オリジナル曲とオリジナル小説のコラボ作品です。
ジャンル
現代ファンタジー・学園・妖怪退治・社会派エンターテインメント
曲紹介
この小説からオリジナル曲
イメージソング「桜のキズナ☆ミッション」が作られました。
第1・第2章の挿入歌としてのオリジナルソング「金王桜縁起祝詞歌」
花宮家で代々受け継がれた神歌として作成しました。
神社や渋谷を拠点にした舞踊で使える曲になっています。
第3章:つながりの痛みと希望 第1節「大人たちの諦め」
「はあ…また残業か…」
渋谷区役所の三階、少子化対策課のオフィスで、篠宮理佐は山積みの書類を見つめてため息をついた。
時刻は午後九時。窓の外には、きらびやかなネオンが輝いている。でも、理佐にはそれを楽しむ余裕などなかった。
「篠宮さん、例の企画書、明日までに仕上げられる?」
上司の声が飛んでくる。
「はい…何とか…」
「頼むよ。区長への報告、明後日なんだから」
「わかってます」
理佐はパソコンに向かった。
少子化対策プロジェクト。結婚支援イベント、婚活パーティー、子育て支援…様々な施策を打ち出してきた。でも、効果は見えない。
「何やってんだろ、私…」
理佐は小さく呟いた。
二十八歳。独身。恋人なし。
少子化対策を担当しながら、自分自身は恋愛から逃げている。
「篠宮さん、コーヒーどうぞ」
隣の席の同僚、田中が缶コーヒーを差し出してきた。
「ああ、ありがとう」
「お疲れ様です。また遅くまでですね」
「田中くんもね」
田中は三十二歳。既婚者だが、最近は家に帰らない日が増えているらしい。
「奥さん、大丈夫?」
「まあ…怒ってますけど。仕方ないですよね、仕事だから」
田中は力なく笑った。
「でも、最近妻とまともに会話してないんですよ。朝は俺が寝てて、夜は妻が寝てて」
「それは…」
「もう、何のために結婚したのかわからなくなってきました」
田中の言葉に、理佐は何も言えなかった。
「すみません、暗い話しちゃって」
「ううん、大丈夫」
理佐はコーヒーを一口飲んだ。苦い。
その時、オフィスの電気が一瞬、チカチカと明滅した。
「ん? 停電?」
「いや、すぐ直ったみたいですけど…」
二人は顔を見合わせた。
理佐は何となく、窓の外を見た。
渋谷の街は、いつもと変わらず輝いている。
でも――。
何か、空気が重い気がした。
翌日の昼休み。
理佐は区役所近くのカフェで、友人の麻美と会っていた。
「理佐、顔色悪いよ? ちゃんと寝てる?」
「まあまあ…ここ一週間、毎日終電だったけど」
「それ、まあまあじゃないから!」
麻美は呆れた様子で言った。麻美は理佐の大学時代の親友で、今は広告代理店で働いている。
「そんなに働いて、体壊すよ」
「大丈夫。若いから」
「二十八歳が若いとか言わないの。私たち、もうアラサーなんだからね」
「わかってるわよ…」
理佐は苦笑した。
「それより、麻美は元気そうね」
「まあね。最近、いい感じの人できたし」
「え、マジで!?」
「うん。同じ会社の後輩。二十五歳のイケメン」
「へえ…羨ましい」
「理佐も誰か探せばいいのに」
「無理無理。そんな時間ないもん」
理佐は首を振った。
「仕事で手一杯。恋愛とか考える余裕ない」
「でもさあ、このままでいいの?」
麻美が真剣な顔で聞いた。
「三十になって、四十になって、気づいたら一人とか嫌じゃない?」
「それは…」
「私たち、少子化対策の仕事してるんでしょ? 自分が結婚しないで、どうやって人に結婚勧めるの?」
麻美の言葉が、胸に刺さった。
「…わかってるわよ」
理佐は俯いた。
「わかってるけど…怖いのよ」
「怖い?」
「傷つくのが。裏切られるのが。失うのが」
理佐は拳を握った。
「前の彼氏、覚えてる? 三年付き合って、結婚考えてたのに、浮気されて振られたの」
「ああ…」
「あれから、もう誰も信じられなくなった。どうせまた裏切られるって」
理佐の目に、涙が浮かんだ。
「だから、仕事に逃げてるの。仕事なら、裏切られないから」
「理佐…」
麻美は友人の手を握った。
「でもね、それじゃダメだよ」
「わかってる…わかってるけど…」
その時だった。
カフェの窓の外を、女子高生の集団が通り過ぎた。
白と赤の巫女装束を着た少女たち――紅葉と桜だった。
「あれ…?」
理佐は思わず立ち上がった。
「どうしたの?」
「あの子たち…」
理佐は窓に近づいた。
少女たちは、何か真剣な表情で話している。そして――。
一瞬、少女たちの周りに、淡い光が見えた気がした。
「え…」
「理佐?」
「今、光が…」
「光? 何言ってるの?」
麻美は不思議そうに理佐を見た。
「ごめん、気のせいかも…」
理佐は席に戻ったが、心はざわついていた。
あの少女たち、何者なんだろう――。
その日の夜。
理佐は残業を終えて、渋谷駅に向かっていた。
午後十一時過ぎ。街はまだ人で溢れている。
駅への道を歩きながら、理佐はスマホでニュースを見ていた。
『渋谷区で若者の無気力症が増加。原因不明』
そんな見出しが目に入った。
「無気力症…」
確かに、最近街を歩く人たちの表情が暗い気がする。
