# 「高いですね」と言われなくなった理由
## 第一章:「高いですね」にイラッとしていた頃
昔、工務店で営業をしていた頃の話です。
お客様から
「高いですね」
と言われることがありました。
正直に言うと、その言葉を聞くたびに少しイラッとしていました。
「何を根拠に高いと言っているんだろう」
と思っていたのです。
打ち合わせを重ねて、
ご要望を聞いて、
少しでも良い家になるように考える。
当然、手間も時間もかかります。
だから価格が上がるのは当たり前だと思っていました。
それなのに、
見積書の最後に書かれた金額だけを見て、
「高いですね」
と言われる。
価値が伝わっていないな。
他社と価格だけで比較されているな。
そんなふうに感じていました。
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## 第二章:「お宅は2番目に高かったです」
特に忘れられない出来事があります。
何度も打ち合わせを重ねて、
ようやく見積もりが完成した時のことです。
お客様の要望を聞き、
予算を聞き、
理想の暮らしについて話し合い、
時間をかけて見積書を作りました。
だから私は、
少なくとも中身は見てもらえると思っていました。
「お待たせしました」
「お時間いただいてすみません」
そう言って見積書をお渡ししました。
するとお客様は、
表紙を見て、
2ページ目をパラパラっとめくり、
こう言ったのです。
「高いですね」
さらに続けて、
「お宅は2番目くらいに高いですよね」
と。
正直、
その瞬間はイラッとしました。
いや、
かなりイラッとしました。
「は?」
と思いました。
2番目って何だろう。
何社回っているんだろう。
3社なのか。
5社なのか。
それとももっとなのか。
そんなことを考えました。
そして、
少し呆れた気持ちにもなりました。
家族構成を説明して、
希望を説明して、
予算を説明して、
どんな暮らしをしたいのかを説明して。
そのやり取りを何社も繰り返しているわけです。
正直、
私にはできそうにありません。
だからその時は、
「よくそんなことやるな」
と思いました。
そして心の中では、
「ふざけんなよ」
とも思っていました。
こっちは何度も打ち合わせをして、
提案を考えて、
見積書を作っている。
それなのに、
中身より先に順位付けなのか。
そんな気持ちだったのです。
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## 第三章:お客様が欲しかったのは定価ではなかった
ある時、お客様からこんな質問を受けました。
「どうしてハウスメーカーみたいに定価を出さないんですか?」
と。
当時の私は、
「定価なんて出せるわけないじゃないか」
と思いました。
家づくりは一軒一軒違います。
土地も違う。
家族構成も違う。
間取りも違う。
ご要望も違う。
だから最初から決まった価格なんてありません。
でも今なら分かります。
お客様が欲しかったのは定価ではありませんでした。
比較するための物差しです。
選ぶための基準です。
価格そのものではなく、
「何を基準に選べばいいのか」
を知りたかったのだと思います。
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## 第四章:比較していたのではなく、迷っていた
当時はまだ、その意味が分かりませんでした。
でも後になって気づくことになります。
私はお客様によく聞いていました。
「何年住む予定ですか?」
と。
10年なのか。
20年なのか。
35年以上なのか。
それによって選ぶべきものは変わります。
つまり価格の話をしているようで、
本当は優先順位の話をしているのです。
そしてある時気づきました。
お客様は比較していたのではありませんでした。
迷っていたのです。
何を大切にすればいいのか分からない。
だから複数社を回る。
だから見積もりを並べる。
だから価格を見る。
当時の私は、
そのことが分かっていませんでした。
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## 第五章:見えないものは比較できない
実際には、私たちより安い価格で家を建てている会社もありました。
でも現場を見ている立場からすると、
価格の違いは完成した家だけでは分からないこともあります。
お客様から見えるのは完成した家です。
でも価格には、
完成後には見えない部分も含まれています。
だから価格差の理由も見えにくい。
今思うと、
お客様は価格だけを見ていたのではありません。
価格以外を見る方法を知らなかったのです。
見えないものは比較できません。
だから価格が選ぶ基準になる。
それは自然なことだったのかもしれません。
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## 第六章:「高いですね」と言われなくなった理由
不思議なことがあります。
ブログやメルマガ、
YouTubeなどを見てから来てくださるお客様は、
あまり「高いですね」と言わないのです。
もちろん価格の話はします。
でも比較するポイントが違います。
あるお客様との打ち合わせで、
こんな言葉を聞いたことがあります。
「全部にお金をかけるのは無理ですからね」
「だから私たちなりに優先順位を決めてきました」
「大事なところは3つくらいに絞りました」
そう言われた時、
私は少し驚きました。
なぜなら、
私がブログやメルマガで何年も伝えてきたことを、
お客様自身の言葉で話してくれたからです。
そのお客様は、
すでに自分なりの物差しを持っていました。
だから話が早かったのです。
価格の前に、
考え方が整理されていたのです。
その時、
私は思いました。
「あ、伝わっていたんだな」
と。
だから私は、
「高いですね」と言われなくなったのではなく、
価値観を共有できるお客様と出会えるようになったのかもしれません。
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## 第七章:お客様が本当に欲しかったもの
昔、あるお客様に言われた言葉があります。
その方は何社もの住宅会社と打ち合わせをされていました。
そしてこう言ったのです。
「要望を伝えれば、その通りの図面を作ってくれる会社はたくさんありました」
一見すると良いことのように聞こえます。
でも、そのお客様は少し違いました。
「でも、それが逆に不安だったんです」
そう言うのです。
理由を聞くと、
こんなことを話してくれました。
「自分の要望の範囲でしか家が生まれない気がしたんです」
「なんだか自分が監督になっているみたいで」
私はその言葉を聞いて驚きました。
そして同時に、
なるほどと思ったのです。
そのお客様が探していたのは、
要望を叶えてくれる会社ではありませんでした。
どう考えればいいのか。
何を優先すればいいのか。
どんな視点で選べばいいのか。
その道筋を一緒に考えてくれる人を探していたのです。
後日、
「どう考えていけばいいのかが納得できました」
と言われました。
私にとって忘れられない言葉です。
人は答えを求めているようで、
本当に欲しいのは答えではないのかもしれません。
納得して選ぶための考え方。
それこそがお客様が求めているものなのかもしれません。
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## 最後に
昔の私は、
「高いですね」
と言われるたびに腹を立てていました。
価値が伝わっていない。
そう思っていました。
でも今なら少し分かります。
お客様もまた迷っていたのです。
何を基準に選べばいいのか。
何を優先すればいいのか。
どう考えればいいのか。
その答えを探していたのです。
だから伝えるということは、
答えを教えることではなく、
選ぶための物差しを渡すことなのかもしれません。
昔は家づくりの話だと思っていました。
でも今は少し違います。
人は商品を選んでいるようで、
本当は「どう考えればいいのか」を探しているのかもしれません。