[内側で何かが組み替わるとき」

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妊娠がわかる前、あの不快感はただの不調だった.

身体が重い。
眠いのに眠りが浅い。
胃の奥に、理由のわからないざらつき。
自分の身体なのに、微妙に噛み合っていない感じ。
どこかが、ずれている。

でも、何がずれているのかはわからない。

生理が来ない。
もしかして、と思う。
検査で「やっぱりそうだ」とわかった瞬間、不快感の意味が変わる。

さっきまで「邪魔」だった下腹部の重さが、
「中で何かが始まっている合図」になる。

同じだるさなのに、その受け取り方がまるで違う。

体調が悪い、ではなく、
身体が組み替わっている途中、という感覚。

腹の奥に、わずかな密度が生まれる。
まだ形もわからないのに、重心だけが少し下がる。

立っているとき、無意識に下腹部をかばっている。
座るとき、脚の開き方が変わる。
人混みでは腹を守るように身体を置く。

考える前に、身体がそう動く。

時期によって食べたいものが変わる。
昨日まで平気だった匂いが刺さる。

空腹でも満腹でもないのに、
食べられたり、食べられなかったり、
止まらなくなったり。

内側が、むずむずする。

身体の中で、しだいに増えていく自分とは違う重さ。

やがて、動く。

最初は、泡がはじけるような小さな感触。
腸の動きとは違う、規則性のない揺れ。

「あ、今のは違う」

そう、はっきりとわかる。

一度その動きを感じてしまうと、
無意識に常に探してしまう自分。

内側から、指で押されるような感覚。
肋骨の内側を、硬いものがゆっくりなぞる。

私の身体の中に、私ではない意思がある。

じっとしていても、動きたいみたいに。
私が動けば、向こうも揺れる。

二つのリズムが同時に存在する。

常に神経は下腹部に集まる。
ほんの少しの張り、
ほんの少しの違和感。

ふと、立ち止まる。

そっと、手を当てる。

軽くなれば、また動く。

そうやって、日常の中で何度も微調整を繰り返す。

守りたい、という気持ちは、
頭で考えるより先に、行動に出ているようだ。

やがて、時が満ち、外に出る準備が始まる。

腹の奥が、内側から押し付けられるような感覚。
波が来るたび、ぎゅーっと固まる。

逃げ場のない、いのちの圧。

骨盤がバラバラになりそうな力で、じわじわと押し広げられる。
裂けるというより、
「無理やり拡張される」感覚。

あらがうことのできない力によって

私という個ではなく、
いのちを産み落とすための

「ただの通路」に
身体が組み替えられていく。

いのちの塊は、内側から出口を探している。

身体と呼吸を合わせる。
意識的に力を抜く。
内側から圧に合わせていきむ。

押す力と、緩める力。

相反する動きを交互に繰り返し、
自分の持てるいのちのすべてを、その一瞬に傾ける。

波の頂点では、時間の感覚が消える。
ただ、本能に従うだけの身体。

その瞬間はやってくる。

骨盤の奥を、硬いものが回転しながら前進し。
自分の内側から外側へ、裏返るような感触。

…どろり。

それまでの圧が嘘のように消え失せる。

腹の奥が、一気に空になる。

身体の奥に、風が通るような解放。

さっきまで砕けそうだった骨の感覚は、
なぜか思い出せない。

残るのは、爽快感と、
「やり切った」という静かな確信。


中学生の娘が下腹部をさすりながら言った。

「空気の動きだけでも痛み強くなるよね」

あの敏感さ。

身体が変わるとき、
人は外の刺激にも過敏になる。

内側で何かが組み替わるとき、
身体は静かに集中している。

娘もまた、いつか「通路」になるための準備が始まっている。

身体は、いつの時も静かに組み替えられ、
次の段階へ移る途中。

あの重さも、圧も、
意味のない不快感ではなかった。

何気なく感じる違和感、
身体からのメッセージなのかもしれません。
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