青の教室 陽子 第26話/4月15日 ――食卓の灯り――

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学び
第26話/4月15日
――食卓の灯り――

午後の青の教室は、
 昨日よりも少しだけやわらかい光に包まれていた。

陽子は、
 静かに入ってきた。
 でも、その静けさの奥には、
 今までとは違う“自分の呼吸”があった。

机に座ると、
 かばんからプリントの束を取り出す。
 昨日、仕上げてしまったイラストプリント。
 一番上には、
 ユイが笑っている。

そのユイをそっと横に置いたまま、
 陽子は自然に
 自分勉強の手を動かし始めた。

今日は、
 いつもの「一回り」ではなかった。

(これをしようかな)
(今度は、こっちをやってみようかな)

そんなふうに、
 小さな声を胸の奥で聞きながら、
 陽子は自分の思うとおりに進めていった。

昨日、ユイのプリントをしたときに
 胸の奥で灯っていた小さな光が、
 まだ静かに息をしているようだった。


***

夜。
 家に帰ると、陽斗はもう眠っていた。

美咲と陽子は、
 少し遅い夕食を向かい合って食べる。

食卓の灯りはやわらかく、
 陽子の今日の一日をそっと包んでいた。

箸を置いた陽子が、
 ふいに口を開く。

「お母さん。
 私、ちょっと自分のこと進めるのが
 できるようになってきたの」

美咲は、
 驚いたようには見えなかった。
 ただ、静かに聞いている。

「今日も、自分の思うことばかりだったけれど……
 なんていうかなあ……
 こう……これでいいのかなって」

陽子の言葉は、
 まだ形があいまいで、
 でも確かに“自分の声”だった。

美咲は、
 ゆっくりとうなずく。

「そうなの。
 それはいいことよね。
 友彦先生が言ってたわ。
 自分のリズムが大事だって」

陽子は、
 その言葉を胸の奥でそっと受け取る。

「私ね。
 心の底がなんかちがうの。
 これでいいっていう気がするの」

美咲は少し笑って言う。

「陽子も、昼寝とかするの?」

「うん」

「昼寝して、
 それで罪悪感を感じなくなったら一人前よね」

陽子は、
 思わず顔を上げた。

「……お母さん」

その声は、
 驚きと、
 嬉しさと、
 少しの安心が混じっていた。

陽子は嬉しかった。
 認めてもらえた気がした。

食卓の灯りが、
 陽子の胸の奥の小さな光を
 そっと照らしている。

陽子には、
 その灯りが
 友彦の青と似た光り方をしているように思えて、
 まるごと全部が、
 じんわり温かくなった。

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