看護研究や院内研究を始めるとき、
「まずは先行研究を調べましょう」
と言われることがあります。
そこでキーワードを入れて検索してみる。
すると、
10本。
20本。
30本……。
思っていた以上にたくさんの論文が出てくることがあります。
「先行研究だから、これを全部読まないといけないのかな?」
と思って、1本目の論文を最初から最後まで読む。
次に2本目。
さらに3本目。
しばらくすると、
「論文は読んでいるけれど、研究が全然進まない……」
ということがあります。
もちろん、先行研究をきちんと読むことは大切です。
でも、検索で見つかった論文を、最初からすべて同じように読む必要があるとは限りません。
今回は、先行研究を探すときの「まず何を見るか」「何を探しながら読むか」について考えてみます。
検索で見つかった論文が、すべて必要とは限りません
例えば、
「新人看護師 ストレス」
と検索したとします。
検索結果には、
新人看護師の職場ストレス。
離職。
メンタルヘルス。
教育。
プリセプターとの関係。
職場適応。
コーピング。
など、いろいろな研究が出てくるかもしれません。
どれも「新人看護師」と「ストレス」に関係しています。
でも、自分が、
「夜勤を開始した新人看護師がどのようなことにストレスを感じているのか」
を研究したいのであれば、検索結果に出てきたすべての論文が同じくらい重要とは限りません。
テーマは似ていても、
対象が違う。
研究目的が違う。
調べている内容が違う。
研究方法が違う。
ということがあります。
だから、検索結果に論文が30本出てきたら、
「30本全部を最初から最後まで読む」
ではなく、
まず、
「今回の自分の研究に関係しそうなのはどれ?」
と見ていきます。
先行研究探しの最初の段階では、読むことと同じくらい、選ぶことも大切だと思います。
まずはタイトルと抄録から見てみる
論文を見つけたら、いきなり本文を最初から最後まで読むのではなく、まずタイトルを確認します。
タイトルを見るだけでも、
対象。
研究テーマ。
調べている内容。
などがある程度分かります。
自分の研究とかなり近そうなら、次に抄録を読みます。
抄録には通常、
何を目的とした研究なのか。
誰を対象にしたのか。
どんな方法を使ったのか。
どのような結果だったのか。
など、研究の概要がまとめられています。
ここを見るだけでも、
「これは詳しく読んだ方がよさそう」
「テーマは似ているけれど、今回知りたいこととは少し違う」
という判断がしやすくなります。
例えば、
自分は病棟看護師を対象にした研究を考えているのに、その論文は看護学生が対象だった。
自分はインタビューで具体的な経験を知りたいのに、その論文ではストレス尺度を使って量的に評価していた。
こうした違いも見えてきます。
もちろん、対象や方法が違うからといって、その論文が不要とは限りません。
考察で参考になることもありますし、研究方法を考えるヒントになることもあります。
ただ、
「自分の研究とどの部分が近く、どの部分が違うのか」
を考えながら読むと、論文の位置づけが分かりやすくなります。
先行研究では「何が分かっていないか」も探す
先行研究というと、
「自分の研究テーマについて書かれている論文を集めるもの」
と思うことがあります。
でも、論文を読む目的は、それだけではありません。
大切なのは、
これまでに何が分かっていて、何がまだ十分に分かっていないのか
を整理することです。
例えば、論文を読んでいくと、
「新人看護師のストレスについては、すでに多くの研究がある」
と分かった。
そこで終わるのではなく、
もう少し見てみます。
新人看護師全体を対象にした研究は多い。
でも、夜勤開始時期に限定した研究は少ない。
ストレスの程度を測った研究はある。
でも、本人が具体的にどのような場面をストレスと感じているのかを詳しく調べた研究は少ない。
このように整理できれば、
自分が研究しようとしていることの位置
が少し見えてきます。
逆に、
「自分がやろうと思っていた研究とほとんど同じ研究がすでにある」
と分かることもあります。
それも大切な発見です。
対象を変える?
視点を変える?
別の方法で調べる?
そもそもテーマを見直す?
