研究の結果が出た。
アンケートを集計して、表やグラフも作った。
いよいよ考察を書こうと思って結果を見返してみると、
「これ、全部について考察を書かないといけないの?」
と思うことがあります。
特にアンケート調査では、質問項目が多ければ、それだけたくさんの結果が出ます。
結果①について考察。
結果②について考察。
結果③について考察。
……と、一つずつ順番に書いていくと、考察はどんどん長くなります。
でも、最後まで読んでみると、
「結局、この研究から何が分かったの?」
が見えにくくなってしまうことがあります。
今回は、研究結果がたくさん出たときに、何を優先して考察するのかについて考えてみます。
結果に書いたことを全部考察する必要はある?
例えば、看護師を対象に20項目のアンケート調査を行ったとします。
結果には、
- 対象者の年齢
- 経験年数
- 所属部署
- 研修経験
- 各質問項目への回答
- 属性による比較
- 項目間の関連
など、さまざまなデータが出てきます。
これらは研究結果として必要だから示しています。
でも、
結果に書いたものすべてを、同じ分量で考察しなければならないわけではありません。
例えば、
「対象者の平均年齢は〇歳であった」
という結果と、
「〇〇を実践できていると回答した者は全体の30%であった」
という結果。
研究目的によっては、この2つの重要度は大きく違います。
それなのに、
結果に出てきた順番に一つずつ同じように考察すると、研究の中心となる結果が埋もれてしまいます。
考察は、結果を全部説明する場所ではなく、その研究で重要な結果の意味を考える場所と考えると整理しやすくなります。
まず「研究目的に直接答えている結果」を探す
では、何から考察すればよいのでしょうか。
私なら最初に、
「この研究目的に一番答えている結果はどれ?」
と考えます。
例えば研究目的が、
A病院の看護師における〇〇の実施状況を明らかにする
だったとします。
その場合、
年齢や経験年数などの対象者属性も必要ですが、研究の中心になるのは、
「〇〇がどの程度実施されていたのか」
という結果です。
まず、この中心となる結果について、
「なぜこのような結果になったのか」
「先行研究と比べてどうなのか」
「この結果にはどのような意味があるのか」
を考えていきます。
そのあとに、中心となる結果を理解するために必要な情報を加えていきます。
例えば、
経験年数によって違いがあった。
研修経験の有無によって違いがあった。
先行研究より実施率が低かった。
予想していた結果とは異なった。
こうした結果には、考察する意味があります。
反対に、研究目的との関係が薄い結果まで無理に膨らませる必要はありません。
「結果が出たから考察する」のではなく、「研究目的に答えるために必要だから考察する」
という順番です。
有意差があった結果だけ選べばよいわけではありません
結果を選ぶときに注意したいのが、
「有意差があったもの=重要な結果」
と考えてしまうことです。
統計解析をすると、
「ここはp<0.05だった」
という結果は目につきます。
もちろん、重要な結果になることもあります。
でも、研究目的にとって重要なのは、必ずしも有意差が出た結果だけではありません。
以前の記事でも書きましたが、「有意差なし」も研究結果の一つです。
例えば、
「経験年数によって〇〇に差があるのではないか」
と考えて調査したところ、差が認められなかった。
これも、
「今回の対象では経験年数による明確な違いは確認できなかった」
という結果です。
そこから、
なぜ差がみられなかったのか。
先行研究ではどうだったのか。
対象者数や対象集団の特徴はどうだったのか。
経験年数以外の要因が関係している可能性はないか。
と考えることができます。
反対に、統計的には有意差があっても、研究目的との関係が薄かったり、差そのものが非常に小さかったりすることもあります。
だから、
「p値が小さい順に考察する」わけではありません。
研究目的に照らして、その結果を取り上げる意味があるかを考えます。
「特徴的だった結果」や「予想と違った結果」にも注目する
研究を始める前には、
ある程度、
「こういう結果になるのではないか」
と考えていることがあります。
でも、実際に調査すると、
予想とは違う結果が出ることがあります。
例えば、
経験年数が長いほど〇〇を実践していると思っていた。
でも、実際には差がなかった。
あるいは、
十分に実施されていると思っていた項目の実施率が低かった。
こうした結果は、
