多分これはもう我々Web業界の宿命なのでしょう。
例えば弁護士なら、多少の解釈の幅はあるにせよ、個人情報保護法は個人情報保護法です。
その元になる法律がありますから、そこはブレません。
個人情報とはの定義は法律にあります。
しかーし!
我らがウェブ業界には、その法律にあたる部分がありません。
UI/UXの定義が書いてある法律はありません。
誰でも自由に使っていい言葉です。
よって、結構あいまいな意味で使われています。
いわゆるバズワード(特定の時代や分野において流行しているものの、意味や定義が曖昧である言葉)です。
とはいえ、ざっくりとした一般的な定義は固まっています。
UI=ユーザーインターフェース
パソコンやスマホで見た際に画面上で見たり触れたりするそのデザインのこと
UX=ユーザーエクスペリエンス
利用者が商品やサービスを利用した際に得られる体験や経験
ですが、この詳細については幅が大きいです。
たとえば、UI/UXデザイナーとは何をする人なのでしょう?
これには明確な定義がありません。
そこにはウェブ業界の宿命ともいえる事情があります。
宿命1.デザイナーは法的に誰でもなれる職業
残念ながら、我らデザイン業界は弁護士先生とは違って、全員が無資格です。
弁護士なら弁護士資格がないのに「弁護士」と名乗るとちゃんと社会的に怒られます。
また仕事の範囲も決まっています。
税理士、行政書士、司法書士・・・士業のみなさん、出来る事、出来ないことがあります。
美容師もそうです。
建築士もそうです。
ちゃんと法律があり、監督官庁があります。
しかし!
われわれデザイナーはそんなもんございません。
名乗ったもの勝ちです。
あなたも今から「私はデザイナーです」と名乗ればデザイナーになれます。
それを社会的に怒る根拠はどこにもありません。
未熟なデザイナーとして評価はされるかもしれませんが、デザイナー資格はく奪だ―とはなりません。
これが、バズワードを蔓延させる要因の一つです。
我々には、職業倫理規定がないのです。
逆に言えば、そういうのが嫌いな人間が集まっているとも言えます。
新しいもの好きが多いです。
好奇心旺盛です。
他の人と違うことをしたがります。
「最新のワード!? ワクワクが止まりませんなー」という輩がいっぱいです。
「ホームページのデザイン」を「ウェブサイトのUI」と言いたくなるんです。
宿命2.拍車をかけるもう一つの無資格業コンサル
しかし、デザイナーだけならバズワードは普及しません。
そもそもデザイナーは八割内弁慶なので(私の感覚統計より)、言葉を一般社会に流布する力を持っていません。
それを強力に流布すのがもう一つの無資格職、コンサルタントです!
デザインコンサルタントとかもう「無資格×無資格」です。
「フィーリング×倫理観のない統計データ」ですwww
すいません。
口が過ぎました。
多分、僕もその一派です。
コンサルタントと書きましたが、提案型の営業をする人全般とします。この方々は基本的にバズワードが好きです。
なぜなら、定義があいまいなのに新規っぽい、そして一般の人は知らないけど専門家には広がっている。
今のらないと遅れますよーって言えちゃいます。
彼らの重要な仕事のひとつが、締め切り決めて決断を促すことです。
「乗り遅れちゃだめですよ感」は重要です。
ビジネス誌もそういう曖昧なワードが大好きです。
「これからはUI/UXの時代」みたいな見出し好きですよね。
こうなると言葉がどんどん流布されていきます。
そして一つ厄介なことに、これらのワードは正しいのです。
最初は研究熱心なところから生まれたはずです。
元々課題があったからこそ生まれた考え方です。
たとえば、見た目は超かっこいいけど操作がすごくしにくい家電製品とかありますよね。そういう所への批判や反省から生まれたものです。
デザイナー的には有名な本で「誰のためのデザイン」という、まさにUI/UX的な話の本があります。
この本の初版は1988年です。
この本の最終章は「ユーザー中心のデザイン」です。
言葉こそ違え、重要な概念として40年近くも前に提唱されています。
正しいけど曖昧。
勝手に定義を変えても誰も怒らない。
なんかみんな勝手に使って、言葉の認知度だけは上がっていく。
実に好都合です。
宿命3.そもそも定義が決められない世界
ちゃんと研究されたものなら固定された概念があってもよさそうなものです。しかし、ここにもう一つの事情が絡みます。
1988年には当然、スマホは影も形もありません。
こんなに小さな端末で外でみんなが同時にネットワークに常時接続するなんて、SFの中にも出てこない未来です。
現在で言われるUI/UXは、そういったデバイスの進化、ライフスタイルの変化に対応するものなのです。
パソコンしか知らない人は今の時代のUI/UXは語れません。
UI/UXと言われる前に、ユーザビリティ、アクセシビリティということばがバズったのを覚えていらっしゃいますか?