みな下を向き、スマホを見つめ、誰とも目を合わせない。
「私も…同じか」
理佐は自嘲した。
その時だった。
前方の路地から、悲鳴が聞こえた。
「きゃあ!」
「え!?」
理佐は反射的に路地に駆け込んだ。
そこには――黒い影に襲われている女性がいた。
「何…これ…」
理佐は息を呑んだ。
影は人の形をしているが、輪郭がぼやけて、まるで煙のように揺らめいている。
「助けて…誰か…」
女性が震える声で叫んだ。
「や、やめなさい!」
理佐は勇気を振り絞って叫んだ。
影が、ゆっくりとこちらを向いた。
『邪魔…するな…』
ぞっとするような声が響いた。
「ひっ…」
理佐は足が竦んだ。
影が、こちらに向かってくる。
「逃げなきゃ…」
でも、体が動かない。
影の手が、理佐の肩に触れようとした瞬間――。
「そこまでよ!」
澄んだ声が響いた。
リンリンという鈴の音。
白い光が路地を照らし、影を弾き飛ばした。
『ぎいい!』
影が苦しそうに身をよじる。
「大丈夫ですか!」
振り返ると、昼間見かけた巫女装束の少女――紅葉が立っていた。
「あなた…」
「今は説明してる暇ないわ。桜、環奈、お願い!」
「はーい!」
別の方向から、桜と環奈が現れた。
「神代くんも!」
「ああ」
蒼太が護符を構えた。
四人が影を囲む。
「せーの!」
四人が同時に攻撃した。
光が影を包み込み――影は消滅した。
「ふう…」
桜が額の汗を拭った。
「ねえ、お姉ちゃん。最近、妖怪の出現頻度上がってない?」
「ええ。明らかに増えてる」
紅葉が深刻な表情で答えた。
「あの…」
理佐が恐る恐る声をかけた。
「今の…何だったんですか?」
四人が理佐を見た。
「あなた、見えたの?」
「は、はい…黒い、影みたいなものが…」
「そう…」
紅葉は少し考えてから、理佐に近づいた。
「あなた、霊感があるのね」
「霊感…?」
「ええ。普通の人には、あれは見えない」
紅葉は真剣な目で理佐を見た。
「あなた、お名前は?」
「篠宮…篠宮理佐といいます」
「篠宮さん。少しお話しできますか?」
「え…あ、はい…」
理佐は戸惑いながらも頷いた。
近くのファミレスで。
五人はボックス席に座っていた。
「改めて自己紹介します。私は花宮紅葉。こっちが妹の桜」
「よろしくお願いします!」
「結城環奈です」
「神代蒼太」
四人が順番に名乗った。
「あの…あなたたち、何者なんですか?」
理佐が恐る恐る聞いた。
「私たちは、金王八幡宮の巫女よ」
「金王八幡宮…ああ、渋谷にある神社の」
「ええ。そして、私たちは縁断ちの妖怪と戦ってる」
「縁断ち…妖怪…」
理佐は混乱した様子で頭を抱えた。
「ごめんなさい、ちょっと理解が追いつかなくて…」
「無理もないわ。でも、事実なの」
紅葉は真剣な顔で理佐を見た。
「最近、渋谷で若者の無気力症が増えてるニュース、知ってる?」
「ええ。私、区役所で働いてるので」
「区役所?」
「はい。少子化対策課で」
「少子化対策課!」
四人が驚いて顔を見合わせた。
「それって、もしかして結婚支援とかやってる?」
「ええ。婚活イベントとか、子育て支援とか…」
「すごい! じゃあ、篠宮さんは縁を作る仕事をしてるんだ!」
桜が目を輝かせた。
「まあ…そうですね」
理佐は苦笑した。
「でも、うまくいってないんです。イベントやっても、参加者は少ないし、カップルになっても長続きしない」
「それは…」
紅葉が暗い顔をした。
「縁断ちの妖怪の影響かもしれない」
「妖怪の…影響?」
「ええ。妖怪は人々の心を閉ざさせる。誰かとつながることを諦めさせる」
紅葉は拳を握った。
「だから、恋愛も、友情も、すべてが希薄になっていく」
「そんな…」
理佐は愕然とした。
「じゃあ、私たちの努力は…」
「無駄じゃないわ」
紅葉が強く言った。
「あなたたちが頑張ってくれてるおかげで、まだ希望を持ってる人たちがいる」
「でも…」
「篠宮さん」
環奈が口を開いた。
「私、ずっと誰かを好きになることができませんでした。縁を感じられなくて、苦しんでました」
「環奈ちゃん…」
「でも、桜と出会って、先輩たちと出会って、変わったんです。大切な人ができて、守りたいものができた」
環奈は真っ直ぐに理佐を見た。
「だから、諦めないでください。縁は、必ずつながります」
「環奈ちゃん…」
理佐の目に、涙が浮かんだ。
「でも…私…」
「篠宮さん、あなたも縁を諦めてる?」
桜が優しく聞いた。
「……はい」
理佐は俯いた。
「傷つくのが怖くて…誰も信じられなくて…」
「わかります」
蒼太が淡々と言った。
「俺も同じだった。一人のほうが楽だと思ってた」
「神代くん…」
「でも、こいつらに出会って変わった」
蒼太は三人を見た。
「一人じゃできないことも、みんなとならできる。それを教えてもらった」
「みんなと…」
理佐は四人を見た。
若い彼ら彼女らは、真剣に、必死に、人々の縁を守ろうとしている。
自分は何をしてるんだろう。
大人のくせに、仕事から逃げて、恋愛から逃げて――。
「私…」
理佐は立ち上がった。
「私も、手伝わせてください!」
