前回の記事では、日本の住宅の多くが「明るすぎて、脳がリラックスできていない」というお話をしました。
「暗いほうが落ち着くのは分かった。じゃあ具体的にどうすればいいの?」 「オシャレな間接照明って、なんか壁に埋め込むやつとか、何十万円もするデザイナーズ家具とかなんでしょ?」
そんな声が聞こえてきそうですが、安心してください。 何十万円もする照明を買う必要も、大がかりな電気工事をする必要もないです。ニトリやIKEAで買える数千円の照明を組み合わせるだけで、うちのリビングを「高級ホテルのようなリラックス空間」に変えることができます。
もちろん、「のような」ですよ。(え?わかってるって?)
でも、大事なのは「高級ホテル」じゃなく「リラックス空間」のほうです。
こうこうと照らされたシーリングライトのリビングが、光を変えるだけでがらっと雰囲気が変わる。やってみない手はない。
今回は、プロが空間をデザインする際に必ず使うテクニック、「光の3層構造(レイヤー)」の作り方のお話です。
「1つの高い照明」より「3つの安い照明」が勝る理由
私が新築のコーディネートを担当すると、けっこう多くの方が「せっかくの新しい家だから、天井のシーリングライトをちょっとオシャレなものにする」となりがちです。
そして私はここに書いてるようなことを切々と語りがち。
それは置いといて、おそらくこれは全国的に起きている事象のはずです。
もちろんシーリングライト自体は悪くない、家族がみんな集まる明るいリビングのイメージとして、むしろアリだとは思う。ただ、「陰影」「立体」「くつろぎ」「リラックス空間」とは真逆の存在になることは確か。
大事なのは用途。空間に何を求めるかということ。
オシャレで落ち着く空間を作る鉄則は、「光を分散させること」です。 1つの強い光で部屋中を照らすのではなく、複数の小さな光を「重ねる」んです。
専門界隈ではこれを「光の3層構造」と呼んでいます。
1.ベースの光(全般照明): 部屋全体をほんのり照らす光。
2.作業の光(タスクライト): 手元で本を読んだり、作業をしたりするための光。
3.演出の光(アクセントライト): 壁や観葉植物を照らし、空間に奥行きを生む光。
この3つのレイヤーを重ねることで、部屋に「明るい場所」と「暗い場所(影)」のグラデーションが生まれ、見違えるほど立体的で上質な空間になります。
【実践】ニトリ・IKEAで作る、ホテルライクな空間術
では、具体的にどう配置すればいいのか。ニトリやIKEAの手頃なアイテムを使って、今日からできる3つのステップをご紹介します。
ステップ1:部屋の「奥の角」にフロアライトを置く(演出の光)
まずは、部屋に入って一番遠くに見える「奥の角(コーナー)」に、背の高いフロアスタンドライトを置いてみてください。IKEAのテキスタイル(生地調)シェードのランプや、ニトリのシンプルなアッパーライト(天井を照らすタイプ)で十分です。
IKEA LAUTERS ラウテルス 9,999円(税込)
なぜ角なのか?
人間の目は、明るいところに視線が誘導される性質があります。部屋の奥の角が明るいと、視線が自然とそこまで伸びるため、脳が「この部屋は奥まで空間がある(広い)」と錯覚するということ。雑多なテーブルや面積の大きいソファにいきがちな目線を、奥へと誘導する。これだけで、賃貸のアパートでも空間が1.5倍広く感じられます。
ステップ2:ソファの横や棚にテーブルランプを置く(作業・演出の光)
次に、ソファの横のサイドテーブルや、テレビボードの端などに、小さめのテーブルランプを置きます。 これは、手元を優しく照らすだけでなく、壁に光を反射させて「ふんわりとした明るさ」を作る役割があります。電球は絶対に「電球色(オレンジっぽく温かい光)」を選んでください。
IKEA SOLKLINT ソルクリント 2,999円(税込)
オレンジの光、壁にガラスの模様が浮かび上がります。
ステップ1と2のランプを点けたら、勇気を出して、天井のメイン照明(シーリングライト)を消してみてください。調光機能がついているなら、一番暗い状態まで絞ります。
いかがでしょうか? 最初は「いや、暗いでしょ」となるかもしれません。でも5分もすれば目が慣れます。そして、明るく見えることだけが「善」ではないことに気付くはず。部屋の隅々に落ちた影と、あたたかい光の"たまり"が、心地良さをつくっていることにも。
光の重心を下げると、心も落ち着く
さて。シーリングライトが中心の日本の家が落ち着かない理由というのはもう1つあって、それは「光の重心が高い(天井が一番明るい)」ことです。
キャンプの焚き火や、暖炉の火など、人が本能的に安らぎを感じる光は、常に「自分より低い位置」にあります。
フロアライトやテーブルランプを使って「光の重心を下げる」ことは、人間がリラックスするための最も理にかなった方法と言って良いと思います。
部屋の奥の方に背の高いスタンドライト。手前の壁際やテーブルまわりの低い位置にフロアライト。これで空間がいっきに落ち着いて、立体感が生まれます。
まずは試しに、IKEAやニトリで数千円のランプを1つ(できれば背の高いのと低いのを2つ)、買ってきてみてください。「照明を変えるだけで、こんなに家の印象って変わるんだ」という感動を、味わってみてほしい。
「感動」なんておおげさな…と思うでしょ?もちろん泣くほどじゃないけど、「へぇ・・・」と声が出るくらいには、変わりますよ。