プラトン:『ソクラテスの弁明』『クリトン』『饗宴』『パイドン』『国家』『ティマイオス』『クリティアス』。理性によって認識できるイデアこそが真実在であると説き、人間の魂は善美のイデアを求める心(エロース)を原動力としてイデア界を想起し、それによって感覚的世界から解放されると考えました。
『ソクラテスの弁明』:ソクラテスはアテネの法廷で訴えられ、裁判によって処刑されましたが、法廷で裁判を見守っていたプラトンが、ソクラテスによる弁明の一部始終を記録、公表したものです。
『クリトン』:獄中のソクラテスに友人のクリトンが逃亡を勧める様子を描いています。
『饗宴』(シュンポシオン):ソクラテスが仲間達と恋の神エロースを賛美する宴会を舞台とする対話篇。
『パイドン』:副題は「魂の不死について」。ソクラテス亡き後、弟子のパイドンが哲学者エケクラテスにソクラテスの最期の様子を語るという形式で書かれています。イデア論と霊魂論(プシュコロギア)が初めて登場する重要な哲学書です。
『国家』:イデア論を中心に、魂の三分説と国家の三階級を連動させ、四元徳で連結しました。これにより、個人の教育と哲人政治の実現が連結され、後世のユートピア文学や共産主義にも多大な影響を与えました。また、末尾にある「エルの物語」は、エルが死後12日間に渡って体験した臨死体験という体裁で語られる霊界探訪物語としても知られます。
『ティマイオス』:政治体制を論じた『国家』の一部の内容[を受ける形で対話が始まり、冒頭でクリティアスがアトランティス伝説について語っています。次いでティマイオスが宇宙の創造、宇宙は無限か否か、四元素などについて語っています。さらに創造者「デミウルゴス」について説明され、現実界はデミウルゴスが創造したイデアの似姿(エイコーン)であるとし、その壮大な宇宙論は万物を動かす生命原理である「宇宙霊魂・世界霊魂」(ラテン語のアニマ・ムンディ)によって秩序づけられているとしています。『ティマイオス』が後世に与えた影響は大きく、豊かなギリシア哲学の知識をユダヤ教思想の解釈に初めて適用したユダヤ人哲学者であるアレクサンドリアのフィロンは、「デミウルゴス」を「神」に置き換え、『旧約聖書』とプラトン哲学が調和的であるとして、モーセがプラトンの思想に影響を与えたと考え、プラトンを「ギリシアのモーセ」と呼びました。新プラトン主義(ネオプラトニズム)の影響を受けたアレクサンドリア学派を代表するギリシア教父オリゲネスも、『ティマイオス』と旧約聖書の「創世記」の世界創造の記述を融合しようとしています。ちなみに、ヴァティカン宮殿の「署名の間」を飾るラファエロの有名な画「アテネの学堂」の中央には、右手を差し上げてイデアのある天上を指すプラトンが描かれていますが、その左手に抱えているのが大著『ティマイオス』です。
『クリティアス』:『ティマイオス』の続きで、アトランティス伝説が出てきますが、中断、未完となっています。さらに『クリティアス』の続編として、『ヘルモクラテス』という対話篇が予定されており、三部作となるはずでした。
イデア:永遠不滅の真の実在。三角形のイデアのように、唯一完全で変化しない実在はイデア界にのみ存在するとし、現実界の個物にはイデアが分有されているとしました。また、プラトンは善(タガトン)のイデアを最高のイデア(イデアの中のイデア)と位置づけました。ここからプラトニック・ラブ(精神的愛)という言葉が生まれました。
エロース:イデアへの思慕。
魂の想起説:花が美しいのは色や形によるものではなく、美のイデアを分有しているからであり、花を見て美しいと思うのは、イデア界で経験した美なるもの・善なるものを、花を見て想起(アナムネーシス)するからであるとします。これを「生得の知識」とも言います。
洞窟の比喩:プラトンは、事物の存在する感覚的世界(現象界)を暗い洞窟に、イデア界を太陽が輝く世界にたとえ、壁面に映る影を真実在と錯覚しているようなものであるとました。感覚を用いて影を見るのではなく、太陽の光の下で心眼(理性的直観)によって真実のイデアを見ることが真理認識なのです。
魂の三分説:魂を三部分に分け、理性が気概(意志)と欲望を統御する時に全体が調和し、正義が実現すると考えました。
ギリシアの四元徳:知恵・勇気・節制・正義。
哲人政治:プラトンは、最高の真実在としての善のイデアを認識できる哲学者が統治者となるか、もしくは統治者が哲学を学んで、防衛者(軍人)階級、生産者階級を統治することを理想の政治のあり方としました。国家を構成する統治者階級、防衛者(軍人)階級、生産者階級がそれぞれ知恵の徳、勇気の徳、節制の徳を発揮する時、正義が成立し、調和の取れた理想国家が実現するとしました。プラトンはシュラクサイ(シラクサ)の王ディオニュシオス2世を指導し、哲人政治の実現を目指すも失敗しました。中国のプラトン的存在である孟子も梁の恵王に王道政治を説きますが、その実現には失敗しました。
アカデメイア:アテネ近郊に開設されたプラトンの学園。入口に「幾何学を学ばざる者、この門より入るべからず」と掲げられてましいた。アカデメイアでの教育内容は後に、言語(ロゴス)に関する文法学・修辞学・弁証法(論理学)の三学、および論理(ロゴス)に関する算術・幾何学・天文学・音楽の四科にまとめられ、これらは自由七科として中世の大学に引き継がれ、近代の大学でリベラル・アーツ(教養科目)の伝統となっていきます。
「西洋哲学の歴史とはプラトンへの膨大な注釈である。」(ホワイトヘッド)