を調査したのか。
どんな環境で行われたのか。
何を測定したのか。
こうした部分も大切です。
同じような結果が書かれていても、
研究条件が大きく違えば、
単純に比較できない場合があります。
「自分の結果に合う文献」だけ探していませんか?
これも気を付けたいところです。
今回の結果が、
「Aが高かった」
だった。
そこで、
「Aが高かった」
と報告している論文だけを探す。
見つかったら引用する。
これでは、
自分の結果を支持してくれる文献だけを集めることになります。
反対の結果を示している研究がないか。
関連がなかったとする研究はないか。
違う説明をしている研究はないか。
そうした文献も確認してみると、
考察の見え方が変わることがあります。
文献を並べるだけの文章になっていないか
例えば、
Aらは〇〇と報告している。Bらは△△と報告している。また、Cらは□□と述べている。さらにDらは……
と続いていたら、
一度止まってみます。
そして、
「この文献を使って、今回の結果について何を説明したいの?」
と考えます。
答えられなければ、
文献を入れること自体が目的になっている可能性があります。
1つの文献でも考察はできます
考察を深くするために、
必ずたくさんの文献を引用しなければならない、
というわけではありません。
例えば、
今回の結果と非常に近い先行研究が1つあった。
その研究について、
対象者。
研究環境。
方法。
結果。
今回の研究との共通点。
今回の研究との違い。
を丁寧に比較する。
その方が、
関連の薄い文献を何本も並べるより、
今回の結果を説明しやすいこともあります。
文献を使ったあとに「今回の研究では?」と戻る
文献を引用したあと、
私は、
「では、今回の研究ではどうなの?」
と戻ってくることが大切だと思います。
例えば、
Aらは、臨床経験の蓄積によって〇〇能力が高まると報告している。
ここで終わらず、
本研究の対象者においても、経験年数の長い群では〇〇を経験する機会が多かった可能性があり、このような経験の蓄積が今回の結果に関連したことが考えられる。
というように、
文献 → 今回の結果
へ戻ります。
もちろん、
実際に調査していないことを断定してはいけません。
「考えられる」
「可能性がある」
など、
結果から言える範囲で考えます。
「今回の研究 → 文献 → 今回の研究」
考察が文献紹介になってしまうときは、
この形を意識すると分かりやすいと思います。
今回の研究結果
↓
関連する先行研究
↓
先行研究との共通点・相違点
↓
なぜそうなったのか
↓
今回の研究結果として何が考えられるか
つまり、
文献へ行ったまま戻ってこないのではなく、
最後は自分の研究に戻ってくる
ということです。
例えばこんな違いです
文献を並べた場合
本研究では、経験年数の長い看護師ほど〇〇得点が高かった。Aらは、経験年数と〇〇には関連があると報告している。Bらも経験年数の長い看護師ほど〇〇が高いと報告している。Cらは臨床経験が〇〇に影響すると述べている。
文献は入っています。
でも、
少し「報告の紹介」が続いている印象があります。
今回の結果へ戻した場合
本研究では、経験年数の長い看護師ほど〇〇得点が高かった。Aらも経験年数と〇〇との関連を報告しており、本研究はこれを支持する結果であった。経験を重ねることで〇〇を必要とする場面に遭遇する機会が増え、その経験の蓄積が今回の結果に関連した可能性が考えられる。
まだこれだけで十分とは限りませんが、
少なくとも、
文献を紹介するだけではなく、今回の結果を説明するために使う
形になっています。
さらに「だから何?」を考えてみる
前回の記事では、
考察を深めるときに、
「なぜ?」
と、
「だから何?」
を考える方法について書きました。
文献を使う場合も同じです。
今回の結果が先行研究と一致した。
なぜ?
共通する背景があるかもしれない。
だから何?
