生徒さんが必ず学習する項目に「比喩」がある。これは日常的に使っている表現技法なので比較的みなさん抵抗なく覚えることができるようだ。ちょっとややこしいのは「直喩」と「隠喩」の区別くらいだろうか。教える方もまあまあ気がラクな項目だ。
しかしこの「たとえ、比喩」を使うにはお互いに「よく知っている」ということが前提となる。光村図書「国語1」にある「比喩で広がる言葉の世界」にあった「ドーナツ型」の図。「ドーナツ」はみんなが知っているから使える「ドーナツみたいな形」という表現。とても便利だ。でももし、「え? ドーナツって何?」と言われたらどうするか。「断面が円の管状のものの端と端をくっつけて輪にした状態・・・」とか?(笑)そう考えると、「たとえ、比喩」を使うにはその背景には共通する生活、文化、知識が必要だ。たとえば今、「ゲームの○○みたいなやつだよ」と言われたら私にはわからない。「タレントの○○のような人」なんて言われてもおそらくわからない。生活のそこここに多様化が出てきた時代、もしかしたら比喩を使う時にも相手を選ぶことが増えるのかもしれない。
比喩と言えば、上記の光村図書「国語1」に使われている、三好達治の詩。
土
蟻が
蝶の羽をひいて行く
ああ
ヨットのようだ
どうだろうか。「ヨットのようだ」はもちろん、題名が「土」というところがなんとも素晴らしい。土は大きな海原にたとえられているのだろう。地面の小さな小さな蟻の営みをみて、大きな海を思い浮かべる。驚くようなイメージの膨らみだ。さらに「ああ」という二文字が入っていることで、こんなに短い文字列から強い印象が与えられ、そこには生命の営みのもの悲しさも感じる。 大好きな詩だ。