前回のコラムでは、
感情はコントロールすべき厄介なものではなく、
「自分がどんな前提で世界を見ているか」を映し出す結果である
という視点をお伝えしました。
感情が変わらないのは、
意志が弱いからでも、努力が足りないからでもありません。
感情は、表面意識より深い、無意識下に持ち続けている、
「自分は世界をどう捉え、見ているのかという前提条件」
を正確に写し出しているセンサーだからです。
では、その前提をどうやって知ればいいのでしょうか。
ここで重要な役割を果たすのが、
「感情のスケール」という考え方です。
■ エイブラハム感情のスケールは「潜在意識のナビゲーション」
私たちは普段、
感情を「起きてしまうもの」「振り回されるもの」
として扱いがちです。
不安になり、落ち込み、焦り、怒り、
そしてそれを何とかしようと、
思考や行動で上書きしようとします。
しかし、感情のスケールという考え方に触れると、
感情に対する前提そのものが、覆されます。
感情とは、
偶然に湧き上がるノイズではありません。
それは 「今、自分がどの地点に立って世界を見ているか」 を
正確に示している座標とも言えるものなのです。
感情とは無秩序に存在しているのではなく、
ある一定の流れと段階性をもって並んでいる
という理解です。
この概念は、エイブラハムの教えによって広く知られるようになりましたが、
本質はとてもシンプルです。
感情には、
重く沈んだ状態から、
軽やかで拡張した状態へと向かうという
エネルギーの流れが存在している。
そして私たちは、
常にその「どこか」に位置しています。
重要なのは、
このスケールが「人の優劣」を示すものではない、
という点です。
感情のスケールは、
「あなたはダメだ」「まだ低い」
と評価するためのものではありません。
それは、
今の自分が、
どのような前提を持ち、
どのような自己定義から世界を見ているのかを、
極めて正確に教えてくれるナビゲーションシステムなのです。
たとえば、
無力感や絶望を感じているとき、
それは「間違った感情」として捉えることではありません。
その感情は、
「今のあなたの世界認識では、前に進むルートが見えなくなっている」
という、正確なフィードバックです。
怒りや不満も同じです。
それは単に悪い感情として捉えるのではなく、
「今のあなたの世界認識と理想の世界観との違いが明確に存在している」
という、気づきのサインなのです。
感情のスケールを知るということは、
外の世界で起こっていることを
単純な感覚や反応として捉えるのではなく、
自分が世界をどう捉え、見ているのかということを
理解し始めることなのです。
ここで、感情は初めて
「抑えるもの」でも
「無理に変えるもの」でもなくなります。
感情は、
あなたの現在地を教えてくれる座標ということになります。
そして、
どこにいるかが分かれば、
どちらの方向に進めばいいかも、
自然と見えてきます。
感情のスケールとは、
人生をより良い方向へ進めるために、
私たち一人ひとりに最初から備わっている
正確無比で最高度のナビゲーションシステムなのです。
■ エイブラハムの感情のスケール(22段階)とは?
感情は、その場その場で無作為に湧いてくるものではありません。
一見バラバラに見えて、実は 明確な段階と流れをもって存在しています。
この理解を体系化したのが、
エイブラハム・ヒックスによって広く知られるようになった
「感情のスケール」 という概念です。
まずは、全体像を見てみましょう。
1. 喜び / 大いなる気づき / 自信 / 自由 / 愛 / 感謝
2. 情熱
3. 熱意 / やる気 / 幸福感
4. ポジティブな期待 / 信念
5. 楽観
6. 希望
7. 満足(安心感・心地よい・いい気分)
8. 退屈
9. 悲観
10. ストレス / いらだち / 我慢
11. 戸惑い
12. 落胆
13. 疑念
14. 心配
15. 非難
16. 失望
17. 怒り
18. 復讐心
19. 敵意 / 憎しみ / 激怒
20. 嫉妬
21. 自信喪失 / 罪悪感 / 自己卑下
22. 恐れ / 苦悩 / 絶望 / 無気力
■ 感情のスケールが示している本当の意味とは?
感情のスケールとは、
あなたの人格や価値を測るものではなく、
あなたの世界の見え方を示すもの です。
たとえば――
無力感や絶望の位置にいるとき、
世界は「自分ではどうにもならないもの」として見えています。
怒りの位置にいるとき、
世界は「私が抵抗すべき対象」として見えています。
希望や信頼の位置にいるとき、
世界は「まだ可能性が残されている場」として見えています。
つまり、
感情=あなたが定義している世界観
なのです。
ここが、非常に重要なポイントです。
感情は、
出来事そのものへの反応ではありません。
出来事を、どの前提で解釈しているか
その結果として生まれています。
ここまでで、
感情が無秩序なものではなく、
私たちがどの前提で世界を見ているかを示す
ナビゲーションであることが見えてきました。
感情のスケールを知ることで、
「いま自分はどの地点に立っているのか」
「どんな世界観から物事を見ているのか」
を、以前よりもはっきりと認識できるようになったはずです。
それでも、多くの人は次の地点で立ち止まります。
理解はできた。
けれど、なぜかまた同じ感情に戻ってしまう。
気づいたはずなのに、気づく前と変わらない。
この現象は、決して珍しいものではありません。
むしろ、感情のスケールを理解し始めた人ほど、必ず直面する壁です。
なぜなら、
感情のスケールが示しているのは
「現在地」と「向かえる方向」までであって、
なぜ私たちは、その現在地に止まってしまうのか
という理由そのものまでは、まだ触れていないからです。
ここには、
意志や理解だけでは越えられない、
もう一段深い部分が存在しています。
それは、
✔︎ 自分を定義している前提は、いつ、どのように作られたのか?
✔︎ なぜ無意識は、それを正しいものとして持ち続けるのか?
✔︎ なぜ「頭では分かっているのに変われない」ということが起きるのか?
という問いに関わる部分です。
この問いについては、
今後もいろいろな表現でお伝えしていこうと思います。
次回は、
感情がぐちゃぐちゃになっているあなたへ③
として、本テーマをまとめた最終回をお届けします。