「え?」
「私、区役所で働いてます。大人としてできることがあるはず」
理佐の目には、強い決意が宿っていた。
「少子化対策も、本気でやります。形だけのイベントじゃなくて、本当に人と人がつながれる場を作ります」
「篠宮さん…」
「それに」
理佐は拳を握った。
「私自身も、変わります。もう、恋愛から逃げません」
「本当ですか!」
桜が嬉しそうに叫んだ。
「ええ。あなたたちが頑張ってるのに、大人が逃げてちゃダメよね」
「篠宮さん…ありがとうございます」
紅葉が深く頭を下げた。
「私たちだけじゃ、限界があります。大人の協力が必要でした」
「任せて。私にできることは何でもするわ」
理佐は力強く頷いた。
「よし、じゃあ作戦会議しようか!」
桜がテーブルに地図を広げた。
「最近、妖怪が多く出る場所をマークしたんだけど…」
五人は深夜まで、作戦を練った。
翌日、区役所。
理佐は上司の前に立っていた。
「篠宮さん、何? 急に企画書の変更って」
「はい。今までの婚活イベント、形だけになってました」
「形だけって…」
「参加者を集めて、適当に話させて、はい終わり。それじゃ意味がないんです」
理佐は新しい企画書を差し出した。
「本当に人と人がつながれるイベントにしたいんです」
上司は企画書を読んだ。
「ふむ…『心をつなぐ縁結びプロジェクト』?」
「はい。ただ出会いの場を提供するんじゃなくて、参加者が本音で語り合える場を作ります」
「具体的には?」
「少人数制のワークショップ。自分の想いを語り、相手の想いを聞く。そこから、本当のつながりが生まれます」
理佐の目は、真剣だった。
「予算は…これ、ちょっと高くない?」
「でも、効果は絶対あります。信じてください」
上司は理佐の顔を見た。
「…わかった。やってみろ」
「本当ですか!」
「ただし、結果を出せよ」
「はい! 必ず!」
理佐は深く頭を下げた。
その夜。
理佐は久しぶりに、友人の麻美に電話した。
「もしもし、麻美? ちょっと聞いて」
『どうしたの?』
「私、変わることにした」
『変わる?』
「うん。もう、恋愛から逃げない。仕事も、本気でやる」
『え…急にどうしたの?』
「素敵な子たちに出会ったの。高校生なのに、すごく頑張ってて」
理佐は窓の外を見た。
遠くに、金王八幡宮の鳥居が見える。
「私も、負けてられないなって」
『理佐…』
「だから、麻美。今度、合コンセッティングして」
『マジで!?』
「うん。本気で、誰か探す」
『わかった! 任せて!』
麻美の嬉しそうな声が聞こえた。
「ありがとう」
理佐は電話を切った。
そして、空を見上げた。
「頑張るぞ…私も」
夜空に、星が輝いていた。
まるで、理佐の決意を祝福するように。
第3章: つながりの痛みと希望第2節「無縁坊の哲学」
「みんな、集まって!」
金王八幡宮の境内で、桜が手を振った。紅葉、蒼太、環奈、そして理佐が集まってくる。
「篠宮さんも来てくれたんですね」
「ええ。今日は仕事を早めに切り上げてきたわ」
理佐は巫女たちに微笑んだ。もう仲間として認められてから、三日が経っていた。
「おじいちゃんが、大事な話があるって」
「何の話?」
その時、社殿から梅之介が出てきた。その顔は、いつになく深刻だった。
「集まったか。実は…」
梅之介は金王桜を見上げた。
「千歳様から、警告があった」
「千歳様から?」
「ああ。無縁坊が、動き始めたと」
その言葉に、全員が緊張した。
「ついに…」
「どこにいるんですか?」
「わからん。だが、確実にこの渋谷のどこかにいる」
梅之介は真剣な顔で五人を見た。
「奴は強大だ。お前たちが今まで戦ってきたどの妖怪とも、格が違う」
「でも、戦うしかないんですよね」
環奈が決意を込めて言った。
「ああ。だが、無理はするな」
「わかりました」
紅葉が頷いた瞬間――。
ゴォォォォ。
突然、強い風が吹き荒れた。
「何!?」
境内の木々が激しく揺れる。金王桜の花びらが、大量に散り始めた。
『来た…奴が…来た…』
千歳の声が、震えながら響いた。
「千歳様!」
『気をつけて…巫女たちよ…奴は…』
千歳の声が途切れた。
「どういうこと!?」
桜が叫んだ瞬間、境内の空気が一変した。
重い。息苦しい。まるで、見えない何かに圧迫されているような感覚。
「この気配…」
蒼太が勾玉を握りしめた。
「来るぞ!」
石段の下から、ゆっくりと人影が現れた。
中年の男性。黒いスーツに身を包み、穏やかな表情を浮かべている。
でも、その周りには無数の黒い影が揺らめいていた。
『ようやく…お目にかかれましたね…巫女の方々』
男が、丁寧に頭を下げた。
「あなたが…無縁坊…!」
紅葉が警戒しながら叫んだ。
『はい。私は無縁坊と申します』
男――無縁坊は、穏やかな笑みを浮かべたまま境内に上がってきた。
「来るな!」
蒼太が護符を構える。
『おや、神代家の末裔。勾玉を手に入れたようですね。おめでとうございます』
「なぜ、それを…」
『私は、この街のすべてを見ています。人々の心も、あなた方の行動も』
無縁坊は金王桜を見上げた。
