一人称視点と三人称視点の違いとは?視点によって変わる物語の見せ方を解説

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小説
元国語科教員で、現役作家の寿じゅげむと申します。
前回に引き続き今回も、
国語科教育を通じて私が感じている、
「魅力ある文章を書くためのポイント」についての考えをまとめていきます。
創作に悩んでいる方や、行き詰まっている方の一助になれば幸いです!
今回取り上げるのは、
【「一人称視点」と「三人称視点」】について意識すべきポイントです。

「一人称と三人称って何が違うの?」
「書きたいストーリーはあるけれど、どうやって書いていったら読みやすい文章になるのかわからない」
そんな悩みを抱えている方も多いのではないでしょうか。

小説を書いたり読んだりしたことがある方の多くはご存知かもしれませんが、小説を書く場合には「一人称視点」と「三人称視点」のいずれかで物語を語っていく作品が大半です。

今回は、この2つの視点によってどのような表現の違いが生まれるのか、
それぞれのメリットとデメリットを紹介しながら、詳しく解説していきます。

まず、「一人称視点」とはどういったものか確認をしていきましょう。

「一人称視点」

一人称視点とは、作中における登場人物のうちの一人が語り手となり、その人物からの視点で世界を描く手法です。

わかりやすく例を挙げると、ゲームの操作プレイヤーの見ている世界が画面に映っているようなイメージです。
「私」「僕」「俺」等の主語を用いる場合もありますし、場合によっては主語を省略する場合もあります。

この視点によるメリットとデメリットをそれぞれ考えてみましょう。

◎メリット
・読者が語り手に感情移入しやすい
・語り手の心情の変化や、胸の内で考えていることを表現しやすい
・視点人物から見た作中の世界や、他の登場人物との関係性を描きやすい
・初心者でも書きやすい

▲デメリット
・語り手の知らない情報を描きづらい
・視野が狭くなりやすい

三人称視点

三人称視点とは、物語の外側にある第三者の視点から、作中の世界を描く手法です。

わかりやすく例を挙げると、どこか遠いところに定点カメラのように設置された場所から映し出された映像が映し出され、シーンによってまた別の定点カメラに映像が切り替わるようなイメージです。
「山田は」「彼は」「彼女は」というように、人物の名称や代名詞で描く手法です。

こちらの視点によるメリットとデメリットについても、それぞれ考えてみましょう。

◎メリット
・複数のキャラクターを書き分けやすい
・あらゆる人物の行動や心情を描くことができる
・作中の世界を広い視野で表現することができる

▲デメリット
・読者が感情移入しづらい
・描写や発言の対象がどの人物なのか、わかりやすく書き分ける必要がある

実例で比較してみよう

次にあるのは、同じシーンを3つの手法で書き分けたものです。
……ん?「一人称」と「三人称」なら手法は2つじゃないの?
と思った方は鋭い! その説明はまた後ほどしますね。
とりあえず、3つの文章がどのような印象の違いがあるのか、読みながら考えてみてください。

【A】
教室のドアを開けた瞬間、私は足を止めた。
私の席に、見知らぬ男子生徒が座っていたのだ。
……誰だろう。転校生だろうか?
いや、それにしては妙に落ち着いている。
その生徒は窓の外を眺めながら、退屈そうに頬杖をついていた。
私はなぜか声をかけることができず、チャイムの音が鳴ってからも、しばらくその場に立ち尽くしていた。


【B】
教室のドアを開けた美咲は、足を止めた。
自分の席に、見知らぬ男子生徒が座っていることに気付いたのだ。
その生徒は窓の外を眺めながら頬杖をついている。
美咲は、彼が転校生なのだろうかと思った。
声をかけるべきか迷っているうちに、チャイムが鳴り始めた。
男子生徒はまるでチャイムの音など聞こえていないかのようで、いつまでも窓の外を眺め続けていた。

【C】
教室のドアを開けた美咲は、足を止めた。
自分の席に、見知らぬ男子生徒が座っていたからだ。
美咲は、彼が転校生だろうかと考えていた。
一方、その男子生徒――佐藤悠真は緊張していた。
自分が教室を間違えていたことには、薄々気付いていたのだ。
ところがどう立ち上がればいいのか、悠真はわからない。
チャイムが鳴る。悠真は窓の外を見ているふりをしながら、誰かが声をかけてくれるのを待っていた。

