【契約書ブログシリーズ 第20回】「とりあえず契約書を交わしましょう」が危険な理由|契約書より前に決めるべきこと

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法律・税務・士業全般
契約書の相談を受けていると、非常によく聞く言葉があります。

「細かいことはいいので、とりあえず契約書を作りたいです」

気持ちはよく分かります。契約書があれば安心できるように感じますし、「書面を交わしている=安全」というイメージもあるでしょう。

しかし、ここに大きな落とし穴があります。

実は、契約書は万能ではありません。
むしろ、準備不足のまま作られた契約書は、トラブルを防ぐどころか「争いの証拠」になることすらあります。

今回は、「契約書を書く前に決めておくべきこと」をテーマに解説します。

契約書は“魔法の紙”ではない

まず大前提として理解しておきたいのは、契約書はトラブルを消してくれる魔法の紙ではないということです。

契約書の役割は、すでに合意した内容を整理し、将来の紛争を防ぐこと。つまり、

合意が曖昧なままでは、どんなに立派な契約書でも意味がないのです。

例えば、こんなケースがあります。

「できる範囲で対応します」
「なるべく早く納品します」
「必要に応じて修正します」

一見やわらかく、関係も壊さなさそうな表現ですが、すべて解釈の余地があります。そして解釈の余地があるところに、トラブルは生まれます。

契約書を作る前にやるべきことは、実はとてもシンプルです。
お互いの認識を揃えること。これに尽きます。

最初に決めるべきは「ゴール」

契約で最も重要なのに、意外と曖昧なまま進むのが「何をもって完了とするか」です。

例えば、ホームページ制作を依頼した場合。

デザインが完成したら終了?
公開したら終了?
公開後の修正対応まで含む?

ここが決まっていないと、次のようなすれ違いが起きます。

発注側:「まだ完成とは言えない」
受注側:「もう納品しました」

どちらも間違っていません。ただ、ゴールが違うだけです。

契約書は、この“ゴールの定義”を書くためにあります。逆に言えば、ゴールが決まっていない状態で契約書を作るのは、地図を持たずに旅に出るようなものです。

次に決めるべきは「責任の範囲」

もう一つ重要なのが、「どこまで責任を負うのか」という線引きです。

例えばコンサルティング契約。

アドバイスをするのが仕事なのか
成果まで保証するのか

この違いは極めて大きいものです。

成果保証をしていないにもかかわらず、契約書にそれが書かれていなければ、「結果が出なかったから返金してほしい」と言われる可能性があります。

責任の範囲を決めることは、相手を守るだけでなく、自分を守ることでもあるのです。

実は一番揉めるのは「契約の終わり方」

契約を結ぶとき、人は前向きです。だからこそ、「終わるとき」のことを考えません。

しかし実務では、ここが最も揉めます。

途中解約はできるのか
着手金は返金するのか
作業途中の成果物はどうなるのか

こうした点を事前に話し合っておくだけで、多くのトラブルは防げます。

契約とは、「始まりの約束」であると同時に、終わり方の設計でもあります。

「良い契約書」は交渉の中で生まれる

契約書というと、専門家が作る難しい文書に思えるかもしれません。しかし本質はとても人間的です。

良い契約書には、必ず対話があります。

ここまではできます
ここからはできません
この条件なら引き受けます

こうした率直なすり合わせの結果が、条文になるのです。

逆に、「とりあえず契約書をください」という状態は、まだ対話が足りていないサインかもしれません。

契約書作成前のチェックリスト

契約書を作る前に、ぜひ次の4点を確認してみてください。

✔ ゴールは明確か
✔ 作業範囲は決まっているか
✔ 責任の線引きはできているか
✔ 終了時のルールは話し合ったか

この準備ができていれば、契約書は驚くほどスムーズに作れます。

まとめ|契約書は「合意の結果」である

契約書はスタートではありません。
合意のゴールです。

急いで形だけ整えるよりも、まずは認識を揃えること。そのプロセスこそが、最大のリスク対策になります。

契約書を作るときは、こう考えてみてください。

「この契約で、将来どんなことで揉めそうか?」

その答えが見えたとき、初めて“生きた契約書”が完成します。

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