研究者にとっては、
「思っていた結果と違った」
と感じるかもしれません。
でも、むしろ、
「なぜ予想と違ったのだろう?」
と考えることで、考察を深められることがあります。
先行研究との違い。
対象施設の特徴。
教育体制。
経験年数。
業務環境。
対象者の背景。
さまざまな可能性を考えます。
もちろん、データから言えないことまで断定してはいけません。
「〇〇が原因である」と言い切るのではなく、
「〇〇が影響した可能性が考えられる」
など、結果から言える範囲で考えていきます。
考察は、
予想どおりの結果を説明するだけではなく、予想と違った結果の意味を考える場所でもあります。
考察は「結果表の順番」で書かなくてもよい
結果では、
対象者属性。
質問項目。
比較。
関連。
というように、読者がデータを確認しやすい順番で示すことがあります。
でも、考察まで必ず同じ順番にする必要はありません。
例えば、
結果では、
表1 対象者属性
表2 〇〇の実施状況
表3 経験年数による比較
表4 研修経験による比較
と並んでいたとします。
考察では、
まず研究目的に最も関係する**「〇〇の実施状況」**について考える。
次に、その結果を説明するために、経験年数や研修経験との関係を考える。
最後に、そこから看護実践や教育への示唆を考える。
という流れでもよいわけです。
結果は、
「何が分かったかを示す」
考察は、
「その結果をどう解釈するかを示す」
部分です。
役割が違うので、構成も同じである必要はありません。
むしろ、考察では、
一番重要な結果を中心にストーリーを作る
と考えると書きやすくなります。
例えば結果が10個あったらどう考える?
例えば、ある研究で10個の結果が出たとします。
そのとき、
10個すべてについて、
「結果①は〇〇であった。この理由として……」
「結果②は△△であった。この理由として……」
と書いていくのではなく、まず結果を眺めてみます。
そして、
研究目的に直接答えている結果はどれか。
この研究で特に特徴的だった結果はどれか。
先行研究と比較する意味がある結果はどれか。
予想と異なっていて、考える意味がある結果はどれか。
という視点で整理します。
例えば、
10個の結果のうち、
結果③が研究の中心。
結果⑤は結果③を説明するうえで重要。
結果⑧は先行研究と異なっていて特徴的。
だとしたら、
まずこの3つを中心に考察を組み立てます。
残りの結果は、
必要に応じて補足的に使う。
こうすると、
「この研究では何が重要だったのか」
が見えやすくなります。
最後はもう一度「研究目的」に戻る
考察を書いていると、
先行研究を調べたり、
結果の理由を考えたりするうちに、
話がどんどん広がることがあります。
そんなときは、
一度、
研究目的を読み返します。
そして、
「今書いているこの考察は、研究目的に答えるために必要?」
と確認します。
必要なら残す。
面白い話ではあるけれど、今回の研究目的からかなり離れているなら、削ることも考える。
これは、以前書いた、
「研究目的を広げすぎない」
という話にもつながります。
結果がたくさん出ると、
「あれも考察したい」
「これも書けそう」
となります。
でも、
全部を書くことが、
必ずしも丁寧な考察とは限りません。
むしろ、
重要な結果を選んで、
その意味をしっかり考える。
その方が、
研究の中心が伝わりやすくなることがあります。
私なら考察を書く前に、
結果を見ながら、
①研究目的に直接関係する結果
②特に特徴的な結果
③先行研究と比較する意味がある結果
④予想と異なった結果
に印を付けます。
そのうえで、
どれを中心に考察するのかを決めます。
まとめ
研究結果がたくさん出ると、
「全部について考察を書かなければ」
と思うことがあります。
でも、
結果に書いたことと、考察で詳しく取り上げることは、必ずしも1対1ではありません。
大切なのは、
まず研究目的に戻ること。
そのうえで、
研究目的に直接答えている結果。
特徴的だった結果。
先行研究と比較する意味がある結果。
予想と異なった結果。
などを中心に考えていきます。
そして、
有意差があったという理由だけで選ばない。
結果表の順番に縛られない。
研究目的との関係が薄い結果を、無理に膨らませない。
考察を書くときは、
「この結果について何を書こう?」
から始めるのではなく、
「この研究で一番重要な結果は何だった?」
から考えてみる。
それだけでも、
考察の中心が少し見えやすくなると思います。
関連記事
看護研究の考察の深め方チェックリスト