Heaven helps those who help themselves.(天は自ら助くる者を助く。)
日本の社会は「学歴社会」、それも「最終学歴主義」であることは論を待ちませんが、少しずつ「学歴よりも即戦力」「ブランド・ネームよりも資格・実力」といった風潮が出始めています。東大・早稲田・慶應といったトップ・グループなら、研究室などに指定席があり、「座して待つ」ということもあり得ます。「学歴不問」を掲げる大企業でも、ちゃんとこうした指定枠を押さえた上で、こうした宣伝文句をうたっているのです。しかし、中堅以下の大学ならネームに頼ることなく、自分で自分を磨き、売り込みをかけていくぐらいの心意気が必要です。
今はネット求人も盛んなので、昔のように何十社にも資料請求し、OBと会い、面接試験を重ね、内定を取っていくというプロセスの前に、ネットでエントリーした段階で蹴られるということも増えてきました。早々と内定が決まる人と、何十、何百社回っても全然決まらない人と、二極化傾向も起きています。つまり、在学中に何をしてきたのか、どんなことができるか、どんな資格を持っているのか、どういう仕事をしたいと考えているのか、こういったことが問われてくるのです。昔のように体育会に入って、幹事とか役をやっていると有利といった時代は過ぎ去りました。在学中からネット・ビジネスに携わり、起業する人物も出てくる中、資格志向、実力志向はますます強まってきていると言ってもよいでしょう。
資格は在学中には取りやすくても、社会に出てから改めて取ろうとすると大変で、取れる資格は極力取っておきたいものです。ダブル・スクールは今では当たり前のようになってきました。また、留学制度があれば短期・長期を問わず、それに参加し、職歴・キャリアもすでに手をつけられるものなら手をつけておきたいところです。在学中は「最大の自己投資期間」ですから、これを有効に活用しましょう。
【ポイント】
①語学系なら英検、国連英検、TOEIC、TOFEL、IELTS。
【英検(実用英語検定)】知名度が最も高く、5級から1級まで年間400万人以上が受験しています。履歴書に書けるのは2級以上であり、英語力としての評価対象は準1級以上でしょう。英語圏に1年以上留学していた人が帰国してから英検1級を取るのが普通でしたが、最近では留学経験のない高校生から小学生に至るまで、英検準1級・1級に合格するケースが増えてきました。
【国連英検】「真に役立つグローバル・コミュニケーション能力」を育成することを目的に実施されており、試験に出題されるテーマも国連の活動に関連したものが多いのが特徴です。特A級からE級まで6ランクに分かれており、上級レベルになると国際関係・国際政治などの問題意識や判断力も問われてきます。
【TOEIC】トーイック。国際コミュニケーション・ツールとしての英語力を10~990点のスコアで判定されます。160か国以上で行われているグローバルスタンダードな英語の試験です。社会的な信頼性も高く、日本では3,000以上の企業などで利用されています。ビジネス英語としての評価は英検以上です。
【TOEFL】トフル。アメリカの大学・大学院に留学する際に、授業についていけるかどうかを判定することを目的としたテストで、アメリカ留学の第一関門です。iBT(アイビーティー、Internet-Based Testing)というComputer Based Testingで、0~120点のスコアとして判定され、世界160か国以上、11,500以上の大学・機関において、入学選考、奨学金選考、海外派遣選考や単位認定など様々な場面で英語力の証明として利用されています。
【IELTS】アイエルツ。世界140か国、10,000以上の機関で認定されている4技能英語テストのグローバルリーダーです。世界で年間300万人以上が受験しています。
②会計系なら簿記。
【簿記検定】日商簿記検定は簿記検定の中でも最も有名なものであり、年間受検者数が50万人以上となっています。中でも日商簿記検定1級は、税理士や公認会計士を目指している人達の登竜門となっている難関資格です。
【公認会計士】弁護士・医師と並ぶ三大国家資格として知られ、経理・会計分野の最高峰の資格で、監査、税務、コンサルティングの3つが主要な仕事です。試験は2段階で、「短答式」(マークシート)で財務会計論(簿記・財務諸表論)、管理会計論、監査論、企業法(商法等)が出題され、「論文式」で必須科目が会計学(財務会計論・管理会計論)、監査論、企業法、租税法が出題、選択科目では経営学・経済学・民法・統計学から1科目選択することになります。その後、2年以上の業務補助、3年間の実務補習を経て、日本公認会計士協会主催の「修了考査」に合格してから、公認会計士としての登録が可能になるのです。
