「やる気が出ない」は信頼構築のチャンス!辞める前に上司がすべきこと5選

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部下から、勇気を振り絞って「最近、やる気が出ないんです……」と打ち明けられたら、あなたはどう答えますか?

思わず「どうした、元気出せよ!」と励ましてしまいたくなるかもしれません。ですが、実はその一言が、部下の心をさらに閉ざしてしまう引き金になることもあるのです。

「やる気が出ない」という言葉は、あくまでも表面的なサインにすぎません。その背景には、仕事量の多さ、人間関係のストレス、成長への不安、あるいはプライベートな悩みなど、様々な事情が隠れていることが少なくありません。

こうした原因を見極めないまま、「頑張れ」と精神論で押し切ったり、誰にでも同じ対応をしてしまったりすると、状況はむしろ悪化してしまいます。最悪の場合、大切な部下を失うことにもつながりかねません。

そこで本記事では、管理職が実際に直面しがちな5つのケースを取り上げながら、部下の心に寄り添い、前向きな一歩を踏み出すための「神対応」と、関係を悪化させてしまう「NG対応」を、具体的なセリフ例とともにわかりやすく解説していきます。

ケース1:【燃え尽き型】「仕事量が多くて、もう何も考えられません…」

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このタイプの部下は、常に業務に追われており、心身ともに疲弊している状態です。思考力も落ちており、目の前のタスクをこなすのがやっとという状況かもしれません。

👎 NG対応:「みんな同じように忙しいんだ。君だけじゃない。もう少し踏ん張ってくれ」

この言葉は、「自分の苦しさを理解してもらえない」という深い絶望感を与えてしまいます。

特に責任感の強い部下ほど、「自分がもっと頑張らなければ」と無理をしてしまい、さらに自分を追い込んでしまう危険性があります。個人のキャパシティや状況を無視した精神論は、逆効果になることが多いのです。

👍 神対応:「そうか、大変だったな。話してくれてありがとう。まずは状況を整理するところから、一緒にやってみようか」

📝具体的なアクションプラン
1. 共感と安心できる場の確保
「大変だったな」「話してくれてありがとう」と、まずは部下の気持ちに寄り添う言葉をかけましょう。

その上で、落ち着いて話ができる場所に移動し、部下が安心して本音を話せる空気をつくることが大切です。

2. 業務の可視化とボトルネックの発見
部下が抱えているタスクを、まずはすべて書き出してもらいます。

「どの仕事に一番時間がかかっている?」「手が止まりがちな業務はある?」などの質問を通して、負担の大きいポイントや無理が生じている箇所を明らかにしていきましょう。

3. 優先順位の整理とタスクの削減
緊急度と重要度のマトリクスなどを使って、タスクを一緒に整理します。

「これは今やらなくても大丈夫そうだね」「これは私が代わりに対応しようか」など、具体的な引き取りや見直し案を示すことで、部下の心の負担を軽減できます。

4. 明確な休息の指示
「今日はもうこのへんで切り上げようか」「無理しなくていいから、明日はゆっくり休んで」など、明確に休むことをうながしましょう。

必要に応じて短期的な休暇を提案するなど、回復のための時間を確保することも、上司の大切な役割です。

このような対応を心がけることで、部下は「ちゃんと自分を見てくれている」「頼ってもいいんだ」と感じ、少しずつ前を向くきっかけを掴めるようになります。

ケース2:【目的喪失型】「この仕事、誰の役にも立っていない気がして…」

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自分の仕事に意味や価値を見いだせなくなっている部下は、日々の業務を“ただの作業”と感じてしまい、次第にモチベーションを失っていきます。

「何のためにやっているのか分からない」。そんな状態では、どんなに優秀な人でも、力は発揮できません。

👎 NG対応:「そんなことはない。給料をもらっているプロなんだから、与えられた仕事はきちんとやれ」

この言葉は、仕事に意味を求めようとする部下の前向きな気持ちを、「甘え」として否定してしまうものです。

本人は真剣に悩んでいるのに、それを頭ごなしに押さえつけられては、やる気を失うのも当然です。結果的に、貢献意欲も信頼関係も大きく損なわれてしまいます。

👍 神対応:「なるほど、そう感じているんだね。君がやってくれているその仕事が、実はどういう風に繋がっているか、一緒に見てみないか?」

📝具体的なアクションプラン
1. 部下の貢献を“見える化”する
まずは、その業務によって成果を得ている社内の他部署や顧客からのフィードバック(感謝のメールなど)を見せましょう。

