「教育史点描~最後に残るのは「教育」である~⑤」

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(3)「宗教教育」と「世俗教育」の分岐点はどこか

①教育は基本的に「宗教教育」だった

教育は教会や寺院が担った~中世ヨーロッパでは「唱歌学校」(初等教育機関)、「修道院学校」「本山学校」(中等教育機関)といった「教会学校」が教育を担い、日本では「寺院」が長らく高等教育機関で、後に「大学」「国学」「別曹」などが官僚養成機関として整備されていきました。江戸時代には「昌平坂学問所」「藩校」「私塾」「郷校」が中等・高等教育機関で、「寺子屋」が初等教育を担いました。

ユダヤ人の教育~「教育」を意味するヘブライ語「ヒヌーク」は「奉納・奉献」も意味しています。ちなみに世界の政治・芸術・科学・思想の各界で指導的役割を担っている人物の10人に1人はユダヤ人とされ、その教育熱心さには定評がありますが、ユダヤ人にとって、「教育」とは知識の伝授ではなく、「神と社会とに貢献できる人材の育成」が目的であると言います。ここから少人数教育、全身学習法、聖書やタルムードの丸暗記・暗誦、安息日、歴史教育、実業教育といった伝統が出て来ます。

「普通のユダヤ人の中にも、旧約聖書全部をヘブライ語で朗々と暗誦できる者が少なくない。タルムード学者の中には、あの膨大なタルムードを全巻暗記している者さえいる。彼らは明らかにリズムと朗詠によって膨大な量のテキストを頭脳にプリントしたのだ。だから、記憶の糸をたぐる時には、適当な章句の区切りから暗誦し始めて、お目当ての特定の句や文が出てくるまで聖書なりタルムードなりを唱詠し続ける。こういう芸当のできる者が二、三人もいれば、聖書が手もとになくても、正確なテキストがいつも入手できる。
 私の恩師へシェル博士も、そういう卓越した記憶力の持ち主だった。ある時、弟子の一人が非常に貴重な本を持ってきた。相次ぐ迫害のためにユダヤ教の多くの典籍が失われてきたが、その中から残った数少ない貴重本だったのである。ブルックリンの古本屋はそれを譲ってくれと申し出た。イーストサイドの本屋は、それを写真に撮って再版しようと持ちかけてきた。へシェル博士は、その本を弟子から二、三日借り受けた。そして読み終わると、『いや、どうも有難う。もう全部頭にはいったよ』と、先生は丁寧に礼を言った。彼にはその本を所有することも複写することも必要なかったのだ。」
(手島佑郎『ユダヤ人はなぜ優秀か その特性とユダヤ教』)

「ルリエ氏は今ではエルサレムに大邸宅を構えている富豪だ。彼は一六歳になった時、父親は彼をロンドン留学に出した。出発に際して、父親は息子に百ポンドを留学費用として渡しながら、こう言った。『いいかね、これが君の留学を賄う全費用だ。ただし、留学中にこの百ポンドを使ってしまわないことだ。四年後に君が帰ってくる時には、そっくり百ポンド返してくれ』
 ルリエ少年はどうしたであろうか。彼はロンドンに着いて、しばらくあれこれと名案を考えた。やがて彼はその金の一部を投資して株に手を出した。四年後にロンドン大学経済学部を卒業する時には、彼はもう株式市場の専門家になっていた。」
(手島佑郎『ユダヤ人はなぜ優秀か その特性とユダヤ教』)

ドイツの教育の目的は「信仰心」と「愛国心」を育てること~ドイツ憲法の前文は「神と人間に対する責任を自覚」することから始まっており、教育の目的を規定したバーデン・ヴュルテンベルク州憲法第12条は、子どもが「神に対する畏敬とキリスト教的隣人愛」と「国民と祖国に対する愛」の中で教育されなければならないと定められています。また、基礎学校(小学校)では週2時間、「宗教」の授業がカトリックかプロテスタントの宗派別に実施されており、始業式や卒業式では必ずミサや礼拝が行われ、学校の休日は復活祭などキリスト教の主要な祭日を中心に設定されているのです。

「宗教教育は、公立学校においては、非宗教的学校を除き、正規の教育科目とする。宗教教育は宗教団体の教義に従って行なうが、国の監督権を妨げてはならない。」
(ドイツ憲法第7条第3項)

イギリスの「宗教教育」~毎週、宗教の授業が行なわれ、英国国教会のキリスト教に基づき、教師が聖書を講読したり、生徒が讃美歌を歌ったりします。パブリック・スクール(名門私立中学校)でも、生徒は寄宿舎(ハウス)で全人的な教育を受けつつ、校内の礼拝堂では毎日礼拝が行われています。イートン校の礼拝堂などは観光名所にもなっています。

フランスの「宗教教育」~フランスは政教分離に厳格ですが、毎週水曜日が「宗教教育の日」に指定され、家庭における宗教教育に充てられています。

タイの「宗教教育」~学校には大きな仏像が安置してあり、登校時には生徒は必ず仏像に向かってお祈りをし、僧侶が説教をする仏教教育も行なわれています。

インドネシアの「宗教教育」~世界最大のイスラーム教国家であり、必修カリキュラムの筆頭に「宗教」が掲げられています。教育文化省所管の「普通学校」(スコラ)以外に、宗教省所管の「イスラーム学校」(マドラサ)があり、イスラーム教の「寄宿塾」(ポンドック・プサントレン)で起居しながらイスラームの教育を受けている生徒も多いのです。

【参考文献】
『ユダヤ人はなぜ優秀か その特性とユダヤ教』(手島佑郎、サイマル出版会)
『日本国民に告ぐ 誇りなき国家は、滅亡する』(小室直樹、ワック出版)
『教職のための教育史 西洋編』(溝口貞彦、東研出版)
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