Do not put all your eggs in one basket.(卵を全部1つのカゴに入れるな。宝は分散せよ。)
Better be the head of a dog than the tail of a lion.(ライオンの尻尾となるより、犬の頭になる方がよい。「鶏口となるも、牛後となるなかれ。」)
世の中、お金が全てではありませんが、お金があれば相当数の問題が片付くのは事実です。お金はあるに越したことなく、「資産形成」と「資産運用」の技術は誰もが取り組むべきテーマであると言えるでしょう。実際にお金持ちになろうとすれば、最終的にはサラリーマンやOLのままで目標を達成することは不可能です(目標にもよりますが)。といってコミュニケーション・ビジネスなどをサイドビジネスでやればいいかというと、これはこれに専念しない限り(あるいは専念する人材を立てない限り)、一定レベル以上の展開は不可能です。ましてや独立して会社を興すとなると、経営能力その他の資質が不可欠となってきます。
ちなみに会社を作ること自体は以前に比べて簡単になりましたが、起業するのは「節税」「信用」「資金調達」などの面でメリットがあるからで、そうでなければ個人事業でいいわけです。一般的に個人が起業するためには、①差別化できる技術、②顧客基盤、③6か月は収入ゼロでも運転できる回転資金、の3つが必要とされます。しかも学生起業家というのもカッコいいですが、人の上に立って、人を動かすことを考えると、少なくとも3年は一般の会社に入って、ビジネスの現場を知っておいた方が無難でしょう。これに対して、一番スムーズな起業は会社の一部門のスピンオフで、そこのリーダーが社長、スタッフが社員となり、顧客も継続され、親会社とも良好な関係が維持できるので、最もリスクが低いと言えますが、誰でもできるわけではありません。
したがって、誰でもどの立場からでも開始できる資産形成法の1つとして、投資技術・金融技術が浮上してきます。1番簡単なものは貯金で、かつてはこれが主流でもありましたが、今の日本ではほとんど無意味です。サラリーマンやOLが資産形成をするのは株式投資が手っ取り早く、デイトレードでたった30万円の元手を、わずか2年で3億円を稼ぎ出した大学生もいます。これは意識ある人であれば、10代、20代のうちに着手する値打ちがあると言えるでしょう。アメリカでは早ければ小学生のうちから投資に関わっており、高校生ともなるとスマホで投資するのが普通に行なわれています。
例えば、かなり昔になりますが、弱冠17歳にして利回り34%の株式投資実績を上げ、ウォール・ストリート紙が絶賛した高校生投資家がいました。その名はマット・セト。15歳の時に2万3,000ドルを元手に「マット・セト・ファンド」を開設し、以来、30%以上のリターンを毎年確保しているというから驚きです。参考までにマット・セトの挙げる投資法則を列挙してみましょう(『天才少年投資家マット・セト 108の法則』より)。
法則1: 勉強抜きで株を買ってはいけない。
法則2: 自分自身の詳細な投資目論見書を作る。
法則3: 投資金額の多少に関係なくベストの利潤を追求する。
法則4: 成功する投資は健全なアプローチとなる。
法則5: 自己啓発・自分で考える・論理的に。
法則6: 業績のいい会社の株は上がる。
法則7: 「その会社の製品が気に入れば、その会社の株もまた気に入る。」
法則8: 投資理論は数学方程式ではない。
法則9: 儲かっていない会社には誰も投資しない。
法則10: 勝つために必要なことを確実に実行する。
法則11: 他人の意見に惑わされないこと。
法則12: 小さな発見が成功をもたらす。
法則13: 人の意志決定のプロセスこそヒントになる。
法則14: 暴落はまたとない買いチャンス。
法則15: 長期保有が財をもたらす。
法則16: 忍耐は美徳なり。
法則17: 株価の上昇は歴史的傾向である。
法則18: 株選びに「完璧な手法」はない。
法則19: テクニカル分析は長期保有には効果的ではない。
法則20: 「発展途上の初期段階」や「破産状態」の会社の株はタブー。
法則21: 株をギャンブルと考えるなら、結果もギャンブルと同様になる。
