前回はアニーリングのイメージを説明して終わりました。
要約すると、アニーリングは一番深い谷を見つけるための方法論ということでしたね。
今回は谷の底を目指す方法論である変分法についてまずはお話しようと思います。こちらもどこか山岳地帯を想像するのが早いかもしれません。
今、私達は山の上から目の前の谷底を眺めている状態で、その谷の一番深い所へ最も早く到達できる経路を探しているとします。
どうやって移動すればよいでしょう?
オイラーやラグランジュは以下のように述べました。
「かかった時間を経路の関数と見て、微分して0になるものを探せばいい。」
この経路を調和写像と呼び、調和写像が満たす微分方程式をオイラー=ラグランジュ方程式と呼びます。
これは Δf = 0 という形をしています。
ちなみに、今の話は石鹸膜のようなものにも適用することが出来ます。
曲面のひずみエネルギーを曲面の関数を見て微分を考えるのです。
一応、オイラー=ラグランジュ方程式の簡単な例も挙げておきましょう。
どこまでも続く平らな大草原を一定のリズムでのんびり歩くことを考えてみてください。
この時のオイラー=ラグランジュ方程式は
f''(x) = 0
という式であり、これは直線を表しています。
実際、障害物の無い場所なら真っ直ぐ目的地へ向かうのが一番早いですよね。
ここまでお話しした上で、次に出てくるのがEells-Sampsonの定理です。
「ある条件の下で ∂u/∂t = Δu の解 u(x,t) を考えると u(x,∞) は調和写像。」
これも上の例に対応するものを考えると
∂u/∂t = u''
ということになり、いわゆる拡散方程式の特別な場合である熱方程式と呼ばれるものになっています。
(なのでEells-Sampsonの定理の証明方法は熱流の方法と呼ばれたりもするようです。)
この簡単な例の t が ∞ に変化していく様子というのは、正規分布の分散が無限大に大きくなることに対応しています。
そして、これをご覧になっている優秀な皆様なら正規分布というものが統計学、ひいては確率論、さらにひいてはブラウン運動に関連するものである事をご存じでしょう。
そこで今回のシリーズを書き始めるにあたっての思ったことにつながるのです。
アニーリングでのジャンプの様子というのはおそらく確率論的なもので、谷の底への飛び込みというのも確率論的なものなのでしょう。
そこでその様子を確率微分方程式で記述した上で、効率のよいジャンプや飛び込みの方向を決めるためにEells-Sampsonの定理を使えないのかと思ったのでした。
上で出て来た拡散方程式には確率論的には拡散過程が対応することが知られており、熱方程式にはブラウン運動が対応します。
(伊藤の公式などをご存じの方は f(Bt) の期待値を取ったものを微分すると 1/2 のオマケは付きますが熱方程式を満たすことが確認できるでしょう。)
つまりかなり乱暴ですが、
Eells-Sampsonの定理を確率論的に解釈して、山岳地帯の様子に対応する拡散過程に従ったジャンプを続ければ効率よく深い谷を探せるのではないか。
というお話でした。
素人考えの妄想の上、マニアックな話だったかもしれません。
まあ、ブログってこういうものですよね。