と考えることができます。
先行研究は、
「自分の研究が正しいことを証明するために探すもの」ではなく、「自分の研究をどこに置くのかを考える材料」
でもあると思います。
論文から「研究方法」のヒントをもらう
先行研究を読むときは、結果や考察だけではなく、方法も参考になります。
例えば、
自分も看護師の〇〇について調べたい。
でも、
アンケートがよいのか。
インタビューがよいのか。
どんな質問項目が必要なのか。
どんな尺度が使われているのか。
まだ分からない。
そんなとき、似たテーマの先行研究を見ると、
「この研究では質問紙を使っている」
「この研究では半構造化面接をしている」
「この尺度を使って評価している」
「対象者をこの条件で選んでいる」
といったことが分かります。
もちろん、
先行研究と同じ方法をそのまま使えばよい
ということではありません。
自分の研究目的が違えば、必要な方法も変わります。
でも、
過去の研究者が、
「この問いに対して、どのような方法で調べたのか」
を見ることは、自分の研究方法を考える大きなヒントになります。
また、複数の論文を読むと、
同じテーマでも研究方法が違うことがあります。
量的研究で全体の傾向を調べている研究。
質的研究で個人の経験を詳しく調べている研究。
それぞれを比べることで、
「自分が知りたいことなら、どちらの方法が合いそう?」
と考えられます。
先行研究は、結果を引用するためだけではなく、研究計画を考えるための材料にもなります。
読んだ論文は「自分の研究との関係」で整理する
論文を何本か読むと、
今度は、
「どの論文に何が書いてあったか分からない」
ということが起こります。
最初の5本くらいなら覚えていても、
10本。
20本。
と増えると、記憶だけで整理するのは難しくなります。
そんなときは、論文を読んだ順番ではなく、
自分の研究との関係
で整理しておくと使いやすくなります。
例えば、
論文名。
著者・発表年。
対象。
研究目的。
研究方法。
主な結果。
自分の研究との関係。
などを簡単に残しておく。
特に最後の、
「自分の研究との関係」
が大切です。
「対象が近い」
「同じ尺度を使っている」
「研究方法の参考になる」
「自分の予想とは違う結果」
「背景を書くときに使えそう」
など、一言でも残しておくと、あとから見返したときに思い出しやすくなります。
そして、論文を読みながら、
すでに分かっていること
と、
まだ分かっていないこと
を少しずつ分けていく。
そうすると、
最初は漠然としていた研究テーマが、だんだん具体的になることがあります。
先日の記事では、
「研究テーマを“対象・何を・どこまで”で絞る」
という話を書きました。
先行研究を読むことは、その「何を」「どこまで」を考えるためにも役立ちます。
先行研究を読むこと自体が目的にならないようにする
研究を始めると、
「もっと文献を読んでから」
と思うことがあります。
1本読む。
すると参考文献に気になる論文がある。
その論文を読む。
さらに、そこから別の論文を見つける。
気づくと、
かなりの数を読んでいる。
でも、
研究目的はまだ決まっていない。
そんなこともあります。
もちろん、研究テーマによって必要な文献数は違いますし、十分に文献を調べることは重要です。
ただ、
「何本読めば終わり」
と単純に決めるものでもありません。
大切なのは、
「自分は何を知るために、この論文を読んでいるのか」
です。
例えば、
このテーマについて何が分かっているのか知りたい。
どんな研究方法が使われているのか知りたい。
自分が考えている研究と似た研究がないか確認したい。
結果を比較したい。
こうした目的があれば、読むポイントも変わります。
反対に、
「先行研究だから、とりあえず全部読む」
となると、時間がかかる割に、研究へつながりにくくなることがあります。
先行研究を読むことは研究のゴールではありません。
先行研究から得た情報を、自分の研究テーマ・目的・方法につなげていくこと
が大切だと思います。
まとめ
先行研究を検索すると、
たくさんの論文が出てくることがあります。
そのとき、
「全部読まなければ」
と思う必要はありません。
まずタイトルを見る。
次に抄録を見る。
対象。
目的。
方法。
主な結果。
を確認する。
そして、
「この論文は、自分の研究のどこに関係する?」
と考えます。
さらに、
何がすでに分かっている?
何がまだ分かっていない?
どんな方法が使われている?
自分の研究はその中のどこに位置する?
と整理していく。
そうすると、
先行研究が、
単に「引用するための論文」ではなく、
自分の研究を具体的にしていくための材料
になってきます。
論文をたくさん読むことも大切ですが、
それ以上に、
「何を知るために読むのか」
を意識する。
検索結果を上から全部読む前に、
まず、
「この論文、自分の研究にどう関係する?」
と考えてみる。
それだけでも、先行研究の探し方や読み方が少し変わると思います。
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