看護研究で、
「考察がなかなか書けない」
という悩みはよくあります。
でも、ある程度書けるようになってくると、今度は反対の悩みが出てくることがあります。
「考察がどんどん長くなる」
という問題です。
結果について説明する。
先行研究と比較する。
理由を考える。
臨床への示唆を書く。
そうしているうちに、
「これも関係ありそう」
「この文献も使えそう」
「せっかく調べたから、これも書いておこう」
と文章が増えていく。
気付けば、かなり長い考察になっている。
でも、
長い考察=深い考察
なのでしょうか。
今回は、書いた考察をどう整理すればよいのかについて考えてみます。
考察が長くなること自体が悪いわけではありません
最初に、
考察は短ければよい
という話ではありません。
研究内容によっては、十分な説明が必要です。
複数の結果について検討する必要があれば、それなりの文章量にもなります。
問題なのは、
文章量は増えているのに、何を伝えたいのか分かりにくくなっている状態
です。
たくさん書いた。
文献もたくさん引用した。
でも読み終わったとき、
「結局、この結果をどう考えたの?」
が見えない。
これでは、せっかく書いた文章が十分に生きていません。
「書くこと」と「残すこと」は別です
考察を書いている途中では、
私はある程度たくさん書いてもよいと思っています。
最初から、
「これはいらないかな」
と考えすぎると、逆に書けなくなることがあります。
思いついたことを書く。
関連する先行研究を探す。
いろいろな可能性を考える。
ここまではよいと思います。
その後に必要なのが、
「何を残すか」
という作業です。
つまり、
考察を書く作業
と
考察を整理する作業
は、少し分けて考えてもよいと思います。
まず「この段落は何について考察している?」と確認する
考察が長くなったとき、
一つ一つの段落について、
「この段落は何について書いている?」
と考えてみます。
一言で答えられるでしょうか。
例えば、
「経験年数によってAに差がみられた理由」
「先行研究と今回の結果が異なった理由」
「BとCに関連がみられた背景」
などです。
一言で説明できれば、その段落の役割は比較的明確です。
逆に、
一つの段落の中で3つも4つも話が変わっている
場合は、整理できる可能性があります。
結果をもう一度説明しているだけになっていませんか?
考察が長くなる原因の一つが、
結果の説明が多いこと
です。
例えば結果で、
「A群はB群より〇〇得点が有意に高かった」
と示している。
考察でも、
「本研究ではA群がB群より〇〇得点が高く、有意差が認められた」
と書く。
結果を確認するための一文程度なら問題ありません。
でも、その後も数値や結果を細かく繰り返していると、
考察の文章量は増えます。
以前の記事でも書きましたが、
考察は結果を書き直す場所ではありません。
結果を示したら、
次に必要なのは、
「なぜ、この結果になったのか」
です。
先行研究をたくさん並べれば深くなる?
考察では、先行研究との比較も大切です。
そのため文献を探していると、
関連する研究がいくつも見つかります。
Aらは〇〇と報告している。
Bらも△△と報告している。
Cらは□□と述べている。
Dらも……。
と増えていく。
文献が増えると、
なんとなく学術的な文章になったように見えます。
でも、
先行研究の数と考察の深さは同じではありません。
大切なのは、
先行研究を何本紹介したかではなく、
今回の結果とどうつなげたか
だと思います。
「先行研究では〇〇だった」で終わらせない
例えば、
今回の研究ではAという結果だった。
先行研究でもAだった。
そこで、
「先行研究と同様の結果であった」
と書く。
これだけでは、少し物足りないかもしれません。
なぜ同じ結果になったのか。
対象者に共通点があったのか。
異なる対象でも同じ結果になったことに意味があるのか。
今回の研究によって何が追加されたのか。
そこまで考えると、
先行研究が、
文章を長くするための引用ではなく、結果を解釈するための材料
になります。
反対の先行研究も考察の材料になります
今回の結果と違う先行研究が見つかると、
「使えないかな」
と思うことがあります。
でも、
むしろ違うからこそ考えられることがあります。
今回の対象者は何が違ったのか。
調査した時期は違わないか。
施設背景はどうか。
測定方法は同じか。
経験年数はどうか。
「なぜ違ったのか」
を考えることで、今回の研究結果の特徴が見えてくることもあります。
一つの結果に、何ページも必要でしょうか?
考察を書いていると、
一つの結果についてどこまでも書けることがあります。
背景を説明して、
先行研究を紹介して、
臨床経験と結びつけて、
教育についても触れて、
今後の課題も書く。
でも、
その結果は研究目的の中でどれくらい重要なのでしょうか。
主要な結果なら、十分に考察する必要があります。
一方、
補足的な結果に何ページも使って、
一番重要な結果の考察が短い。
これでは研究全体のバランスが崩れます。
考察にも「優先順位」があります
昨日までの記事で、
結果にも優先順位があるという話を書きました。
考察も同じです。
例えば、
研究目的に直接答える主要な結果
↓
主要な結果を理解するために必要な結果
↓
補足的な結果
という順番で考えてみます。
当然、
研究目的に直接関係する結果の考察を中心にします。
全部の結果について、
同じ文字数を書く必要はありません。
「結果→理由→先行研究→意味」で考えてみる
考察がまとまらないときは、一つのまとまりを、
結果
↓
なぜその結果になったのか
↓
先行研究ではどうだったのか
↓
今回の研究から何が言えるのか
という順番で考えてみる方法があります。
例えば、
結果
経験年数が長い群でA得点が高かった。
理由
経験を重ねることで〇〇を経験する機会が増えることが関係した可能性がある。
先行研究
先行研究でも、経験年数と〇〇との関連が報告されている。
今回の研究で言えること
今回の対象においても、経験の蓄積がAに関係する可能性が示された。
このようにすると、
「何のために先行研究を引用しているのか」
も分かりやすくなります。
もちろん毎回この順番でなくても大丈夫です
研究によっては、
先行研究を先に示した方が分かりやすいこともあります。
複数の結果をまとめて考察した方がよいこともあります。
ですから、
必ずこの型にしなければならない
という意味ではありません。
大切なのは、
一つ一つの文章に、
「この文章は何のためにあるのか」
という役割があることです。
同じことを言い換えていませんか?