法則22: 合理的とはいえない執着は失敗の始まり。
法則23: いい会社の株は投資対象株としてもいい。
法則24: 消費者の目で会社の良し悪しを判断する。
法則25: 苦労して競争に勝ち残った会社がベスト。
法則26: 毎日の暮らしの中に成功のヒントがある。
法則27: 消費者を満足させる方法を知っている会社かどうかがポイント。
法則28: 流行に乗って業績を伸ばしているだけの会社は要注意。
法則29: 永続的な需要のあるモノを持つ会社は良い会社。
法則30: いい株を選ぶ方法は1つではない。
法則31: 「一番いい方法」より、もっと「いい方法」はないか。
法則32: 基礎的な情報収集に金を掛けない。
法則33: 必ず競合する会社のことも調べる。
法則34: 消費者はどの情報を基準にモノを買っているか。
法則35: 有価証券報告書は参考にしづらい。
法則36: 財務諸表のチェックで経営者の質を見極める。
法則37: 電卓は必需品。いつでもどこでも肌身はなさず。
法則38: 情報は多ければ多いほどいい。
法則39: 簡単明瞭で優れた格言「安く買って、高く売る」。
法則40: 数学を把握していれば自信が生まれる。
法則41: 株選びに必要なのは簡単な算術。
法則42: 在庫レベルの変化に注目する。
法則43: キャッシュ・フローを生み出し、蓄えている会社。
法則44: 1株当たりの現金が多いほど株は魅力的。
法則45: チェック、1株当たりの純資産額。
法則46: 技術革新型企業の資産=創造力。
法則47: PER(株価収益倍率)はもっとも理解し易い数字。
法則48: PER予測数字は当てにならない。
法則49: 金利レベルが相場の大まかな枠組みを決める。
法則50: 成長率の高い会社で問題のない会社を探す。
法則51: 「信用売り残が多い」株は買い検討に価する。
法則52: 配当回りでは株を買わない。
法則53: 株を買わない理由を徹底的に探してみる。
法則54: ROE(自己資本利益率)は10%から15%ほしい。
法則55: PERに明確な判断基準を設定する。
法則56: 自分は成長株投資派か、割安株投資派か。
法則57: トップ・ダウン法よりボトム・アップ法がいい。
法則58: 長期間にわたり、市場予測に成功した人はいない。
法則59: 市場に駆けめぐる噂や迷信の類には耳を貸さない。
法則60: 「他人の予想は聞き流しなさい。」
法則61: 自分の直感を大切にする。
法則62: 資金別で証券会社=ブローカーを選ぶこと。
法則63: 投資助言は世の中に溢れている。
法則64: マスコミ情報のうのみは負け相場への一本道。
法則65: 自分の頭脳を使って株を買う。
法則66: 感情が理性より先走ってはいけない。
法則67: 「自信」こそが成功する投資態度の一部。
法則68: 小口投資家は「カモ」にされ易い。
法則69: 個人投資家はベストの価格で新規公開株を買えない。
法則70: 要注意。小口投資家は貧乏くじを引かされる。
法則71: 新規上場株を買えないのはかえって幸せなこと。
法則72: 「買いの決断」に比べ、「売りの決断」は単純明快。
法則73: 25%から30%上がるまで売らない。
法則74: 単なる株価の下落を売却の理由にしてはならない。
法則75: 自分の判断を信じる「自制心」。
法則76: 優良会社の株は急激かつ一時的にブレる時がある。
法則77: 分散投資はアテにならない。
法則78: 分散投資のすすめはプロの言い訳。
法則79: 最高の銘柄を買いなさい。その他のものは忘れなさい。
法則80: アセット・アロケーションは「株式50」「債券50」がベター。
法則81: 長期投資なら株に絞る。
法則82: 小口投資にはドル・コスト平均法がベター。
法則83: 顧客サービスのいい会社は成長する。
法則84: 社員についての会社の方針を参考にする。
法則85: 個別企業の強みと弱みを徹底研究する。
法則86: 株価と簿価の比較で当たり株を発見する。
法則87: 少し遅めの買い出動でも儲けられる。
法則88: 長期的視点で考えるなら短期的株価変動は無視する。