『美しい桜ですね。人の縁を結ぶ、神聖な木』
「あなたには関係ないわ!」
紅葉が鈴を構えた。
「今すぐ立ち去りなさい!」
『立ち去る? なぜですか?』
無縁坊は首を傾げた。
『私は、ただお話しに来ただけですよ』
「話…?」
『はい。あなた方と、お話がしたかった』
無縁坊はゆっくりと近づいてきた。蒼太と環奈が紅葉を庇うように前に出る。
『怖がらないでください。私は戦いに来たのではありません』
「信用できるか!」
「蒼太くん、待って」
梅之介が蒼太を制した。
「無縁坊よ。お前の目的は何じゃ」
『宮司殿。お久しぶりです』
無縁坊は梅之介に礼をした。
『五十年前は、大変でしたね』
「…お前を封じたつもりだったが」
『ええ。確かに封じられました。でも、時代が私を呼んだのです』
無縁坊は腕を広げた。
『見てください。この現代社会を。人々は疲れ果て、傷つき、絶望しています』
「それは…」
『だから、私が助けてあげているのです』
無縁坊は優しく微笑んだ。
『縁という苦しみから、解放してあげているのです』
「苦しみ…?」
桜が呟いた。
「縁は苦しみなんかじゃない!」
『本当にそう思いますか?』
無縁坊が桜を見た。
『では、聞きましょう。あなた、友人の環奈さんが妖怪に取り憑かれた時、苦しみませんでしたか?』
「それは…」
『心配で、不安で、胸が締め付けられたでしょう?』
「でも…!」
『それが、縁の痛みです』
無縁坊は環奈を見た。
『環奈さん。あなたは長い間、縁を感じられず苦しんできた。なぜですか?』
「私は…」
『縁を求めるから、苦しむのです。最初から求めなければ、苦しむこともない』
「違う!」
環奈が叫んだ。
「確かに、苦しかったです。でも、桜と友達になれて、私は幸せになりました!」
『今は、そう思えるでしょう。でも、いつか失う時が来ます』
無縁坊の声が、低くなった。
『友情は壊れる。恋は終わる。家族は死ぬ。すべては、いつか失われる』
「それでも!」
環奈が涙を流しながら叫んだ。
「それでも、つながりたい! 大切な人と、一緒にいたい!」
『なぜですか? 失う痛みを知っているのに』
「失う痛みより、一緒にいる喜びのほうが大きいからです!」
環奈の言葉に、無縁坊は静かに微笑んだ。
『…そうですか。あなたは、強い』
無縁坊は紅葉を見た。
『では、あなたはどうですか? 花宮紅葉さん』
「私…?」
『あなたは巫女として、人々を守る責任を背負っています。重くありませんか?』
「重い…わ」
紅葉は正直に答えた。
「毎日、戦って、疲れて、それでも次の日また戦わなきゃいけない」
『辛いでしょう』
「ええ。辛いわ」
「お姉ちゃん…」
桜が心配そうに姉を見た。
「でもね」
紅葉は顔を上げた。
「その辛さを分かち合える人たちがいる。桜も、神代くんも、環奈ちゃんも、篠宮さんも」
紅葉は仲間たちを見た。
「一人じゃないから、頑張れる。それが、縁の力よ」
『…なるほど』
無縁坊は少し考え込んだ。
『では、大人の方に聞きましょう』
無縁坊は理佐を見た。
『篠宮理佐さん。あなたは、元恋人に裏切られた』
「!」
理佐が息を呑んだ。
「なぜ、それを…」
『あなたの心の傷、見えますよ』
無縁坊は優しく言った。
『三年間、信じていた人に裏切られた。その痛みは、今も消えていない』
「……」
『それでも、また誰かを信じようと思いますか? また傷つくかもしれないのに』
理佐は黙り込んだ。
確かに、怖い。また裏切られるかもしれない。また傷つくかもしれない。
「篠宮さん…」
紅葉が心配そうに見つめる。
理佐は深呼吸をした。
「…怖いわ。正直、すごく怖い」
『でしょう。ならば――』
「でも」
理佐は顔を上げた。
「それでも、私は信じたい」
『なぜですか?』
「この子たちを見てたら、わかったの」
理佐は五人を見た。
「傷ついても、苦しんでも、それでも誰かとつながろうとする姿が、すごく美しいって」
「篠宮さん…」
「私も、そうありたい。怖くても、また誰かを信じたい」
理佐は拳を握った。
「それが、生きるってことだから」
『…そうですか』
無縁坊は、少し寂しそうに笑った。
『みなさん、強いですね。私の想像以上に』
「無縁坊」
梅之介が前に出た。
「お前も、かつては人だったのではないか?」
『…ええ』
無縁坊は頷いた。
『私も昔、人間でした。大切な人がいました』
「何があったんじゃ」
『…失いました。すべてを』
無縁坊の声が、震えた。
『妻を、子を、友を。戦で、病で、裏切りで。次々と失っていきました』
「無縁坊…」
『そして、気づいたのです。つながりこそが、苦しみの源だと』
無縁坊は空を見上げた。
『最初から何も持たなければ、失うこともない。最初から誰も愛さなければ、傷つくこともない』
「でも、それは…」
『それは生きていないのと同じ? 違います』
無縁坊は強く言った。
『それこそが、本当の平穏なのです。痛みのない、安らかな世界』
「そんなの…」
桜が涙を流した。
「そんなの、寂しいだけじゃないですか!」
『寂しさも、やがて消えます』
「消えちゃダメです!」
桜が叫んだ。
