コンプライアンスとは法律を学ぶこと?
新人研修のテーマとして「コンプライアンス」を取り入れている企業は少ないかもしれませんし、もし取り入れていたとしてもその内容は「法律知識」が中心になってしまっています。
コンプライアンス=法令遵守
という常識があるので、若者に法令を理解させようとする気持ちはわかります。
しかし、私はことあるごとに「ルール重視」のコンプライアンスに異議を唱えています。
ルールの全てを守ることはできない
私たちはルールを完璧に守っているわけではありません。
黄色信号を無視して横断したことのない人がいるでしょうか?
速度制限違反をしたことのないドライバーがいるでしょうか?
ルールを完璧に守れない以上、ルールとは別の判断が私たちには必要なはずですが、それは誰が教えるのですか?
「そんなことは自分で考えろ」
それでは様々なリスクを生んでしまう時代になっています。
若者の現実認識が年々、仮想化しているからです。
それによって起きる悲しい風景を私はたくさん見てきましたが、多くの人はそのことに気が付いていないようです。
若者はまだこの社会の全貌を知りませんから、知らぬ間に危険なゾーンに入り込んでしまう確率が高いですし、そこから抜け出す方法に気が付かないことも多いです。
それは若者に限ったことではなく、30代、40代、それ以上の人々についても同様に、私は懸念を持っています。
法令知識は最小限に
それぞれの業界、業種、業務内容ごとにリスクは異なります。
リスク管理は、リスクの「重大性」と「発生確率」を数値化して優先順位を考えるのが基本ですが、新人研修では「重大性が高いリスク」を抽出し、それへの対処法を身に着けてもらうことも重要なテーマです。
私がみている感触では、その「リスクの重大性」が職場で認識されていないか、または誤解されていることがありますので、研修実施前にその点を再検討しておくとよいでしょう。
法律はとかく苦手意識を持たれやすいので、難しい言葉をなるべく避け、要点だけをわかりやすく説明できるかがポイントになるでしょう。
法令知識は少なく済めばよいに越したことはありません。
ルールは何のため?
皆さんは
「ルールが何のために存在するか」
について考えたことがありますか?
現代の日本には数千種類の法令があり、行政罰や刑事罰が定められていますが、そのすべてを正しく理解することも解釈することも不可能ですし、だからこそ裁判制度があります。
ルールを完璧に守ろうとすると、ルールを完璧に理解するという発想に繋がりますが、それはどうせ無理。
だとしたらどう考えればいいのか。
それは、「法が守ろうとするもの」をしっかり守ることです。
では、「法が守ろうとするもの」とは?
これを新人研修で教えて欲しいのです。
ルールよりも大事なもの
法が守ろうとするもののなかで、一番大事なもの。おわかりですか?
それは、人の命と健康です。
法制度は人命の価値を基礎として組み立てられています。
殺人なら死刑、傷害なら懲役、のように命をどう傷つけたかで刑の軽重が変わります。
ルールに違反しても、命や健康を損なったか、損なっていないかで、結果がまったく違います。
逆に、たとえ合法のつもりであっても、人命や健康を損なえば、人生が変わるほどの重大なトラブルを招きます。
だから、ルールよりも命や健康を守ることに意識を振り向けた方が、リスク管理上は合理的な場面が多いのです。
逆に、ルールに気を取られて人命を軽視したらどうなるか。
企業の命運を揺るがすほどの恐ろしいことになりえます。
新社会人は失敗を極度に畏れる
新社会人は仕事においてミスをして当然です。
しかし、彼らは失敗を恐れ、無理をし、隠そうとする傾向が年々強まっています。
だからこそ、命と健康をルールよりも優先する意識をしっかり身に着けて欲しいです。
「朝寝坊したら、安全な方法で出勤し、上司に報告してお説教されなさい。」
と私は伝えます。
リスクに対して合理的に向き合うためには報連相が重要。
でも、経験豊富な社会人の皆さんも、実は報連相ができていませんね。
なぜか?
それは心理的な作用が働いているからです。
交通事故で命を落としたり、他人の命を奪ってしまうくらいなら、上司から叱られる方がよほどマシです。会社にも多大な迷惑をかけることになります。
我が子に伝えたいことを伝えましょう
私は自分の子供にもそのように教えました。
「どんなときも命と健康を守るようにしなさい。それさえしっかり行っていれば人生はなんとかなる。」
これがコンプライアンスとリスク管理を専門としてきた者としての「答え」です。
だから、企業が行う新人研修においても、「ルールよりも命」という考え方を重視するよう伝えて欲しいです。
それは企業のリスク管理上も合理的な考え方です。
細かい法令知識を伝えたところで、どうせ理解できません。
重大なリスクに直面したときに適切に対応できるかが重要です。
だからこそ、命に関わるトラブル事例について対話してもらい、丁寧に解説してシミュレーションをしてもらう方がよほど意味があります。
私は四半世紀にわたって中小企業の法務とコンプライアンスをサポートしてきた法務の専門家ですが、一方では心理カウンセラーとしてハラスメントトラブルのカウンセリングも行ってきました。
多くの企業ではいまだに、従業員の命よりも「ハラスメントかどうかの境界線」にこだわっています。
これこそ人命を軽視した「ハイリスクなコンプライアンス」です。
従業員がハラスメントを苦にして自殺したら、パワハラ対策どころの騒ぎではなくなります。
机上の空論ではなく、現実的なリスク管理を念頭に置いたコンプライアンスを私は推奨しています。
新社会人向けに研修を企画されている事業者の皆様には、「命を守るコンプライアンス」をぜひ伝えていただきたいです。
以下では少人数制のコンプライアンス研修をご案内しております。
中小企業や小規模事業所での新人研修としてぜひ取り入れていただきたいです。