【税理士】企業や個人に対して、法人税や所得税など各種税金の納税のアドバイスや申告書の作成をすることが主な仕事内容です。「会計学」の簿記論、財務諸表論の2科目が必修で、「税法」の所得税法、法人税法、相続税法、消費税または酒税法、国税徴収法、住民税または事業税、固定資産税の9科目のうち、3科目を選択することになります(所得税法と法人税法のどちらかは必修で、2科目選択することもできます)。「科目合格制」を採用しているため、何年かかってもかまわず、1年に1科目ずつ取っていくこともできるので、社会人向けの資格と言えます。
【不動産鑑定士】不動産の経済的な価値を判定し、価格として表す「不動産の鑑定評価」を行うのが主な仕事です。短答式試験では行政法規と鑑定理論、論文式試験では民法、会計学、経済学、鑑定理論(論文、演習)の5科目。公認会計士2次試験合格者は会計学が免除され、さらに論文試験で経済学と民法を選択していれば、同じ2科目が免除されます。
【中小企業診断士】経営コンサルタントに関する唯一の国家資格であり、中小企業(日本の会社の99%は中小企業)を対象に、財務、労務、仕入れ、生産、販売など経営全般にわたる診断、指導を行なう。ただし、「経営コンサルタント」は無資格でも名乗ることができ、繁盛している個人事務所も少なくないといいます。また、地方公務員であれば中小企業大学校が実施する養成過程を修了すれば、国家試験を受けることなく取得できます。ただし、この資格には、地方自治体などの依頼に基づく中小企業の公的診断しか独占的な業務はなく、しかも日当はかなり安いため、これだけで事務所を維持するのはとてもできません。また、鉱工業、商業、情報の3分野から選ぶことができますが、商業以外での独立は難しいと言われています。
【社会保険労務士】労働社会保険諸法令により行政機関への提出が義務付けられている帳簿や書類の作成、提出代行、相談、指導を行なう労務のエキスパートです。
③法務系なら法学検定。
【法学検定試験】ベーシック(基礎)コース(旧4級)は法律学の基本である法学入門・憲法・民法・刑法に関する試験で、スタンダード〈中級〉コース(旧3級)は法学一般・憲法・民法・刑法、及び選択科目(民事訴訟法・刑事訴訟法・商法・行政法)から1科目を当日選択します。アドバンスト〈上級〉コース(旧2級)は法学基礎論・憲法・民法・刑法、及び選択2科目を受験します。法学基礎論は「法哲学・法社会学・日本法制史・司法制度論・法的思考の基礎・比較法などから選択し、選択科目は民事訴訟法・刑事訴訟法・商法・行政法・労働法・倒産法・経済法・知的財産法などからの選択になります。
【司法試験】日本における国家資格の最高峰。これに合格しないと、「法曹三者」(裁判官・検察官・弁護士)になれません。アメリカでは法学・経営学・医学の分野では大学院で高等専門教育を行なうシステムになっており、日本でもこれにならった法科大学院(ロースクール)課程の修了者及び司法試験予備試験の合格者に受験資格があります。試験は「短答式」で憲法・民法・刑法、「論文式」で公法系科目として憲法・行政法、民事系科目として民法・商法・民事訴訟法、刑事系科目として刑法・刑事訴訟法に加え、選択科目として知的財産法、労働法、租税法、倒産法、経済法、国際関係法(公法系)、国際関係法(私法系)などがあります。
【司法書士】登記業務や供託業務を独占業務とし、法務局、裁判所、検察庁などに提出する書類を作成します。その仕事の8割は不動産登記に関するものですが、個人訴訟の背後には必ず司法書士がいるとされ、弁護士の少ない地方では「街の弁護士」として様々な形で活躍する人が多いのです。司法試験のように法律的な解釈論や適用などの能力は業務上問われることがなく、問題で問われるのは司法書士としての事務処理能力であるため、司法試験を天才・秀才型の論理展開型試験とすれば、司法書士は努力によって知識を積み上げていく実務能力型試験であるとされます。試験科目は憲法・民法・商法・刑法・民事訴訟法・民事保全法・民事執行法・司法書士法・供託法・不動産登記法・商業登記法で、地道で根気さえあればいつかは合格できる試験です。したがって、法律に興味はあるが、とても司法試験は自信が無いという人に向いています。独立開業後は安定した収入が期待できる他、定年もありません。
【行政書士】司法書士は登記または供託に関する手続きの代理が業務の中心であるのに対し、官公庁に提出する許認可等の書類の作成やその手続の代理を行うのが中心です。「街の法律家」どころか弁護士もどき、トラブルシューターとしての役割も担うことができます。