法則89: 「上がるものはいずれ下がる。下がるものはいずれ上がる。」
法則90: 消費者が最終的に何を好むか。
法則91: 株は「教育的」で「スリリング」、そして「高利益」をもたらす。
法則92: 「長期間投資」「分散投資拒否」が合言葉。
法則93: 自分の利益につながる利害を持つ投資信託を探す。
法則94: 自分が求めているファンドのタイプは何なのかを明確に。
法則95: 「バックミラーで将来を見ることはできない。」
法則96: ファンド・マネージャーの良し悪しを見極める。
法則97: 自分の目的をハッキリさせる。
法則98: ファンドのリスク分析には目を通すこと。
法則99: 「投資価値をどこに求めるか」で投資手法を選択。
法則100: 投資手法の併用はリスクが多い。
法則101: 「直感を数字で補う」「数字を直感で補う」
法則102: 株価は景気に対し先行する。
法則103: 株価は投資家心理に左右されがちなもの。
法則104: 儲け話には危険がつきもの。
法則105: 確率の高い儲けを選びなさい。
法則106: 上昇への兆しを見抜く目がありますか。
法則107: 「クレヨンで描けないアイディアに投資するな。」
法則108: 成功する秘訣は「自分自身で考えること」。
さらに著名かつ重要な経済学者の中で、投資に成功した人物として、リカードとケインズが挙げられますが、そのうちケインズが20年近くに及ぶ、様々な失敗を含む経験をふまえて、「成功する投資」のための「3原則」として「覚書」(ケンブリッジ大学の正会計官としてカレッジの資産委員会に提出した、「投資政策の総括」と題されたもの。『実務家ケインズ ケインズ経済学形成の背景』より)にまとめたものが次の3点です。
(1)ごく少数の投資を慎重に選択すること。この場合、現在の価格水準を、過去数年にわたる実際のあるいは潜在的な価格推移との関連、並びに現時点での他の代替的な投資対象との関連で、充分考慮すること。
(2)選ばれた少数の銘柄を、かなりまとまった金額単位で、価格の消長にかかわらず、成否の結果が明らかになるまで―多分数年間にわたるであろう―しっかりと持ちつづけること。
(3)バランスのとれた投資ポジションをもつこと。すなわち、個別銘柄の金額は大きくても、リスクの分散を図ること。できれば、反対方向に動くようなリスクでカバーすること。(たとえば、金鉱株を他業種の株の中に入れておけば、一般的な相場変動の場合、両者は反対方面に動く傾向があるといった具合に。)
【ポイント】
①知能派は「投資」、行動派は「起業」に取り組んでみましょう。
「投資」は学ばなければならないことが多く(学ばずにやればバクチになります)、一種知的ゲームのような様相もあるため、「知能派」向きかもしれません。自分で事業を興し、会社を経営してみたいという「行動派」は学生時代から「起業」をテーマとすべきです。いずれにせよ、会計、簿記、投資、経営など全般的なファイナンシャル・インテリジェンスを高める努力が必要です。
②経済的ニーズが満たされれば、敢えて会社に入る理由は無いのです。
はっきり言って会社に入るのは「経済的理由」があるからです。昔のような「モーレツ型会社人間」が絶滅しているに等しい現代にあっては、「会社が生きがい」という人は少ないでしょう。会社は生計を得る手段と割り切って、生きがいは他に求めるケースが圧倒的です(もちろん、会社の仕事にやりがいや意義が感じられないと、続けることができないのは言うまでもありません)。したがって、経済的ニーズが満たされれば、誰も好き好んで時間・空間を制約される会社に入る理由が無くなってくるのです(もちろん、会社で「仕事の基本」を学ぶというメリットは否定できません)。これに気づけば、「投資」「起業」を学ぶ意義も見えてきます。
ちなみにアメリカではすでに顕著ですが、いざお金持ちになった場合、あくせく働かなくてもよくなった場合、何をするかというと、多くの人がボランティアに取り組むというのです。自分の生活の心配が無くなると、今度は「社会に役に立つことがしたい」「誰かの役に立ちたい」という、より高次の社会的欲望が出てくるわけです。これは人間の本心でもあるのでしょう。