There is a tide in the affairs of men.(人間のすることには潮時というものがある。)
Time and tide wait for no man.(歳月、人を待たず。)
「恒産なければ因りて恒心なし(定まった財産や生業が無ければ、定まった正しい心も無い)。」(孟子)
「第一条 独立の気力なき者は国を思ふこと深切ならず。
第二条 内に居て独立の地位を得ざる者は外に在て外国人に接するときも亦独立の権義を伸ること能はず。
第三条 独立の気力なき者は人に依頼して悪事を為すことあり。」(福沢諭吉『学問のすゝめ』)
在学中は親の援助を受けている人がほとんどですが、この期間に「自立」の準備をしなければなりません。「自立」には、精神的自立、経済的自立、社会的自立の3段階がありますが、最低でも第1段階、できれば第2段階に部分的には入っておきたいところです。「自立」の反対は「依存」であり、これは多くの面で人の成長を妨げます。自立・独立のないところに結婚はなく、また家庭なくして社会的貢献も難しいところです。
ここではユダヤ人の教育における「自立」についてみてみましょう(手島佑郎著『ユダヤ人はなぜ優秀か その特性とユダヤ教』より)。
ルリエ氏は今ではエルサレムに大邸宅を構えている富豪だ。彼が十六歳になった時、父親は彼をロンドン留学に出した。出発に際して、父親は息子に百ポンドを留学費用として渡しながら、こう言った。「いいかね、これが君の留学を賄う全費用だ。ただし、留学中にこの百ポンドを使ってしまわないことだ。四年後に君が帰ってくる時には、そっくり百ポンド返してくれ」
ルリエ少年はどうしたであろうか。彼はロンドンに着いて、しばらくあれこれと名案を考えた。やがて彼はその金の一部を投資して株に手を出した。四年後にロンドン大学経済学部を卒業する時には、彼はもう株式市場の専門家になっていた。
日本はまれに見る母性社会なので、なかなかこのような教育はできるものでもありませんが、自分自身がこうした自立志向・独立志向の意識を持つことは大変重要です。
【ポイント】
①精神的自立が「自立」の第一歩。
親から受けた恩は一生かかっても返すことができません。「親への恩返しは子にするもの」と割り切って考えるべきでしょう。親から受けた以上に子に与え、それをもって恩返しとするものです。それをふまえた上で、「親の願いは子供が幸せになること」という事実をはっきりと認識しておきましょう。例えば、自分の夢・理想が親の願いと食い違うことが往々にしてありますが、安易に親の言う通りにして、結果として自分が不幸になった場合、親を責めるのは酷というものです。なぜなら、親は子供のためによかれと思ってアドバイスし、反対したに違いないからです。したがって、子供の立場からすれば、自分が一番納得のいく、自分がこれで幸せになれると思う道を行くべきです。一時的に親の理解が得られず、葛藤が生じるとしても、「最終的に自分が幸せになって喜んでいる姿を見れば、親も必ず喜んでくれる」と信じるべきなのです。子が不幸になって苦しむことを願う親はいないのであって、子は真剣に自分が幸福になれる道を追及すべきです。それが結果として親の幸福にもつながるのであり、まかりまちがっても責任転嫁をしてはならないのです。子供の幸せを願う親の心を信じて、自分の信念を貫きましょう。これが精神的自立の第一歩です。
「親思ふこころにまさる親ごころ けふの音つれ何ときくらん」(吉田松陰「永訣の歌」)
②経済的自立が「自立」の基本。
親からの援助を脱することが「自立」の最眼目の1つです。なぜなら、やがて結婚して家庭を持つようになれば、法的にも親から独立した世帯となり、それ自体の生計の維持が要請されるからです。といっても、在学中に出してくれるという援助を敢えて押し留め、自立に向けて無理をする必要はありません。そうすることによって得られなくなるものも多いとすれば、援助は受けた方が賢明です。要はバイトやビジネス・キャリアの開始をもって、経済的自立に向けてスタートを切ると考えたらよいでしょう。
③社会的自立は「自立」から「社会貢献」への道。
社会的自立は家庭を土台とします。もちろん、個人として大いに社会貢献をする人もあり、絶対とは言えませんが、個人としての意識と家庭人としても意識は自ずと違う所があり、普通の家庭人は偉大な個人に匹敵すると言えるかもしれません。社会で必要とされる存在になること、それは個人の自立抜きには考えられませんし、社会は家庭の延長であることから、家庭の基盤が無いよりはあった方がよいでしょう。経験や見聞の及ばないことはなかなか自分の問題となりにくいものです。