【契約書ブログシリーズ 第12回】賃貸借契約書のキホン―16項目を解説

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法律・税務・士業全般

はじめに

部屋を貸す・借りる」「駐車場を貸す」「事務所を借りる」など、
日常生活やビジネスのあらゆる場面で登場するのが賃貸借契約です。

不動産会社を介して契約する場合は書式が整っていますが、
個人間での貸し借りや、店舗・倉庫・車両などを賃貸する場合には、
契約内容の曖昧さから思わぬトラブルが発生することがあります。

今回は、賃貸借契約書を作成する際に押さえるべき基本構造と、
貸主・借主それぞれの立場で注意すべきポイントを解説します。

賃貸借契約とは?

賃貸借契約とは、貸主が物(不動産や動産)を使用させ、借主がその対価として賃料を支払う契約です。
民法では以下のように定義されています(民法601条)。
「賃貸借は、当事者の一方がある物を使用及び収益させることを約し、相手方がこれに対して賃料を支払うことを約することによって、その効力を生ずる。」
つまり、
貸主:使用・収益させる義務
借主:賃料を支払う義務
この2つの義務が、契約の中心となります。

賃貸借契約書の基本構成

賃貸借契約書は、以下のような条項で構成されます。

(1)物件の特定

例文:
貸主は、東京都立川市〇〇町1丁目1番1号〇〇マンション301号室(以下「本物件」という。)を、借主に賃貸する。
ポイント:
所在地、建物名、部屋番号まで正確に
駐車場・倉庫が含まれる場合は別記で明記
誤記は後の紛争原因になるため正確さが重要

(2)使用目的

例文:
借主は、本物件を居住の目的にのみ使用し、これ以外の用途に供してはならない。
ポイント:
「住居」「事務所」「倉庫」など用途を明確に限定
用途違反(例:民泊・店舗利用)を防ぐ効果
用途変更は貸主承諾が必要と明記すると安心

(3)契約期間

例文:
本契約の期間は、令和7年4月1日から令和9年3月31日までの2年間とする。
期間満了の1か月前までに当事者いずれからも意思表示がないときは、同一条件にて1年間自動更新されるものとする。
ポイント:
開始日・終了日を必ず記載
自動更新の有無・通知期限を明確化
定期借家契約の場合は別途書面と説明義務が必要

(4)賃料および支払い方法

例文:
賃料は月額120,000円とし、借主は毎月末日までに翌月分を貸主指定の口座へ振り込むものとする。
賃料の支払いが遅延した場合、借主は年14.6%の割合による遅延損害金を支払う。
ポイント:
金額・支払期日・方法を明記
管理費・共益費・日割り賃料も記載
延滞損害金を設定しておくと実務的

(5)禁止事項

例文:
借主は、以下の行為を行ってはならない。
(1)本物件の無断転貸・譲渡
(2)用途変更
(3)ペット飼育(貸主の承諾がある場合を除く)
(4)騒音その他、近隣に迷惑をかける行為
ポイント:
トラブルの原因となりやすい行為を網羅
「承諾を得れば可能」と書く場合は例外規定も明記

(6)修繕等

例文:
本物件の通常使用により必要となる軽微な修繕は借主の負担とし、その他の修繕は貸主の負担とする。
ポイント:
「軽微な修繕」とは電球交換など
経年劣化は貸主負担とするのが一般的
破損原因の特定が重要

(7)原状の変更(改造・模様替え)

例文:
借主は、貸主の書面による承諾なくして、本物件の改造・改装・模様替えをしてはならない。
ポイント:
原状変更は貸主承諾必須
DIYによる穴あけ・クロス貼替などの制限も具体化すると良い

(8)立入検査

例文:
貸主は、本物件の管理上必要がある場合、事前に借主へ通知のうえ、本物件に立ち入って検査を行うことができる。
ポイント:
貸主の権利行使は「事前通知」が原則
緊急時の立入り(漏水など)も例外として明記可能

(9)借主(乙)による通知義務

例文:
借主は、本物件の損傷、設備の故障、漏水等を発見した場合、遅滞なく貸主へ通知しなければならない。
ポイント:
速やかな報告義務がトラブル防止につながる
放置による損害は借主負担とできる

(10)賃貸物件の滅失・毀損

例文:
本物件が自然災害その他不可抗力により滅失または毀損した場合、当事者は協議のうえ契約の継続可否を定める。
ポイント:
災害時の賃料減額・免除規定を設けることも多い
借主の故意・過失がある場合は賠償責任が生じる

(11)中途解約

例文:
借主は、1か月前までに書面により貸主へ通知することで、本契約を中途解約できる。
ポイント:
住居系の契約では「1か月前予告」が一般的
事業用の場合は「6か月前予告」が多い

(12)契約解除

例文:
貸主は、借主が以下のいずれかに該当した場合、催告のうえ本契約を解除できる。
(1)賃料を2か月以上滞納したとき
(2)本契約に重大な違反があったとき
(3)反社会的勢力と関与していることが判明したとき
ポイント:
滞納月数を明確化
「重大な違反」の具体例を入れても良い
催告(通知)手続を忘れずに記載

(13)原状回復義務

例文:
借主は、通常損耗および経年変化を除き、本物件を原状に回復して返還するものとする。
ポイント:
国交省ガイドラインに沿うと安心
故意・過失による破損は借主負担で明確化

(14)造作買取請求権等

例文:
借主は、貸主の承諾を得て設置した造作について、契約終了時に造作買取請求をすることができないものとする。
ポイント:
不動産賃貸では「造作買取請求権」を排除する文言が一般的
事務所・店舗契約では特に重要

(15)損害保険

例文:
借主は、本物件に係る火災保険(家財保険を含む)に加入し、契約締結後速やかに保険証券の写しを貸主へ提出するものとする。
ポイント:
火災保険は実務上必須
保険会社・補償内容まで指定する場合もある

(16)反社会的勢力の排除、連帯保証、誠実協議、合意管轄

例文(まとめ条項):
当事者は、自己または関係者が反社会的勢力に該当しないことを表明し、将来にわたりこれを確約する。
借主の連帯保証人は、本契約に基づく借主の一切の債務を連帯して保証する。
本契約に疑義が生じた場合、当事者は誠実に協議して解決を図るものとする。
本契約に関して訴訟の必要が生じた場合、東京地方裁判所を第一審の専属的合意管轄裁判所とする。
ポイント:
反社排除条項は現代の契約では必須
連帯保証人の署名押印欄を忘れずに
誠実協議条項はトラブル時の緩衝材
合意管轄を決めておくと裁判時に混乱しない

行政書士からのアドバイス

賃貸借契約は、単に「貸す・借りる」という行為を超えて、長期間にわたり信頼関係を維持する契約です。
特に個人間や中小事業者間の契約では、書面の有無でトラブル率が大きく変わります。

行政書士としては、以下の点を強くおすすめします。

契約書は両者が署名押印し、各1通ずつ保管
物件写真・現況報告書を添付
契約更新・解約・保証人の条件を具体的に記載
電子契約(クラウドサイン等)も法的効力あり

まとめ

・賃貸借契約は「使用させる義務」と「賃料支払い義務」で成り立つ
・契約書には期間・賃料・使用目的・原状回復・解除条件など基本の16項目を明記
・事前の取り決めが、後のトラブル防止につながる
・書面化・記録化こそ、安心取引の第一歩

次回予告

次回は 「請負契約と業務委託契約を正しく理解しよう」 をテーマに、
フリーランス契約で最も誤解されやすいポイントを丁寧に解説します。

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