「寂しいから、誰かと一緒にいたいって思うんです! 痛いから、優しくしたいって思うんです!」
桜は無縁坊に向かって走った。
「桜!」
紅葉が止めようとするが、桜は無縁坊の前に立った。
「あなた、本当は寂しいんでしょ?」
『…何を言って』
「わかります。私、人の心が感じ取れるから」
桜は無縁坊の手を握った。
「あなたの心、すごく冷たい。でも、その奥に…温かいものが残ってる」
『やめなさい…』
「大切な人を思い出してください。妻や子供を。友達を」
『やめろ!』
無縁坊が桜を突き飛ばした。
「きゃっ!」
「桜!」
環奈が駆け寄って桜を受け止めた。
無縁坊は苦しそうに頭を抱えた。
『思い出すな…思い出したくない…あの痛みを…』
「無縁坊…」
梅之介が静かに近づいた。
「お前は、逃げておるだけじゃ」
『…何?』
「痛みから、逃げておる。失う恐怖から、逃げておる」
梅之介は優しく言った。
「だが、それは生きることを放棄しておるのと同じじゃ」
『違う…私は…人々を救っている…』
「いいや。お前は、自分の痛みを他人に押し付けておるだけじゃ」
『黙れ!』
無縁坊が叫んだ瞬間、周囲の黒い影が膨れ上がった。
「みんな、下がって!」
蒼太が全員を庇った。
『もういい…話し合いは終わりだ…』
無縁坊の目が、赤く光った。
『次に会う時は…本気で戦おう…』
「待って!」
紅葉が叫んだが、無縁坊は黒い影と共に消えていった。
境内に、静寂が戻った。
「行っちゃった…」
桜が呟いた。
「大丈夫か、みんな」
梅之介が心配そうに見回す。
「はい…何とか」
「でも、おじいちゃん」
紅葉が梅之介を見た。
「あの人…無縁坊…」
「ああ」
「本当に、悪い人なんでしょうか?」
紅葉の問いに、梅之介は難しい顔をした。
「わからん。じゃが、奴の苦しみは本物じゃ」
「苦しみ…」
「失う痛みに耐えられず、心を閉ざしてしまった。それが、妖怪となった」
梅之介は金王桜を見上げた。
「じゃが、奴の考えを認めるわけにはいかん」
「はい」
「お前たち、覚悟はいいか」
「はい」
五人が揃って答えた。
「次は、本当の戦いになる」
「わかってます」
紅葉が前に出た。
「私たちは、人々の縁を守ります。無縁坊の哲学が間違ってると、証明します」
「お姉ちゃん…」
「桜、あなたの言葉、間違ってないわ」
紅葉は妹の肩に手を置いた。
「無縁坊は、寂しいんだと思う。だからこそ、私たちが彼を救わなきゃいけない」
「救う…?」
「ええ。倒すんじゃなくて、救う」
紅葉は真剣な目で仲間たちを見た。
「無縁坊に、もう一度信じる力を取り戻させる。それが、私たちの使命よ」
「紅葉…」
蒼太が呟いた。
「お前、本当に優しいな」
「え?」
「敵にさえ、手を差し伸べようとする」
「だって…」
紅葉は少し照れくさそうに笑った。
「それが、巫女の役目だもの。誰も見捨てない」
「かっこいいです、先輩」
環奈が目を輝かせた。
「私も、そうなりたい」
「環奈ちゃん…ありがとう」
「篠宮さんも、いいですか?」
理佐が一歩前に出た。
「私、大人として、できることをします」
「篠宮さん…」
「少子化対策、本気でやります。人と人がつながれる場所を、たくさん作ります」
理佐は力強く言った。
「そして、私自身も変わります。もう、恋から逃げません」
「篠宮さん!」
桜が理佐に抱きついた。
「頑張ってください! 応援します!」
「ありがとう、桜ちゃん」
五人は手を重ねた。
「さあ、行くわよ」
「どこに?」
「無縁坊を探す。そして、説得する」
紅葉の目には、強い決意が宿っていた。
「簡単じゃないぞ」
蒼太が警告した。
「わかってる。でも、やるしかない」
「…ああ」
蒼太も頷いた。
五人は境内を出て、渋谷の街へと向かった。
金王桜は、静かに五人を見送っていた。
『頑張って…巫女たちよ…』
千歳の声が、優しく響いた。
『お前たちなら…きっと…無縁坊の心も…救える…』
第3章:つながりの痛みと希望第3節「それでも私たちは歌う」
「見つからない…」
深夜の渋谷。紅葉たち五人は、三時間も街を探し回っていた。
「無縁坊、どこに消えたの…」
桜が疲れた様子で呟いた。
「気配すら感じられない」
蒼太が勾玉を握りしめた。
「完全に姿を隠してる」
「このまま朝になっちゃうよ…」
環奈が不安そうに空を見上げた。東の空が、わずかに白み始めている。
「みんな、一度休憩しましょう」
理佐が近くのコンビニを指差した。
「飲み物買ってくるわ。何がいい?」
「私、カフェオレ!」
「俺はブラックコーヒー」
「じゃあ、私が買ってくるね」
桜がコンビニに向かおうとした時――。
ヴゥゥゥン。
空気が振動した。
「この感じ…!」
紅葉が周囲を見回す。
「妖怪!?」
「いや、違う」
蒼太が首を振った。
「これは…人の想い?」
五人は音の方向へと走った。
辿り着いたのは、代々木公園の一角。ベンチに、一人の若い男性が座っていた。
「あの人…」
男性は、スマホを見つめたまま動かない。その周りに、黒い靄のようなものが漂っていた。
「縁断ちに…取り憑かれてる!」