文章が長くなってきたとき、
意外と多いのが、
同じことを少し違う表現で繰り返している
ケースです。
例えば、
「経験を積むことで技術が向上したと考えられる」
と書いたあと、
「経験年数の増加によって技術が高まった可能性がある」
と書く。
表現は違いますが、
ほぼ同じ意味です。
書いている本人は、
別のことを書いているように感じることがあります。
一度時間を置いて読み直すと、
こうした重複に気付きやすくなります。
「この段落を削ったら困る?」と考えてみる
考察を書き終えたら、
少し思い切って、
「この段落を全部削ったらどうなる?」
と考えてみます。
削ったことで、
研究結果の意味が分からなくなる。
研究目的への答えが弱くなる。
重要な先行研究との関係が分からなくなる。
なら、その段落は必要です。
一方、
削っても結論がほとんど変わらない。
前後の文章も普通につながる。
という場合は、
補足的な内容かもしれません。
「せっかく調べたから」は残す理由にならない
文献を探すのにも時間がかかります。
苦労して見つけた論文なら、
使いたくなります。
私もその気持ちは分かります。
でも、
「時間をかけて調べたから論文に入れる」
と、
「研究を説明するために必要だから入れる」
は別です。
使わなかった文献も、
研究者にとっては無駄ではありません。
背景を理解するために役立っています。
すべてを本文に登場させなくても大丈夫です。
臨床への示唆を書きすぎていませんか?
看護研究では、
最後に、
「この結果を臨床でどう生かせるか」
を考えることがあります。
大切な部分です。
ただ、
ここで話が大きくなりすぎることがあります。
今回調べたのは認識なのに、
教育プログラムの導入まで提案する。
関連を調べた研究なのに、
具体的な介入方法まで断定する。
以前の結論の記事にもつながりますが、
研究で分かった範囲を超えない
ことは大切です。
長い文章を短くすることは「内容を薄くする」ことではありません
文章を削ると、
「せっかく深く考えたのに、内容が薄くなる」
と感じることがあります。
でも、
重複している部分。
研究目的から離れている部分。
必要以上に長い結果の説明。
先行研究の紹介だけになっている部分。
これらを整理することは、
考察を浅くすることではありません。
むしろ、
本当に伝えたい考察を目立たせる作業
だと思います。
考察の深さは「文字数」では測れません
1万字の考察だから深い。
3000字だから浅い。
そう単純には決まりません。
短くても、
結果を適切に解釈し、
先行研究と比較し、
その研究から何が言えるのかが明確なら、
十分に考えられた考察になります。
逆に、
どれだけ長くても、
結果と先行研究を並べているだけなら、
深い考察とは言いにくいかもしれません。
私なら最後に「だから何?」を確認します
考察を読み直すとき、
一つの段落ごとに、
「だから何?」
と考えてみます。
先行研究と同じだった。
だから何が言える?
先行研究とは違った。
なぜ違った?
A群の方が高かった。
それにはどんな意味がある?
この問いを繰り返すと、
単なる結果の説明から、
少しずつ考察に近づいていきます。
そして最後は研究目的に戻る
考察が長くなって迷子になったら、
結局ここに戻ります。
研究目的です。
今回の研究では、
何を明らかにしたかったのか。
そのために、
どの結果が重要だったのか。
その結果を、
どう解釈したのか。
そして、
何が分かったのか。
この流れに必要な文章を残していく。
そうすると、
考察全体も整理しやすくなります。
まとめ
考察を書けるようになると、
今度は、
「書きすぎる」
という問題が出てくることがあります。
でも、
考察は長ければ深いわけではありません。
大切なのは、
結果をどこまで意味づけられているか
です。
考察が長くなったら、
結果を繰り返しすぎていないか
先行研究を並べるだけになっていないか
同じことを言い換えていないか
補足的な結果を考察しすぎていないか
研究で分かった範囲を超えていないか
その段落が研究目的に必要なのか
を確認してみます。
そして、
「この段落を削っても、研究目的への答えは変わらない?」
と考えてみる。
削れる文章があることは、
考察が浅いということではありません。
むしろ、
不要な部分を整理することで、
本当に考えたことが見えやすくなる
ことがあります。
考察の深さは、
文字数ではなく、
「この結果にはどんな意味があるのか」を、どこまで説明できているか。
書き終えた考察が少し長いと感じたら、
「もっと書く」ではなく、
一度、
「何を残す?」
という視点で読み直してみてもよいと思います。
関連記事
考察の書き方チェックリスト