看護研究でアンケートを作っていると、
「これも聞いておいた方がいいかな?」
と思うことがあります。
年齢。
経験年数。
所属部署。
資格。
研修参加経験。
普段の業務。
困っていること。
感じていること。
せっかくアンケートを取るなら、
「あとで必要になるかもしれないから、これも聞いておこう」
と項目を追加したくなります。
そして気付くと、
最初は10項目くらいだったアンケートが、
20項目。
30項目。
40項目。
と増えている。
でも、
アンケート項目は、
多ければ多いほど良いのでしょうか。
今回は、
「聞きたいこと」と「研究目的に必要なこと」
について考えてみます。
「聞いてみたいこと」はたくさん出てきます
研究テーマについて考えていると、
いろいろな疑問が出てきます。
例えば、
新人看護師の〇〇について調べたい。
そう考えたとします。
すると、
経験年数によって違う?
所属部署によって違う?
研修を受けた人は違う?
先輩から指導された経験は?
勤務年数は?
夜勤回数は?
自己学習している?
など、
次々と聞きたいことが出てきます。
これは、
決して悪いことではありません。
研究について考えているからこそ、
疑問が広がっているとも言えます。
ただ、
ここで一度確認したいのが、
「その項目は、今回の研究目的に必要?」
ということです。
「興味がある」と「必要」は少し違います
例えば、
研究目的が、
「新人看護師が〇〇についてどのような困難を感じているかを明らかにする」
だったとします。
この研究で、
年齢。
性別。
経験月数。
所属部署。
これらが必要になることはあると思います。
でも、
さらに、
通勤時間。
一人暮らしかどうか。
学生時代の成績。
休日の過ごし方。
などまで聞き始めたらどうでしょうか。
もちろん、
研究によっては必要になることもあります。
ただ、
「何となく関係がありそうだから」
だけで増やしてしまうと、
研究目的との関係が分かりにくくなってきます。
アンケートを作る前に研究目的へ戻る
アンケート項目を考えるとき、
私は、
まず研究目的へ戻ることが大切だと思います。
今回、
何を明らかにしたいのか。
そのためには、
何を知る必要があるのか。
その「知る必要があること」を、
具体的な質問にしていきます。
つまり、
研究目的
↓
明らかにするために必要な情報
↓
アンケート項目
という順番です。
アンケート項目から研究を考えるのではなく、
研究目的からアンケート項目を逆算する
イメージです。
「とりあえず聞いておく」は増えやすい
アンケートを作っていると、
便利な言葉があります。
「一応、聞いておこう」
です。
あとで分析に使うかもしれない。
何か関係が見つかるかもしれない。
せっかく調査するのだから、
聞いておいた方がよいかもしれない。
こうして項目が増えていきます。
でも、
「使うかもしれない」
を基準にすると、
ほとんど何でも質問できてしまいます。
そこで、
「この項目が必要な理由を説明できるか」
を考えてみます。
その質問を入れる理由を説明できますか?
例えば、
「経験年数」を聞く。
なぜ?
経験年数によって〇〇に違いがある可能性を考えているから。
では、
その違いを見る予定なのか。
先行研究で関連が示されているのか。
研究目的とどのようにつながるのか。
ここまで説明できれば、
項目を入れる理由が見えてきます。
反対に、
「何となく必要そうだから」
しか理由がない場合は、
一度立ち止まってもよいと思います。
基本属性も「全部聞く」必要はありません
アンケートでは、
最初に基本属性を聞くことが多いと思います。
年齢。
性別。
経験年数。
職位。
所属部署。
資格。
勤務形態。
などです。
これらは、
よく見る項目です。
そのため、
「アンケートだから、とりあえず全部入れておく」
となりやすい部分でもあります。
でも、
基本属性についても、
今回の研究で本当に必要なのか、
考えることが大切です。
例えば、
年齢を分析に使わない。
対象者の特徴を説明するためにも必要ない。
研究目的ともほとんど関係しない。
それなら、
なぜ年齢を聞くのか。
一度考えてみてもよいと思います。
質問が増えると回答者の負担も増えます
研究者側から見ると、
質問を1つ追加するだけです。
でも、
回答する側から見ると、
1問ずつ負担が増えていきます。
10問なら、
比較的短時間で答えられる。
30問。
50問。
さらに自由記述もある。
となると、
回答する側も大変です。
途中から、
よく読まずに回答してしまう。
似たような質問が続いて、
何を聞かれているのか分からなくなる。
最後の自由記述まで来たころには疲れてしまう。
そんなことも考えられます。
項目を増やすことがデータの質を高めるとは限らない
質問が多ければ、
たくさんのデータが集まります。
でも、
データ量が多い=良いデータ
とは限りません。
例えば、
50項目聞いたけれど、
