朝出勤すると、隣に座っている年下上司の白いTシャツの右肩甲骨あたりに、ちいさなこどもの指?のような茶色の跡があるのを発見した。
本人に直接、その跡について聞いてもいないし、聞く気もない。聞いたら野暮な気がするのだ。
おそらく、朝食で食べたチョコフレークなんかが手についたまま、慌ただしく朝の身支度をするパパに抱っこされたと仮説を立ててみる。
共働きの彼は、以前「保育園の送りは自分がしています。自転車の前と後ろに乗っけて!」
と優しそうな顔で話してくれた。
30代前半の彼は、正社員の幹部候補。
業務上でわからないことがあると、真っ先に彼の顔が浮かぶほど、自分含めて派遣社員の心のよりどころになっている。
歳でいうと4歳離れているが背が高く、爽やかで、こどもは3人いる。
最近、都内に一戸建てを購入したらしく、まさに頼れる大人の男そのものだ。
縁もゆかりもない土地に住むきっかけを聞いたことがある。
「待機児童ですね。比較的都内でも待機児童が緩和されているので選びました」
共働きの彼は待機児童が少ないということだけで慣れ親しんだ土地を離れ、そして城を構えた。
彼も奥さんも、誰ひとりとしてその土地に身内もいなければ、友人もいない。
そこに自我はない。
自分といえば、今まで、結婚する機会がなかったわけではない。
ただ、結婚が怖かったのだ。
未知への恐怖というところだろう。
それが今になって、その当時を多少思ったりして、時に反省し、肯定し結婚を意識するようになっている。
なんて勝手な男だ。自分でもよく思う。
がしかし、それもまたいいのではないか。
分別がついた後でも。
今は、まだ見ぬ未来の奥さんよ。
いつか、笑顔で会おう。
今日も元気でいてほしい。