「この報告、助かりました!」「分析のおかげで提案が通りました!」といった具体的な声が、仕事が“誰かのためになっている”という実感に繋がります。

2. 全体像をストーリーで伝える
「君が作ってくれたこの資料があったから、営業が的確な提案ができて、あの大型案件が取れたんだよ」というように、仕事がどう繋がって、どう活きているのかをストーリーとして伝えましょう。

自分の仕事がどのように全体の成果に貢献しているのかを知ることで、「意味のある仕事だ」と感じられるようになります。

3. 成果の“現場”に触れる機会をつくる
可能であれば、自分の仕事が活かされている現場を見せたり、顧客や関連部署と直接やり取りする機会を設けたりしましょう。

自分の仕事が“誰かにちゃんと届いている”ことを実感できる体験は、モチベーションを取り戻す大きなきっかけになります。

仕事の“意義”は、最初から見えるとは限りません。だからこそ、上司がそれを「一緒に見つけてあげる」姿勢が、部下にとっては何よりの支えになります。

ケース3:【成長停滞型】「毎日同じことの繰り返しで、成長している実感がありません…」

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このタイプの部下は、ルーティンワークに慣れすぎてしまい、仕事に対する刺激や達成感を感じにくくなっています。

さらに、将来のキャリアについても漠然とした不安を抱えており、「このままでいいのだろうか」と内心で悩んでいるケースも少なくありません。

👎 NG対応:「今の仕事も満足にできていないのに、新しいことができると思うなよ」

この言葉は、成長したいという前向きな気持ちを頭ごなしに否定するものです。部下は、「この組織では挑戦することが許されないんだ」と感じ、やる気を失ってしまいます。

最悪の場合、「このままでは成長できない」と見切りをつけて、転職を考えるようになることもあるでしょう。

👍 神対応:「そうか、もっと成長したいんだね。いい視点だ。どんなことに挑戦してみたいか、聞かせてくれる?」

📝具体的なアクションプラン
1. キャリア志向をじっくり聞く
まずは1on1の時間を取り、「どんなスキルを伸ばしたい?」「どんな仕事に挑戦してみたい?」といった問いかけを通して、部下の思いや将来像を丁寧にヒアリングしましょう。

本人の価値観や志向を知ることで、成長のモチベーションとなる“やりがいの種”を見つけられます。

2. ストレッチ目標を一緒に設計する
現在の業務を土台にしながら、少しだけ背伸びした目標を設定します。たとえば「月に一件、業務改善提案を出してみる」「後輩のOJTを一部任せてみる」といった内容です。

実現可能な範囲でチャレンジの機会を設けることで、日々の仕事にも新たな意味が生まれます。

3. 成長の機会を積極的に提供する
本人の志向に合った社内研修や外部セミナーへの参加を勧めるほか、新規プロジェクトへのアシスタント参加なども効果的です。

「やってみたい」「学びたい」という意欲を、実践の場で形にできるよう後押ししましょう。

部下の「成長したい」という声は、組織にとっても大切なポジティブサインです。その芽を摘むのではなく、伸ばすための環境づくりこそが、上司の真価の問われるところです。

ケース4:【人間関係型】「チームの〇〇さんと、どうしてもうまくいきません…」

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このタイプの部下は、特定の同僚との人間関係に強いストレスを感じており、精神的にも大きく消耗しています。

その影響で、仕事に集中できなくなったり、自信を失ってしまったりすることもあります。さらに放置すれば、チーム全体の雰囲気や生産性にまで悪影響が及ぶ可能性もあるでしょう。

👎 NG対応:「いい大人なんだから、うまくやってくれよ。こっちに持ち込まないでくれ」

このような対応は、「上司は問題を見て見ぬふりをする人だ」という印象を与えてしまいます。

心理的安全性が損なわれるだけでなく、他のメンバーにも「悩んでも相談できないんだ」と不信感が広がり、結果的にチームの結束力そのものが崩れてしまう恐れがあります。

👍 神対応:「そうか、それは仕事がしづらい状況だな。誰にも言わずに、まずは君がどう感じているか、客観的な事実と合わせて具体的に聞かせてくれる?」

📝具体的なアクションプラン
1. 個別ヒアリングの徹底
まずは落ち着いた環境で、部下本人から話を聞きましょう。「いつ、どこで、何があったか」という事実ベースで整理し、感情だけに流されずに状況を正確に把握することが大切です。