実際の研究目的に使ったのは10項目だけ。
残り40項目は、
ほとんど分析しなかった。
それなら、
最初から必要な項目を整理した方が、
回答者にとっても分かりやすかったかもしれません。
大切なのは、
たくさん集めることではなく、研究目的に必要な情報を適切に集めること
だと思います。
項目が増えると分析も増えます
質問を追加すると、
回答を集めて終わりではありません。
そのデータを、
どう扱うか考える必要があります。
集計する。
表にする。
比較する。
必要なら統計解析をする。
結果を書く。
考察する。
つまり、
質問を1つ追加すると、
その後の作業も増える可能性があります。
特に、
「せっかく聞いたのだから分析しよう」
となると、
研究全体がどんどん広がっていきます。
結果が増えると考察も広がります
例えば、
経験年数。
所属部署。
研修経験。
資格。
勤務形態。
それぞれについて比較した。
すると、
結果がたくさん出てきます。
今度は、
その結果をどう考察するのか、
という問題が出てきます。
研究目的から離れた分析が増えると、
考察も広がり、
「結局、この研究で何を明らかにしたかったの?」
となることがあります。
アンケート項目を絞ることは、
結果や考察を整理することにもつながります。
「取れるデータ」ではなく「必要なデータ」
アンケート研究では、
比較的いろいろな情報を集めることができます。
だからこそ、
「何が取れるか」
ではなく、
「何が必要か」
という視点が重要になります。
聞けば取れる。
でも、
取れるから聞く。
ではなく、
研究目的に必要だから聞く。
この順番です。
「あとで使うかも」は倫理的な視点でも考える
アンケートで回答してもらう情報は、
研究のために提供してもらうものです。
そのため、
必要性の低い情報まで何となく集める
という考え方には注意が必要です。
特に、
個人の背景に関する情報や、
回答者が答えにくい内容については、
「本当にこの研究に必要なのか」
をより慎重に考える必要があります。
研究者にとっては、
単なる1項目でも、
回答する側にとっては、
答えたくない質問かもしれません。
「質問できること」と「質問してよいこと」も違います
技術的には質問できる。
でも、
研究として必要なのか。
回答者の負担に見合っているのか。
答えにくい内容ではないか。
個人が特定される可能性を高めないか。
こうした視点も必要です。
特に、
対象者数が少ない研究では、
属性を細かく聞きすぎることで、
複数の情報を組み合わせたときに、
誰の回答なのか推測しやすくなる可能性もあります。
「あると便利だから」
だけで項目を増やさないことも大切です。
似た質問が重複していないか
アンケートを作っていると、
少し表現が違うだけで、
実は同じようなことを聞いている場合があります。
例えば、
「〇〇に自信がありますか」
と、
「〇〇を自信を持って実施できますか」
が並んでいる。
もちろん、
意図的に似た質問を使う尺度などもあります。
でも、
自作のアンケートで、
明確な理由なく似た質問が増えているなら、
一度整理してみてもよいと思います。
自由記述も増やしすぎない
自由記述は、
選択肢だけでは得られない情報を知ることができます。
そのため、
つい、
「理由を書いてください」
「具体例を書いてください」
「その他、自由に記載してください」
と増やしたくなります。
でも、
自由記述は、
回答者にとって負担が大きい質問でもあります。
さらに、
研究者側も、
集まった文章を整理し、
分析する必要があります。
本当に自由記述でなければ得られない情報なのか
を考えて使うことが大切です。
「聞きたいことリスト」を作るのは悪くありません
ここまで、
項目を増やしすぎない話をしてきました。
でも、
最初から、
聞きたいことを厳しく制限する必要はないと思います。
研究を考え始めた段階では、
むしろ、
聞いてみたいことを一度たくさん出す
のも一つの方法です。
例えば、
20個。
30個。
思いつくまま書き出す。
そのあとで、
一つずつ、
研究目的と照らし合わせます。
「残す・迷う・外す」に分けてみる
項目が増えてきたら、
私は、
3つに分けて考える方法が分かりやすいと思います。
残す
研究目的に直接必要。
分析に使用する予定がある。
対象者の特徴を示すために必要。
迷う
関係はありそう。
でも、
どのように分析するか決まっていない。
必要性をまだ説明しにくい。
外す
興味はある。
でも、
今回の研究目的とは離れている。
集めても使う予定がない。
このように整理すると、
「何となく入れていた質問」
が見えてくることがあります。
「この回答を得たあと、どうする?」と考える
質問項目を確認するとき、
かなり使いやすいのが、
「この回答を得たあと、どうする?」
という問いです。
例えば、
「研修参加経験がありますか?」
と質問する。
回答は、
「あり・なし」
で得られる。
では、
そのあとどうする?
