【ディテールを紐解く⑬】「東証一部」の看板の裏側で——少数派の“成長特急”から見た、大多数の「時間待ちキャリア」

【ディテールを紐解く⑬】「東証一部」の看板の裏側で——少数派の“成長特急”から見た、大多数の「時間待ちキャリア」

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東証一部企業内で享受した「特例」としての成長

私の社会人キャリアは、東証一部上場企業という看板を背負いながらも、その内部の社内ベンチャーという異質な環境から始まりました。

看板の信頼性と、ベンチャー特有の機動力が共存する場所でした。新規事業を立ち上げるというミッションは、私に大きな裁量を与え、企画から実行、そして失敗からの修正というサイクルを、驚くほどの速さで回させてくれました。ここでは、役職や部署の壁は薄く、「課題解決の現場」がそのまま「成長の現場」でした。私は、この高速PDCAの中で、短期間で濃密な経験を積み上げることができました。

当時の私は、これが「東証一部企業」で働くことの普遍的な姿だと、無意識のうちに思い込んでいたのです。「やる気と能力があれば、誰でもこのスピードで成長できる」と。

人材系サービスで知った、多数派の「時間待ち」の構造

しかし、その後のキャリアで、私は人事部門や、多岐にわたる企業のビジネスパーソンを支援する人材系サービスに携わる機会を得ました。そこで対峙したのは、私の「社内ベンチャー経験」が、いかに例外的な「特権」であったかという現実です。

面談や現場の課題解決を通じて、多くの20代、30代の優秀な人材が、同じ壁にぶつかっているのを知りました。

彼らは、東証一部企業のような安定した組織にいながらも、自身のキャリアの成長が、自身の能力とは別の要因によって停滞していることに、強い焦燥感を抱いていました。

その要因の多くは、組織の巨大な階層構造が生み出す「待ち時間」です。

成長機会の停滞:新しいチャレンジやアイデアが、いくつもの承認フローを経て、実行に移されるまでに数年単位の時間を要してしまう。その「企画書の待ち時間」こそが、成長のエネルギーを奪う最大の原因でした。

昇進のボトルネック:次のマネージャー、次の役員ポストが、優秀な先輩方で「満席」の状態。自分の実力や意欲とは関係なく、「上司が異動するまでの時間」や「ポストが空くタイミング」を待つことが、昇進の必須条件となっていました。

私が享受した「課題を見つけたら、すぐに手を動かせる現場」は、大多数のビジネスパーソンにとっては、手が届きにくい「夢の環境」だったのです。

「成長の特権」を解体し、「普遍的な現場」を求めて

私自身の経験が「特権」であったと気付いた時、私は自身のキャリアを再定義する必要性を感じました。

この「成長機会の格差」は、組織の論理であり、個人の努力だけでは乗り越えられない壁です。私は、自分が培った「高速成長のノウハウ」を、特定の企業や部署の内部にとどめるのではなく、より普遍的な形で実現できる場所へ移ることを決断しました。

それが、グロース期のスタートアップでの事業や組織の立ち上げという道でした。

スタートアップの現場は、大企業の論理の外側にあります。そこには、昇進のための「待ちの椅子」はありません。あるのは、「解決すべき山積みの課題」という、成長のための純粋な機会だけです。自ら手を挙げ、現場を創り出し、自身の成長曲線に合わせて仕事を進められる環境です。

私のスタートアップへの選択は、「特権的な少数派」の立場を降り、「誰もが主体的に成長できる現場」を、自らの手で創り出すという決意表明でもありました。もし、今、東証一部の看板の下で、自身の成長意欲を持て余し、「時間待ち」のキャリアに焦燥感を覚えている方がいるなら、「待つ」ことから「創る」ことへ、キャリアの場所を移してみるという選択は、その閉塞感を打ち破る強力な一歩となるかもしれません。
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