紅葉が駆け寄ろうとした瞬間、男性が呟いた。
「もう…いいや…」
「え?」
「告白しようと思ってたけど…やっぱりやめよう」
男性は力なく笑った。
「どうせ振られる。傷つくだけだ」
「待って!」
桜が男性の前に立った。
「諦めちゃダメです!」
「…誰?」
男性が呆然と桜を見た。
「私は…」
桜は言葉に詰まった。何と言えばいいのか。
「私は、金王八幡宮の巫女です。あなたの想い、消さないで」
「想い…?」
「好きな人がいるんでしょ? 告白したいんでしょ?」
「…ああ」
男性は再びスマホを見た。画面には、笑顔の女性の写真が映っている。
「同じ会社の先輩。優しくて、綺麗で…俺なんかじゃ釣り合わないけど」
「そんなことない!」
桜が強く言った。
「あなたの想いは、本物です。それを大切にしてください」
「でも…」
「傷つくのが怖いの、わかります。私も怖いです」
桜は男性の隣に座った。
「でもね、想いを伝えないで後悔するより、伝えて傷ついたほうがいいんです」
「…なんで?」
「だって、それが生きてる証拠だから」
桜は笑顔を見せた。
「あなたが誰かを好きになれたこと、それ自体が素晴らしいことなんです」
「俺が…好きに…」
男性の目に、涙が浮かんだ。
「そうか…俺、ちゃんと人を好きになれたんだ…」
男性の周りの黒い靄が、少しずつ薄れていった。
「ありがとう、巫女さん」
男性は立ち上がった。
「やってみる。告白してみる」
「頑張ってください!」
桜が手を振ると、男性は笑顔で去っていった。
「桜…すごいわ」
紅葉が妹の肩を抱いた。
「あなたの言葉、あの人を救ったわ」
「えへへ…」
桜は照れくさそうに笑った。
その時だった。
『美しい光景ですね』
声が響いた。
「!」
五人が振り返ると、木の陰から無縁坊が現れた。
「無縁坊!」
『先ほどの言葉、感動しました』
無縁坊は拍手をした。
『でも、あの若者は気づいていないのです』
「何を?」
『告白して、振られた時の痛みを』
無縁坊は悲しそうに微笑んだ。
『彼は、これから傷つくでしょう。そして、後悔するでしょう。「やっぱり告白しなければよかった」と』
「それでも!」
桜が叫んだ。
「それでも、挑戦することが大事なんです!」
『なぜですか?』
「だって…」
桜は言葉に詰まった。
そこに、環奈が前に出た。
「私が答えます」
「環奈ちゃん…」
「無縁坊さん。私、ずっと何も感じられませんでした。恋も、友情も」
環奈は真っ直ぐに無縁坊を見た。
「でも、桜と出会って変わったんです。初めて、誰かを大切に思えた」
『それで?』
「確かに、不安です。桜がいなくなったらどうしようって、毎日怖いです」
環奈の声が震えた。
「でも、その怖さも含めて、私は生きてるって感じるんです」
『苦しみを、喜びだと?』
「はい」
環奈は頷いた。
「苦しいけど、それが生きてる証拠。それが、人間だから」
『…人間、か』
無縁坊は空を見上げた。
『私も、かつてはそう思っていました』
「今も、思えるはずです」
紅葉が前に出た。
「あなたの心の中に、まだ温かいものが残ってる。桜が感じ取ったんです」
『…もう、ありません』
「嘘!」
桜が叫んだ。
「さっき、私の手を握った時、感じました。あなたの心の奥底に、小さな光が!」
『やめなさい…』
「その光は、あなたの大切な人たちの記憶です!」
桜が無縁坊に駆け寄った。
「桜、危ない!」
蒼太が止めようとするが、桜は無縁坊の手を握った。
「思い出してください。妻や子供を愛した記憶を。友達と笑い合った記憶を」
『やめろ!』
無縁坊が桜を突き飛ばそうとした――が、できなかった。
『なぜ…私は…』
「あなた、本当は優しいんです」
桜は涙を流しながら、無縁坊の手を握り続けた。
「人を傷つけたくない。だから、みんなを痛みから解放しようとしてる」
『…そうだ。私は、人々を救っている』
「違います。あなたが救いたいのは、あなた自身です」
『…!』
無縁坊の体が震えた。
「失う痛みに耐えられないあなた自身を、救いたいんです」
『黙れ…黙れ!』
無縁坊が桜を払いのけた。桜が倒れる。
「桜!」
紅葉が駆け寄った。
『もういい…もう、話すことはない…』
無縁坊の周りに、無数の黒い影が現れた。
『次は…本当に戦う…覚悟しておきなさい…』
「待って!」
理佐が前に出た。
「無縁坊さん、私にも言わせてください」
『…大人の方』
「私も、あなたと同じでした。裏切られて、傷ついて、もう誰も信じられなくなった」
理佐は拳を握った。
「でも、この子たちを見て気づいたんです」
『何を?』
「傷ついても、苦しんでも、それでも人とつながろうとする姿が、どれだけ美しいか」
理佐の目に、涙が浮かんだ。
「私も、もう一度信じたい。怖いけど、また誰かを愛したい」
『…愚かですね』
「愚かでもいいです」
理佐は笑顔を見せた。
「それが、人間だから」
『人間…人間…』
無縁坊が頭を抱えた。
『お前たちは…なぜそこまで…』
「無縁坊」
蒼太が一歩前に出た。
「俺も、かつてはお前と同じだった」
『…陰陽師の子よ』