研修参加の有無で比較する?
対象者の特徴として示す?
考察に使う?
何もしない?
もし、
「特に使う予定はない」
のであれば、
その質問が本当に必要なのか、
考え直すことができます。
アンケート項目から分析方法を確認する
研究計画の段階で、
質問項目と分析方法を並べてみるのもおすすめです。
例えば、
| 質問項目 | 何のために聞く? | どう分析する? |
| ---- | ---------- | -------- |
| 経験年数 | 対象者の背景・群比較 | 記述統計・群比較 |
| 〇〇得点 | 主要な評価項目 | 平均値など |
| 自由記述 | 困難の具体的内容 | 内容を整理・分類 |
このようにすると、
「質問はあるけれど、その後の使い道がない」
という項目に気付きやすくなります。
先に分析まで考えておく
アンケートを作るとき、
質問だけを考えてしまうことがあります。
でも、
その質問から、
どんなデータが得られるのか。
そのデータを、
どう分析するのか。
その結果で、
研究目的に答えられるのか。
ここまで考えておくと、
不要な質問を減らしやすくなります。
つまり、
質問 → 回答 → 分析 → 研究目的
までつなげて考えるということです。
「面白そうな結果が出るかも」で広げすぎない
研究をしていると、
いろいろなことを知りたくなります。
経験年数でも比較したい。
部署でも比較したい。
年代でも比較したい。
資格の有無でも比較したい。
全部調べたら、
何か面白い結果が出るかもしれない。
その気持ちはよく分かります。
でも、
研究には、
今回明らかにする範囲
があります。
興味があることを全部1つの研究に入れなくても、
次の研究につなげることもできます。
1つの研究ですべて答えなくてもよい
研究テーマについて考えていると、
あれも知りたい。
これも知りたい。
となります。
でも、
すべてを1回の研究で明らかにする必要はありません。
今回の研究では、
まずAを明らかにする。
その結果を受けて、
次の研究でBを調べる。
さらに、
Cについて検討する。
このように、
研究をつなげていくこともできます。
むしろ、
研究目的を絞ることで、
1本の研究として何を明らかにしたのかが、
分かりやすくなることがあります。
私なら項目を追加する前に4つ確認します
アンケートに新しい質問を追加したくなったら、
次の4つを確認します。
① 研究目的とどうつながる?
今回明らかにしたいことに必要でしょうか。
② この回答を何に使う?
対象者の特徴?
比較?
分析?
考察?
用途を説明できるでしょうか。
③ 回答者の負担に見合っている?
答えにくい質問ではないでしょうか。
質問数が増えすぎていないでしょうか。
④ なくても研究目的に答えられない?
なくても問題なく目的を達成できるなら、
本当に必要か考えてみます。
項目を減らすことは「情報を捨てること」ではありません
質問を削ると、
「せっかく調査するのにもったいない」
と感じることがあります。
でも、
研究目的に必要な情報へ絞ることは、
単に情報を捨てることではありません。
研究の焦点を、
はっきりさせることでもあります。
何を聞くか。
何を聞かないか。
その判断自体が、
研究計画の大切な部分です。
まとめ
アンケートを作っていると、
聞きたいことは、
どんどん増えていきます。
そして、
「あとで使うかもしれない」
「せっかくだから聞いておこう」
と項目を増やしたくなります。
でも、
アンケート項目が多い=良い研究
とは限りません。
大切なのは、
「聞きたいこと」と「研究目的に必要なこと」を分けること。
研究目的は何?
↓
その目的に答えるために何を知る必要がある?
↓
そのためにどんな質問が必要?
↓
得られた回答をどう分析する?
この順番で考えてみます。
そして、
質問を追加するときには、
「この回答を得たあと、どうする?」
と一度考えてみる。
答えが見つからないなら、
その質問は、
今回の研究には必要ないかもしれません。
たくさん聞くことより、
必要なことを、必要なだけ聞く。
アンケートを作るときには、
そんな視点も持っておくと、
研究全体が整理しやすくなると思います。
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