今回の結果は、
どのような看護実践や教育につながるのか。
ここまで考えると、
単なる文献紹介から、
研究結果の意味へ進みやすくなります。
文献を増やす前に確認したいこと
考察が浅いと感じると、
つい、
「文献が足りないのかな?」
と思います。
もちろん、
本当に文献が不足している場合もあります。
でも、
新しい論文を探す前に、
今使っている文献について、
「この文献で何を説明したい?」
と確認してみる。
すでにある文献を、
十分に考察へ使えていないだけかもしれません。
文献の数ではなく「役割」を考える
考察で使う文献には、
それぞれ役割があります。
今回の結果を支持する文献。
反対の結果を示す文献。
結果が生じた理由を考えるための文献。
対象者の特徴を説明する文献。
看護実践への示唆を考えるための文献。
このように考えると、
「とにかく文献を増やす」
から、
「この文献を何のために使う?」
へ視点が変わります。
引用した文献の後に、自分の文章がありますか?
考察を書き終えたら、
引用部分を一度見てみます。
引用したあと、
すぐ次の文献へ移っていないでしょうか。
Aらの報告。
↓
Bらの報告。
↓
Cらの報告。
となっていたら、
その間に、
自分の研究結果について考えた文章
を入れられないか確認します。
これは、
文献紹介になっていないかを確認する一つの方法です。
「引用文献が少ない=悪い」とは限らない
研究のテーマによっては、
関連する先行研究が少ないこともあります。
新しいテーマ。
非常に限定された対象。
特殊な臨床場面。
こうした研究では、
完全に一致する文献がなかなか見つからないこともあります。
そんなときに、
無理に似た文献をたくさん集めるより、
近い研究との共通点・相違点を丁寧に考える方が、
意味のある考察になる場合があります。
逆に、文献が多く必要になることもあります
もちろん、
文献を減らせばよいという話でもありません。
複数の視点から説明する必要がある。
先行研究の結果が一致していない。
研究背景が複雑。
いくつかの要因を考える必要がある。
そんな場合には、
複数の文献を使うことが必要になります。
重要なのは、
多いか少ないかではなく、必要な文献を必要な場所で使えているか
だと思います。
私なら文献を入れたあとに3つ確認します
考察に文献を入れたら、
次の3つを確認します。
① この文献は何のために引用した?
今回の結果との関係を説明できるでしょうか。
② 文献を紹介しただけになっていない?
先行研究の説明で文章が終わっていないでしょうか。
③ 最後に今回の研究へ戻っている?
その文献から、
今回の結果について何を考えたのかを書けているでしょうか。
この3つだけでも、
文献の使い方を見直しやすくなります。
文献を「増やす」より「つなぐ」
考察を書いていて、
何か足りないと感じる。
そんなとき、
文献をもう1本、
さらにもう1本、
と追加したくなることがあります。
でも、
一度、
今ある文献と今回の結果が、ちゃんとつながっているか
を確認してみます。
今回の結果。
先行研究。
自分の解釈。
研究としての意味。
これらがつながっていれば、
文献数そのものが多くなくても、
考察として読みやすくなることがあります。
まとめ
考察を深くしたくて、
参考文献を増やす。
これは間違いではありません。
でも、
参考文献が多い=考察が深い
とは限りません。
文献を、
Aらは〇〇。
Bらは△△。
Cらは□□。
と並べるだけでは、
先行研究の紹介になってしまうことがあります。
大切なのは、
今回の研究結果を考えるために文献を使うこと。
今回の結果は何だった?
↓
先行研究ではどうだった?
↓
同じ?違う?
↓
なぜ?
↓
今回の研究では何が考えられる?
この流れを意識してみます。
そして、
文献を引用したら、
最後にもう一度、
「今回の研究では?」
と戻ってみる。
考察が浅いと感じたとき、
すぐに文献を増やすのではなく、
今ある文献をどう使っているか
を見直してみるのも一つの方法です。
文献は、
考察を長くするために使うものではなく、
自分の研究結果を考えるための材料
として使う。
そう考えると、
参考文献との付き合い方も少し変わってくると思います。
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