「一人のほうが楽だと思ってた。誰ともつながらなければ、傷つかないと」
蒼太は勾玉を握った。
「でも、こいつらに出会って変わった」
蒼太は仲間たちを見た。
「一人じゃできないことも、みんなとならできる。それを教えてもらった」
『…そうか』
無縁坊は静かに微笑んだ。
『あなた方は、強い。私の想像以上に』
「無縁坊さん」
紅葉が立ち上がった。
「お願いです。もう一度、信じてください。人の温かさを」
『…無理です』
無縁坊は首を振った。
『私は、あまりにも多くを失った。もう、何も信じられない』
「そんな…」
『でも』
無縁坊は五人を見た。
『あなた方の想いは、受け取りました』
「え…?」
『だから、正々堂々と戦いましょう。あなた方の信じる道と、私の信じる道、どちらが正しいのか』
無縁坊の周りの黒い影が、どんどん膨れ上がっていく。
「来るの…?」
「みんな、構えて!」
五人が戦闘態勢を取った瞬間――。
『いいえ。今日は、これで』
無縁坊が手を上げると、影が消えていった。
『三日後。満月の夜。金王八幡宮で、決着をつけましょう』
「三日後…」
『それまでに、覚悟を決めておきなさい』
無縁坊は消える直前、小さく呟いた。
『あなた方の歌…楽しみにしています…』
「歌…?」
桜が呟いた瞬間、無縁坊は完全に消えていった。
夜が明け始めた代々木公園で、五人は呆然と立ち尽くしていた。
「三日後…」
紅葉が呟いた。
「決戦、ってことね」
「大丈夫かな…勝てるかな…」
環奈が不安そうに言った。
「わからない」
蒼太が正直に答えた。
「奴は強い。今までの妖怪とは格が違う」
「でも、やるしかないわよね」
理佐が明るく言った。
「私たち、もう後には引けないもの」
「篠宮さん…」
「それに」
理佐は五人を見回した。
「私たちには、武器がある」
「武器?」
「ええ。縁の力」
理佐は笑顔を見せた。
「五人で力を合わせれば、きっと勝てる」
「篠宮さん…ありがとう」
紅葉が理佐の手を握った。
「そうだ!」
桜が突然叫んだ。
「無縁坊、最後に『歌を楽しみにしてる』って言ってたよね」
「ああ、確かに」
「あれって、もしかして…」
桜は目を輝かせた。
「千歳様が言ってた、『新しい時代の巫女の力は歌』って!」
「そうか!」
紅葉が膝を打った。
「祝詞じゃなくて、歌で戦えってことね」
「でも、どんな歌?」
「わかんない。でも、きっと私たちにしか歌えない歌があるはず」
桜は拳を握った。
「三日間で、作ろうよ。私たちの歌を」
「作る…?」
環奈が驚いた。
「うん! みんなの想いを込めた、特別な歌!」
「でも、私たち作曲とかできないよ…」
「大丈夫。おじいちゃんが昔教えてくれた、巫女の歌のメロディーがあるの」
桜はスマホを取り出した。
「それに、新しい歌詞をつければいい」
「歌詞…」
紅葉は考え込んだ。
「私たちが、無縁坊に伝えたいことを、歌にするのね」
「そう!」
「いいわね。やりましょう」
紅葉が頷いた。
「神代くん、環奈ちゃん、篠宮さんも手伝って」
「ああ」
「はい!」
「もちろん!」
五人は手を繋いだ。
「三日後、私たちの想いを、歌で伝えるわよ」
紅葉の言葉に、全員が頷いた。
その日から、五人は毎晩金王八幡宮に集まって、歌を作った。
「ここは、『縁を断つ者よ、光に還れ』じゃなくて…」
紅葉がノートに歌詞を書きながら言った。
「『縁を恐れないで、心を開いて』とか?」
「いいね、お姉ちゃん!」
桜が賛同した。
「無縁坊に、恐れないでって伝えたいもんね」
「サビは、もっと力強く」
蒼太が提案した。
「『それでも私たちは歌う、つながりを信じて』とか」
「神代くん、詩的じゃない!」
環奈が驚いた。
「…うるさい」
蒼太は顔を赤くした。
「でも、いいと思います」
理佐が笑顔で言った。
「『それでも』っていう言葉、すごく響く」
五人は夜通し、歌詞を練った。
二日目の夜。
「メロディーは、このままでいい?」
桜がスマホで音源を流した。
「うん。伝統的な巫女の歌に、現代的なリズムを加えたらどうかな」
紅葉が提案した。
「環奈ちゃん、ダンスできる?」
「え? ダンス?」
「うん。歌いながら踊るの。もっと力を高めるために」
「やってみます!」
環奈が立ち上がり、振り付けを考え始めた。
「こういう動きとか…」
「いいね! じゃあ、サビはみんなで手を繋いで…」
少女たちは、楽しそうに歌と踊りを作っていった。
三日目の夜。
「完成した…」
紅葉がノートを閉じた。
「これが、私たちの歌」
「タイトルは?」
理佐が聞いた。
「えっとね…」
桜が照れくさそうに言った。
「『桜のキズナ☆ミッション』!」
「…桜、ネーミングセンス」
蒼太が呆れた。
「いいじゃん! わかりやすいし!」
「まあ、確かに」
紅葉は笑った。
「私たちらしいわね」
「じゃあ、最後に通しで練習しよう」
五人は境内に立った。
月明かりの下、金王桜が静かに揺れている。
「いくわよ。せーの!」
五人が歌い始めた。
『咲け咲け、金王の桜よ キズナを結んで、恋を開いて 私たち姉妹は、巫女戦士 キュンを阻む、妖怪退散!