ユニバーサルデザインという言葉もそうですよね。
概念としてはどれも重要で、どれも非常に大切な考え方なのです。
それらはデザイナーが持っておくべき知識です。
もしデザイナーが資格職なら、全部確実に重要項目になるはずです。
なのに、世間には曖昧な言葉として広がっていきます。
それは簡単な元も子もない理由です。
その前提となる技術が、定義が定まる前に変化していくからです。
だから曖昧にならざるを得ないのです。
たとえばスマホ。
iPhoneの登場は2008年です。
当時はまだ、電車の中移動中にスマホで映画を見るのはまだまだ夢でした。
通信量が、通信速度が、容量が、それを許してくれませんでした。
それが5Gが普及した2020年代には、スマホで動画はもう普通です。
それに合わせてSNSも変化しました。
パソコン時代からのmixiからインスタ、TikTokへ。
この変化は、ひとつのデザイン対象としてはあまりに大きな前提の変化です。
そしてAIへ。
また大きく変わろうとしています。
UI/UXにかぎらず、ウェブにまつわる技術は常にそういった進化圧にさらされています。
多くの言葉が新規性を求められてバズワードになり、そして技術が変わると忘れられていく。
そういう宿命としか言いようがありません。
宿命4.技術の進化はあらゆる面で起きる
これもまたUI/UXという言葉の定義に関わってきますが、私は正直、UXの部分のエキスパートとは言えません。
そこにも技術的な変化がかかわってきます。
UI/UXの考え方の元は、おそらく道具の歴史と同じくらい長いはずです。
その片鱗は多分、石器にも見られるはずです。
広義で解釈すれば、A4リーフレットのデザインもその概念で語ることは出来ます。たとえば、チラシをどこからどう見て、何を感じ取って、そしてどう行動するか?
これはまさにUI/UXの考え方に当てはめて考えることができます。
つまり、歴史と共に積み上げられてきたものではあります。
新しい技術によって生まれて育ってきたものです。
ただ、いかんせん。
最近は変化が速いというだけです。
まず一つ言えることは、ジジババかハナタレかに関わらず、常に勉強している者じゃないと出来技術になってきてます。
ぐりんぐりん動くやつとか、プログラミングの知識も必要になってきたりするかと思えば、でプラグインで簡単に実装出来たりもします。
バシバシ動くやつを自作できなきゃUIデザイナーと言ってはいけないとなると、私はとてもじゃないけど名乗れません。
次に、もっと重要な点。
それはUXをどうやって計測するかという技術の進歩です。
ABテストやヒートマップ、後何があるのでしょう?
ビッグデータ解析?
私このあたりになるとあまり詳しくないのですが、ユーザー体験そのものも進化していますが、それを計測する技術も進化しています。
ユーザー体験って何?
それを数値化、見える化して分析するなんてことも最新技術はバシバシ進化していっています。
そこにAIが絡みだしています。
UI/UXのある部分は、デザインのノウハウだけではなく、その周辺にあるシステムや技術へのノウハウ、スキルも必要になってきます。
また、これらの技術はコストもかかるので、全ての人が導入すればよいというものでもありません。どう言うビジネスには効果的か、費用と兼ね合いが取れるかと言った、メタ的な知識も必要になってきます。
つまりUI/UXにはデザイナーの共通認識的な部分から、特別なノウハウがないと出来ない部分まで含まれています。
UI/UXできますか?は
あなた走れますか?
と同じくらい曖昧な質問です。
そして厄介なことに、これらの技術はまた、あっという間にコストダウンしていくんです。
これもウェブ業界あるあるです。
最初は何十万とか言ってた技術が、いつのまにかおまけの無料技術になっていたりします。
UI/UXが過去の懐かしワードになるのも時間の問題でしょうww
多分そのうちUI/UX診断はサーバーのおまけ機能になりますよ。
結論
●現時点では特別な技術が必要な部分も含みます。
●ただし、含意の広い言葉なので、この言葉が出てきたときには何を指しているかのすり合わせが必要です。
●高度なUI/UXは専門性があり、そしてコストもかかります。
●技術変化の過程で生まれたものなので、そのうち次の言葉が出てきます。
というところですかねー。
なかなか重要な概念でありながらも、結構ふわっふわっと使われている言葉として気になっていましたので、自分の考えを整理するつもりで書いてみました。