僕は、25歳の時に記憶喪失になった。
いまでもその時の記憶は鮮明にある。
あの日もいつもの朝だった。
仕事へ出かける前だった。
いつも通りに起きて、朝のルーティーンをこなす。
嫁と息子が起きてくる前に支度を済ます。
いつもの毎日を過ごすはずだった。
トイレでの用を済ませ、立ち上がろうとした次の瞬間に「それ」は来た。
急に右手がしびれて動かなくなり、
右の首筋から脳のてっぺんにしびれと電気のような激痛に襲われた。
右顔面にも同じような電気的激痛が走った。
ヤバい!!!
その瞬間、全身が硬直してしまっていた。
意識はあるが体が全く動かない。
僕は、硬直したまま床に倒れた。
助けを呼ぼうにも全く言葉が出ない。
体がピクリとも動かない。
ものすごい恐怖が襲ってきた。
次第に目の前が真っ暗になってきた。
そして、何も聞こえなくなった。
目が覚めたとき、僕は救急隊員の人に質問を受けていた。
救急隊員:「ご主人わかりますかー」
救急隊員:「ご主人わかりますかー」
救急隊員:「ご主人わかりますかー」
何か言ってるのが聞こえてきた。
救急隊員:「ご主人わかりますかー」
僕:「えっ、あっ、はい・・・」
救急隊員:「ご主人、ここがどこかわかりますかー」
僕:「えっ、ここですか?」
僕:「えーっと、ここはどこですか?わかりません。」
僕は、この時、家のリビングにいた。
救急隊員:「では、ご主人、自分が誰かわかりますかー」
僕:「えっ、僕ですか?」
僕:「えっ、・・・わかりません・・・」
救急隊員:「では、ご主人、自分の名前わかりますかー」
僕:「えっ、僕の名前ですか?」
僕:「僕の名前は、・・・僕の名前は、・・・わかりません・・・」
この時、嫁は息子と共に泣いていた。