【弁理士】特許、実用新案、意匠(デザイン)、商標などの工業所有権に関して、調査・鑑定から特許庁への出願・申請を代行し、「理系の弁護士資格」とも言われています。ちなみに特許庁の審査官または審判官として、通算7年以上の審査ないし審判の事務に従事した人は弁理士になることができます。
④国際系資格は人気沸騰中。
【米国公認会計士(CPA)】国際会計基準の導入により、にわかに注目を集めています。筆記試験は財務会計、ビジネス環境及び概念、法規、監査・証明の4科目で、まず受験する州を決め、その州での受験資格を取得し(大体、4年制大学卒及び会計単位条件に加え、大学での総取得単位数が120~150単位であることが要求されます)、筆記試験を受けることになります。
【米国税理士(EA)】州単位の資格である米国公認会計士と違って、連邦政府から交付される免許なので、州に制約されることなく、業務を営むことができます。受験資格がなく、東京でも受験が可能で、次のような分野で活躍が期待されています。
(1)日本企業の海外投資及び海外進出に関わる税務業務。
(2)米国企業の対日投資及び日本進出に伴う、二国間にまたがる税務業務。
(3)日本在住の米国人の米国への納税申告関連業務。
(4)米国在住の日本人の米国への納税申告関連業務。
(5)二国間税務コンサルティング業務。
【ファイナンシャル・プランナー(AFP・CFP)】個人のライフプランに応じた資産設計をアドバイスする専門資格。各種のスクールで認定講習を受けた後、試験に合格すればAFP(基礎資格)になることができます。これで日本ファイナンシャル・プランナーズ協会に登録され、これは2年ごとに15単位の継続教育を受けて更新されます。さらに上級資格であるCFP(日本語で受験できる唯一の国際資格です)に合格すれば国際的に通用する立場となり、独立も可能となります。やはり2年ごとに30単位の継続教育を受け、資格更新となります。
【MBA(経営管理学修士)】ビジネスリーダーに必要な学際的スキルを身につけるもので、特にハーバード・ビジネススクールは「資本主義のウェストポイント」と呼ばれ、世界から最優秀の人材を集めて教育し、各界に送り出しています。総体的評価としてアメリカの経営大学院(ビジネススクール)トップ20の優位は揺ぎなく(アメリカの大学は玉石混交ですが、大学院は世界最高水準のレベルを誇っていると言っても過言ではないでしょう)、これらのいずれかを卒業できれば、まず将来は約束されたようなものです。
⑤情報系の基本からプログラマーまで。
【ITパスポート試験】情報処理技術者試験のうちの一つで、ITに関する基礎的知識を証明する入門レベルにあたり、近年では年間20万人が受験しています。
【MOS(マイクロソフト・オフィス・スペシャリスト)】Word、Excel、Powerpoint、Accessのアプリケーションスキルを証明するものです。 こうしたスキルはビジネスにおいて必須になってきているため、履歴書などにかける資格として人気のある資格となっています。
【基本情報技術者試験】独学では難しく、専門学校で勉強する必要がありますが、これを取得すればプログラマーとしての社会的評価が得られ、情報関連業界でつぶしがきくでしょう。
⑥教員免許も取りましょう。
【教員免許】教員免許だけなら、大学で教職単位を揃え、教育実習に行けば自動的に取得できます。卒業後に改めて取ろうとすると、けっこう手間ひまかかるので、取れる時に取っておきましょう。教育実習の貴重な体験となるものです。実際になるには各都道府県で教員採用試験を受験しなければならず、これは専門予備校で準備しなければ難しいのが現状です。
【司書】公立図書館等で図書資料の選択・購入、図書案内や指導などを行います。教員免許同様、単位を揃えれば取得できますが、大学・学部の設定によるので、確認が必要です。また、最近では学校図書館司書教諭(学校図書館の専門的職務を行う)のニーズも高まってきました。
【学芸員】博物館・美術館等で資料の収集、保管、調査研究などを行います。単位取得によって資格が発生しますが、実務経験からの道もあります。
⑦普通自動車免許は絶対必要です。
【普通自動車免許】取得すれば小型トラック(2トン~3トン)まで運転できます。つまり、少々の引越しなら、自分でレンタカーを借りてでもできるということです。卒業までに必ず取得しておきましょう。自動車学校は厳しいという評判の所を選んだ方が無難です。学科を落とすのはいただけませんが、実地を落とすのは止むを得ません。大体、事故の大半は免許取得後1年以内に起こるので、順調に免許を取った人は、「こんなものか、簡単、簡単」と思いがちで、「初めての事故が大事故」になりかねません。
【国際免許】日本の自動車免許は優秀なので、お金を払えば国際免許に切り替えられます。ただし、期間が限られているなどいろいろと制限もあるので、結果的には現地で取得する方が早いと言えます。