政府も魔物も、関係ないよ この愛こそが、本気のミッション 咲いてよ、ずっと、人の心に 縁つなぐ、神の花!』
五人の声が重なり、美しいハーモニーを奏でた。
境内に、淡い光が溢れていく。
『それでも私たちは歌う つながりを信じて 痛みも喜びも、全部抱きしめて 未来へと続く、この道を!』
最後の音が消えた時、境内は静まり返っていた。
「…どう?」
桜が不安そうに聞いた。
その時――。
『素晴らしい…』
千歳の声が響いた。
『お前たちの歌…心に響いた…』
「千歳様!」
『この歌なら…きっと…無縁坊の心にも…届く…』
金王桜の花が、一斉に開いた。
「わあ…」
満開ではないが、確かに花の数が増えていた。
『お前たちの想い…力になった…ありがとう…』
「千歳様…」
『明日…頑張っておくれ…わしも…力を貸す…』
「はい!」
五人が声を揃えた。
その夜、五人は境内で夜を明かした。
明日が、決戦の日だった。
『桜のキズナ☆ミッション』歌詞紹介
【1番】
(Aメロ)
この街の片すみに 時を超えて立ってる
伝説の桜 名を呼べば 金王桜(こんのうざくら)
千年(ちとせ)の願いを 見守ってきたけど
今年はなんだか 空気がザワつく
(Bメロ)
ニュースの声じゃ 少子化がどーとか
うわべばかりで 中身スカスカ!
恋する勇気 育ててくれなきゃ
未来が枯れちゃうよ!
(サビ)
咲け咲け!金王(こんのう)の桜よ!
キズナを結んで 恋を開いて
私たち姉妹(ふたり)は 巫女(みこ)戦士!
キュンを阻む 妖怪退散!
政府も魔物も 関係ないよ
この愛こそが 本気のミッション
咲いてよ、ずっと 人の心に
縁(えにし)つなぐ 神の花!
【2番】
(Aメロ)
お札に願い書いて 手を合わせる君に
勇気が灯るように ちょっとだけ手助け
(Bメロ)
結ばれた手は 未来への種
見えない絆が 芽吹いていくよ
言い訳してる オトナは置いてこ!
私たちが護る!
(サビ)
燃えろ!赤い神紋(しんもん)の誓い
恋を恐れる 影を祓って
涙も笑顔も 全部リアル
揺れる想い 断ち切らせない
神社の奥で 今も光る
真実(ほんとう)の願い 咲く金王桜
ねえ、誰より先に
あなたと見たいの
この春を──
【Cメロ】
「少子化?誰のせい?
声を上げなきゃ、守れないよ…
未来のために、立ち上がれ… 巫女アイドル!」
【ラストサビ】
咲け咲け!渋谷金王の桜よ!
キズナを結んで 恋を咲かせて
誰かを想う その優しさが
未来(あす)を創る 力だから!
妖怪退散!愛を護れ!
この時代(とき)にこそ 必要な願い
咲いてよ、ずっと 人の心に
縁(えにし)つなぐ 神の花!
『金王桜縁起祝詞歌』歌詞紹介
【序詞(Intro)】
【一の句(Verse 1)】
千代(ちよ)に八千代(やちよ)に
この地(ち)に立ちて
金王(こんのう)の桜
縁(えにし)結びし
花びら舞いて
想い運びて
人の心に
種を蒔かん
【祈りの句(Pre-Chorus)】
我らは縁を護る者
想いをつなぐ者
巫女(かんなぎ)の務め
今ここに
【大祓詞(Chorus)】
祓いたまえ 清めたまえ
闇を払いて 光もたらせ
咲け咲け 金王の桜よ
縁を結びて 未来を照らせ
神々(かみがみ)の御名(みな)において
この街(まち)護らん
花よ咲け 永久(とわ)に
【二の句(Verse 2)】
影(かげ)は迫れど
怯(ひる)まず立たん
二人の力
一つに合わせ
鈴の音(ね)響き
祝詞(のりと)唱えて
妖(あやかし)退け
平安(やすらぎ)もたらさん
【祈りの句(Pre-Chorus)】
我らは光を呼ぶ者
絆を紡ぐ者
姉妹(はらから)の誓い
今ここに
【大祓詞(Chorus)】
祓いたまえ 清めたまえ
闇を払いて 光もたらせ
咲け咲け 金王の桜よ
縁を結びて 未来を照らせ
神々の御名において
この街護らん
花よ咲け 永久に
【中入(Bridge)】
渋谷(しぶや)の空に
満月(まんげつ)昇り
千歳(ちとせ)の声が
我らを導く
「恐れるな 巫女たちよ
汝らの心
何よりも強し」
人々の想いよ
光となりて
この桜に
力を与えたまえ
【最終大祓詞(Final Chorus)】
祓いたまえ 清めたまえ
闇を払いて 光もたらせ
咲け咲け 金王の桜よ
縁を結びて 未来を照らせ
咲け咲け 永久に咲け
人の心に 種を蒔け
神々の御名において
この街護らん
花よ咲け
今 永久に
【結び詞(Outro)】
かくのごとく
祓い清めて
縁は護られ
桜は咲きぬ
ああ ありがたや......
ああ ありがたや......
小説とオリジナル曲同時作成します
世界観をまるごと形にしてみませんか?
あなたの
・想い
・大切な人
・オリジナルキャラクター
・忘れられない出来事
それらをもとに、 オリジナル小説+その物語のためだけのオリジナル曲を制作します。
文章だけでは伝えきれない感情を
音楽がそっと包み込み
音楽だけでは描けない情景を
物語が広げていきます。
✔ 世界観重視
✔ ふんわり依頼OK
✔ 完全オリジナル
✔ AIを活用した高品質制作
AI技術を活用し、クリエイターの感性で構成・調整を行っています。
「読む」「聴く」だけでなく “感じる作品”を求めている方へ。