「自分、口下手なんで💦」と言ったトップ営業

「自分、口下手なんで💦」と言ったトップ営業

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ビジネス・マーケティング


## 第一章:どうしても理解できない係長がいた


証券会社時代の話です。

別の課に、とんでもなく成績の良い係長がいました。

年齢は私より7歳上。

派手な人ではありません。

むしろ落ち着いていて、どちらかと言えば控えめなタイプでした。

私はずっと不思議でした。

「この人、どうやって数字を作っているんだろう」

営業成績は抜群。

でも特別話が上手いわけでもない。

だから余計に理解できなかったのです。

そんなある日、部署の配置換えがあり、その係長が私の課に来ることになりました。

これはチャンスだと思いました。

顧客を共有したいと言って、半ば無理やり同行させてもらったのです。

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## 第二章:商談が始まらない


お客様のところへ到着しました。

私は証券営業ですから、当然こう思っていました。

株の話をするんだろう。

投資信託の話をするんだろう。

市場の見通しを説明するんだろう。

ところが。

お客様は延々と愚痴を話し始めました。

仕事の話。

家族の話。

会社の話。

将来の不安。

係長はただ聞いています。

「そうですか」

「なるほど」

「それは大変でしたね」

それだけ。

私は横で待っていました。

そろそろ商談かな。

そろそろ商品の話かな。

でも始まりません。

30分。

1時間。

結局最後まで商品説明はありませんでした。

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## 第三章:「ありがとね」


ひとしきり話した後、

お客様は大きく息を吐きました。

「ふぅ〜」

そして、

「ありがとね」

と言ったのです。

私はまだ意味が分かっていませんでした。

するとその直後、

お客様は追加の契約書にサインを始めました。

100万円です。

私は目を疑いました。

え?

何が起きた?

商品説明してないじゃないか。

提案もしてないじゃないか。

相場の話もしてないじゃないか。

私は完全に置いてきぼりでした。

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## 第四章:帰りのバスで聞いた


帰り道。

私はどうしても気になっていました。

というより、

頭の中はずっと「?」でした。

商談中からずっとです。

商品説明はしていない。

提案もしていない。

相場の話もしていない。

なのに100万円の契約が決まった。

何が起きたのか全く分かりませんでした。

帰りのバスの中で、

私は我慢できずに聞きました。

「係長、今のどういうことですか?」

すると係長は、

本当に何でもないことのように言いました。

「定期が満期になったから来てって言われただけですよ」

私はさらに混乱しました。

意味が分かりません。

いや、

ますます分からなくなりました。

だって、

お客様はずっと愚痴を話していただけです。

仕事のこと。

家族のこと。

会社のこと。

商品説明なんて一度もありませんでした。

そこで続けて聞きました。

「いつもあんな感じなんですか?」

すると係長は、

少し恐縮したように苦笑いしながら言ったのです。

「いやぁ、自分、口下手なんで💦」

私は完全に思考停止しました。

口下手。

営業成績トップ。

商品説明なし。

100万円の契約。

どう考えても繋がりません。

バスに揺られながら、

私は窓の外をぼんやり見ていました。

でも頭の中では、

ずっと同じことが回っていました。

「営業って何なんだろう」

「自分が今まで教わってきたことは何だったんだろう」

「売れる人と売れない人の違いって何なんだろう」

答えは出ませんでした。

その日だけではありません。

次の日も。

その次の日も。

しばらく考えても分かりませんでした。

ただ一つだけ確かなことがありました。

私はあの日、

営業という仕事を根本から分かっていなかったのかもしれない。

そんな感覚だけは残ったのです。

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## 第五章:20年以上経っても忘れられない理由


あの日の出来事から20年以上経ちました。

工務店で営業もしました。

ホームページも作りました。

メルマガも書きました。

ブログも書いてきました。

たくさんのお客様と話してきました。

それでも、

時々あの日の係長を思い出します。

なぜあのお客様は100万円を預けたのか。

正直、

今でも完全には分かりません。

ただ一つ覚えているのは、

係長がずっと話を聞いていたことです。

仕事のこと。

家族のこと。

将来のこと。

お金のこと。

係長は否定もしません。

説教もしません。

ただ聞いていました。

そして最後に、

お客様はこう言ったのです。

「ふぅ〜」

「ありがとね」

あの100万円は、

いったい何に対して支払われたお金だったのでしょうか。

今でも時々考えます。

そして考えるたびに、

営業とは何なのだろうと思うのです。

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## 最後に


帰りのバスの中で、

私はずっと「?」でした。

営業とは何か。

信頼とは何か。

なぜ人は人から買うのか。

あの日は答えが出ませんでした。

20年以上経った今でも、

完全な答えは出ていません。

ただ、

あの日の係長の苦笑いだけは覚えています。

「いやぁ、自分、口下手なんで💦」

あの100万円は、

いったい何に対して支払われたお金だったのだろう。

私は今でも時々考えています。

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