生徒さんとの授業準備で教科書を見ていて目に留まった「オオカミを見る目」という文章がとても面白い。(高槻世紀 東京書籍「新しい国語1」)ここでは、「オオカミ」というものが、地域により、また社会情勢によりまったく違うように扱われる、ということが書いてある。昔、牧畜を基盤としキリスト教が信じられているヨーロッパでは、羊を襲うオオカミは悪魔のように見なされていた。一方で稲作の盛んな日本では、稲を食べる草食獣を殺してくれるオオカミを神として敬っていた。しかし、それが江戸時代中期に狂犬病の流行でオオカミはにわかに忌まわしい動物になり、その後明治時代には西洋の価値観が入ってきて「赤ずきん」などのお話ですっかりオオカミのイメージが悪くなった。オオカミはいつもオオカミでありながら、人間にとってのオオカミはこんなにも異なった捉えられ方をするのだということがわかりやすく書かれている。
おとなになると様々なことを経験するので、こういった価値観の危うさというか「絶対ではない」ということを理解できるが、学校で教えられたことや、大人から言われたことをそのまま吸収していく子供達には、それをこういったわかりやすい例で学べるというのはとても大事だ。著者が最後に述べているように、このことを若い生徒さんたちが「心に留めておいてくれる」ことを切に願う。