そのうえで、もう一方の当事者からも同様にヒアリングを行い、双方の認識や背景のズレを客観的に確認します。
※ここでの注意点:どちらか一方の話だけを鵜呑みにしないこと。

2. 事実に基づく冷静な介入
もし問題が、業務の進め方や役割の不明瞭さに起因しているのであれば、プロセスの見直しや明確なルールづくりによって改善できる可能性があります。

人間性の衝突ではなく、仕事の仕組みで解決できることはないかを一緒に探ってみましょう。

3. 関係性・環境の調整
必要に応じて、席の配置換えや、業務フローの変更などを検討します。

また、上司が間に入って連携時のやりとりをサポートしたり、定期的なフォロー面談を設けることで、関係の再構築を助けられます。

人間関係の悩みは誰にとってもデリケートな問題ですが、真摯に向き合うことで、部下に「この職場なら信頼して相談できる」と感じてもらえるようになります。

それが、結果としてチーム全体の安心感と一体感にもつながっていくのです。

ケース5:【プライベート起因型】「(詳細は言えないが)家庭の事情で、仕事に集中できなくて…」

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このタイプの部下は、家族の健康問題や介護、あるいは予期せぬ家庭内のトラブルなど、プライベートな問題に強いストレスを感じている状態です。

頭の中がそのことでいっぱいになっており、仕事との両立が難しくなっているケースも少なくありません。

👎 NG対応:「何があったんだ?詳しく話してくれないと、こっちも対応できないよ」

この言葉は、相手の事情を根掘り葉掘り聞き出そうとする姿勢に映ってしまい、プライバシーを侵害するものとして受け取られがちです。部下は「詮索された」と感じて心を閉ざし、上司に対する信頼を失ってしまう可能性があります。

その結果、問題がさらに深刻化しても相談できなくなり、孤立してしまうリスクすら生まれます。

👍 神対応:「話してくれてありがとう。話せる範囲で大丈夫だからね。会社として何かサポートできることはあるかな?」

📝具体的なアクションプラン
1. プライバシーへの配慮と感謝の姿勢
まずは「打ち明けてくれてありがとう」と伝えましょう。そして、「無理に詳しく話さなくていいからね」「話せる範囲で大丈夫」と、部下のプライバシーに配慮する姿勢を明確に示します。

このひと言が、安心感と信頼感につながります。

2. 利用できる制度の案内
「たとえば、うちの会社には時短勤務や時間単位の有給、介護休暇の制度があるんだけど、知ってるかな?」といった形で、客観的かつさりげなく制度の選択肢を伝えましょう。

自分で選び取れる選択肢を提示することで、部下が「助けてもらえる道がある」と前向きになれるきっかけをつくれます。

3. 期待値の一時的な調整と継続的サポート
「今は大変だと思うから、しばらくは業務量を調整して様子を見よう」など、心理的・業務的な負担を軽減する提案を行いましょう。

必要であれば、人事や社内の相談窓口との連携も視野に入れ、「ひとりで抱え込まなくていい」と伝えることが大切です。

私生活と仕事、どちらも大切だからこそ、上司がそのバランスを尊重し、サポートする姿勢が、部下の信頼と安心につながります。

「この職場は、人生全体を理解しようとしてくれる場所なんだ」と感じられるかが、働き続けたいと思える職場かどうかの分かれ道になります。

まとめ

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部下の「やる気が出ない」というサインには、ひとつとして同じものはありません。

上司に求められるのは、誰にでも通用するような「頑張れ」という励ましではなく、それぞれの状況に丁寧に耳を傾け、背景にある原因を見極めた上で、適切に寄り添う力です。

今回ご紹介した“神対応”は、特別なスキルや才能を必要とはしません。部下を一人の人間として尊重し、「今、何に悩んでいるのか」「どうすれば支えになれるか」を真摯に考える姿勢こそが、何よりも大切なのです。

まずは、今日から、できることをひとつでも良いので実践してみてください。あなたのその一歩が、部下との信頼を育み、チーム全体を強くする基盤となるはずです。

なお、当社では、社員の「モチベーション」を可視化するアンケート調査サービスを行っております。ご関心のある方は、お気軽にお問い合わせください。

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