……さあ、どうでしょう。
【A】は「美咲」の一人称視点による描写ですね。
カメラが1台しかなくて、語り手の目に映るもののみを、視点人物のフィルターを通じて語る手法です。
この場合、美咲が考えたことや感じたことは明確に描くことができます。
ところが男子生徒の存在は謎のままで、彼が何を考えているのかもわかりません。
ある意味、視点人物がわからないことを「謎」としてミステリアスに描けるという魅力がありますね。

【B】は、三人称視点による描写です。
カメラが定点で設置してあり、今回は美咲の近くに置かれているような印象です。
三人称視点の中でも、特定の人物の近くにカメラが置かれており、その人物にフォーカスして語る手法です。
このような手法は「三人称限定視点」と呼ばれます。
三人称でありながらも、実質的にはある人物の見聞きした範囲で物語が進んでいくため、一人称に近い没入感を演出することができます。

では【C】は何かというと、こちらも同じ三人称視点による表現なんですね。
ただし、【B】と異なるのは、こちらは美咲だけでなく、男子生徒(悠真)の心の中にも入り込んで、その心情を描写している点です。
いわゆる「神の視点」ですね。
作者がドローンのようなカメラを飛ばしていて、ときには登場人物の心の中にまでぐいっと入り込んでしまう。そんな手法です。
どの人物の心情や感情も書き表しやすい反面、全てをわかりやすく書きすぎてしまうと、読者が「もっと知りたい」と思うような謎がなくなってしまうというリスクもあります。

このように、実は三人称視点にも、複数の書き方があるんですね。

一人称による罠

また、次の例を見てみましょう。
今度は2つの文章を例題として挙げてみます。
それぞれ、どのような違いが見られるでしょうか?

【A】
健太は僕を無視した。
今朝あいつは、すぐそばから挨拶したのに返事もなかったんだ。
あいつはきっと最近、僕のことが嫌いになったんだと思う。


【B】
健太はイヤホンをつけたまま教室へ入った。
近くで誰かが「おはよう」と言ったが、健太にその声は届かなかった。

……さて、どうでしょう。
【A】の文章では、語り手である「僕」が健太に無視されたと落ち込んでいるシーンを描いています。

ところが実際に物語の中で生じているできごとを客観的に説明しているのは【B】ですね。
こちらは三人称視点による描写で、健太が声をかけられたことに、そもそも気付いていなかった様子が書かれています。

【A】はあくまで視点人物が見た世界として描いたシーンなので、実際には【B】のように健太が悪気などなく、無視をしていなかったのだという真実が隠されていることもあります。

このように、一人称視点には「罠」とも言える、筆者の「たくらみ」を忍ばせることができるのですね。
語り手は必ずしも真実を語っているとは限りません。
嘘をついている場合もあれば、本人がそう信じ込んでいるだけの場合もあるのです。


一人称と三人称の違いとは、「誰の視点で物語を見ているか」という違いとも言えます。

一人称は、登場人物の目を通して世界を見る方法。
三人称は、作者がカメラを操作しながら世界を見せる方法。

どちらが優れているというわけではなく、描きたい物語によってそれぞれ向き不向きがあります。
まずは自分の好きな小説が、その視点で書かれているのかを意識しながら作品を読んでみると、新たな発見があるかもしれませんね。


小説を書き始めたばかりの頃は、自分では一人称のつもりで書いていても、知らないうちに三人称の描写が混ざってしまうことがあります。
また、自分では自然に書けていると思っていても、読者から見ると視点がぶれて見えることもあります。

さて、ここまで読んでみて、

「自分の作品が一人称に向いているのか、三人称に向いているのかわからない」
「視点がぶれていないか不安」
「読者から見て自然に読める文章になっているのか知りたい」

と思った方もいるかもしれません。

私は現在、ココナラで小説や創作作品の感想・文章分析サービスを提供しています。
元国語科教員としての視点と、現役で創作を続ける立場の両方から、
作品の魅力や改善点を丁寧にお伝えしています。

「どこを直せばもっと伝わる作品になるのか知りたい」
「読者目線の率直な感想がほしい」
という方は、ぜひお気軽に相談ください。


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