会議やインタビュー、講義などの音声を文字にするとき、
「聞こえた内容を、そのまま全部文字にすれば文字起こしになる」
と思うことがあります。
もちろん、話した内容をできるだけそのまま残す必要がある場合もあります。
でも、実際に音声をそのまま文字にしてみると、
えー、では、まあ、今回の件なんですけど、えっと、前回ですね、話した内容について、まあ、もう一度確認していきたいと思います。
このような文章になることがあります。
音声で聞いていると、それほど気になりません。
ところが文字になると、
「えー」「まあ」「えっと」
などが意外と目立ちます。
さらに、言い直しや同じ言葉の繰り返しも加わると、内容そのものが分かりにくくなることがあります。
今回は、文字起こしをしたあとに行う**「整える作業」**について考えてみます。
文字起こしは「何に使うか」で変わります
例えば先ほどの文章。
えー、では、まあ、今回の件なんですけど、えっと、前回ですね、話した内容について、まあ、もう一度確認していきたいと思います。
少し整えると、
では、前回話した内容について、もう一度確認していきたいと思います。
かなり読みやすくなります。
言いたいこと自体は、大きく変わっていません。
では、最初からすべてこのように整えればよいのでしょうか。
実は、そうとも限りません。
例えば研究インタビューで、話し方や沈黙、言いよどみなども分析したい場合。
「えー」「あのー」なども含めて、発言をできるだけ忠実に残す必要があるかもしれません。
一方、会議の内容をあとから確認するための記録なら、すべての言いよどみを残す必要はないこともあります。
つまり、
「どこまで整えるか」は、文字起こしの用途によって変わります。
話し言葉をそのまま文字にすると読みにくいことがあります
普段の会話では、
「えー」
「あのー」
「そのー」
「まあ」
「なんというか」
といった言葉を自然に使っています。
さらに、
「これは来週……いや、再来週ですね。再来週までにお願いします」
のような言い直しもあります。
音声なら、
話している人の声や間があるため、
それほど違和感なく理解できます。
でも文字にすると、
話し言葉特有の表現がすべて見えるようになります。
そのため、読みやすさを優先する場合は、
不要な言葉を削ったり、
明らかな言い直しを整理したり、
適切な位置で句読点や改行を入れたりします。
ただし、ここで気をつけたいのが、
「読みやすくすること」と「内容を書き換えること」は違う
ということです。
例えば、
「私は、この方法も悪くないと思います」
という発言を、
「私は、この方法が良いと思います」
としてしまうと、
意味が少し変わります。
文章としてきれいにすることを優先しすぎると、話した人の意図まで変えてしまう可能性があります。
だからこそ、
どこまで整えるのかを最初に決めておく
ことが大切です。
文字起こし後は「言葉の確認」も必要です
音声を文字にできたら完成。
と思いがちですが、
もう一つ確認したいのが、
正しく文字になっているか
です。
特に、
人名。
施設名。
会社名。
商品名。
専門用語。
略語。
数字。
日付。
などは注意します。
例えば医療・看護関係の音声では、日常会話ではあまり使わない専門用語や略語が多く出てきます。
音だけでは判断しにくい言葉もあります。
AIによる自動文字起こしも便利になっていますが、音声が不鮮明だったり、複数人が同時に話したり、専門用語が多かったりすると、誤った文字になることがあります。
そのため、
自動で文字になったものを、そのまま完成品と考えない
ことも大切です。
元の音声を確認しながら、
誤変換がないか。
話者は合っているか。
数字は正しいか。
専門用語は正しいか。
と確認していきます。
「逐語録」「読みやすい文章」「議事録」は同じではありません
文字起こしを依頼するとき、
意外と曖昧になりやすいのが、
最終的にどんな形が欲しいのか
という部分です。
例えば、
できるだけ発言をそのまま残したい
研究インタビューなどでは、発言内容をできるだけ忠実に残したい場合があります。
この場合は、勝手に文章をきれいにしすぎないことが重要です。
内容は残しながら読みやすくしたい
不要な言いよどみや明らかな重複を整理し、句読点や改行を加えます。
発言内容は維持しながら、あとから読み返しやすい文章にします。
会議の内容だけ確認できればよい
この場合は、発言を一言一句残すより、
「何が話し合われたのか」
「何が決まったのか」
「誰が何をするのか」
などを整理した方が便利なことがあります。
これは、文字起こしというより議事録や要約に近くなります。
同じ1時間の音声でも、
何を作るかによって、
完成する文章は大きく変わります。
以前の記事でも、
「文字起こし」と「議事録」は同じではない
という話を書きました。
大切なのは、
音声を文字にすること自体ではなく、
「その文字をあとでどう使うのか」
だと思います。
「全部残す=丁寧」とは限りません
文字起こしをしていると、
「せっかく話しているのだから、全部残した方が丁寧なのでは?」
と思うことがあります。
でも、用途によっては、
情報を全部残すことで、
かえって必要な内容を探しにくくなることがあります。
例えば1時間の会議。
逐語的に文字起こしすると、
かなり長い文章になります。
あとから、
「結局、何が決まったんだっけ?」
と探すのは大変です。
そんな場合は、
全文の文字起こしとは別に、
決定事項
今後の対応
担当者
期限
などを整理しておくと、
実際に使いやすい記録になります。
反対に研究インタビューなら、
「読みやすいから」という理由だけで発言を削りすぎると、
分析に必要な情報まで失う可能性があります。
だから、
「全部残す」
「きれいに整える」
のどちらかが常に正しいわけではありません。
目的に合わせて残し方を変える。
これが文字起こしでは大切だと思います。
文字起こしを始める前に決めておきたいこと
私なら、文字起こしを始める前に、
「完成した文章を何に使うのか」
を確認します。
研究データとして使う?
会議記録として保存する?
参加者へ共有する?
講義内容を文章として残す?
インタビュー記事を作る?
自分で内容を確認するため?
ここが決まると、
どこまで発言を残すのかも決めやすくなります。
例えば、
「えー」「あのー」まで残すのか。
明らかな言い間違いを修正するのか。
話し言葉を書き言葉に直すのか。
話者を分けるのか。
タイムスタンプを付けるのか。
最後に要約を付けるのか。
同じ音声でも、
必要な作業はかなり違います。
文字起こしをするときは、
いきなり音声を文字にするのではなく、
「最終的にどんな文章が必要なのか」
を先に考えてみる。
それだけでも、
あとから、
「思っていた文字起こしと違った」
ということを減らせると思います。
まとめ
文字起こしというと、
音声をそのまま文字にする作業
というイメージがあります。
もちろん、
できるだけ忠実に残す必要がある場合もあります。
でも、
会議。
インタビュー。
講義。
研究。
記録。
それぞれ目的が違います。
だから、
必要な文字起こしの形も違います。
「えー」「あのー」を残すのか。
言い直しをどうするのか。
話し言葉をどこまで整えるのか。
専門用語を確認するのか。
要約まで作るのか。
大切なのは、
「全部そのまま残すか、全部きれいにするか」ではありません。
何に使うのかを考えて、
必要なところは残し、
必要なところは整える。
文字起こしは、
音声を文字に変えたところで終わりではなく、
そのあと“使える文章”にするところまで考える
と、より活用しやすくなると思います。
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