「なぜ、あの人はいつもあんなに攻撃的なんだろう?」
「なぜ、私はこんなに仕事が遅いんだろう?」
職場でトラブルや悩みがあると、私たちはつい「原因(なぜ?)」を探してしまいます。しかし、過去や性格といった「変えられない原因」を掘り下げても、多くの場合、ため息が増えるだけで解決には至りません。
そこで取り入れたいのが、アドラー心理学の核心である**「目的論」**という考え方です。視点を「過去」から「未来の目的」へと180度シフトさせるだけで、職場の景色は驚くほど変わります。
1. 相手の「不機嫌」には目的がある
不機嫌な上司や、協力してくれない同僚。彼らの行動を「性格の問題」と片付けてしまうと、私たちはただ耐えるしかなくなります。
しかし、目的論ではこう考えます。**「その人は、何らかの目的を果たすために、その態度を選択している」**と。
怒鳴る上司: 「指導するため」ではなく、「怒りの感情を使って、相手を屈服させ、自分の支配下におくため」
返信が遅い同僚: 「忙しいから」ではなく、「後回しにすることで、自分の作業優先度を誇示するため」
このように「目的」をクールに分析できるようになると、「あ、今は私をコントロールしようとしているんだな」と一歩引いた視点を持てます。相手の感情に飲み込まれず、冷静に対処するための「心の防波堤」ができるのです。
2. 自分の行動を「目的」で解き明かす
目的論は、自分自身の行動を整理するのにも役立ちます。例えば、「大事な会議で意見が言えない」という悩み。
原因論: 「自分に自信がないから(過去の経験や性格のせい)」
目的論: 「意見を言って否定されるリスクを避けるために、『自信がない自分』を作り出し、発言しないという選択をしている」
「性格だから仕方ない」と諦めていたことも、「私は『傷つかないこと』を優先していたんだな」と目的に気づくことで、「じゃあ、少しずつリスクを取ってみようかな」と新しい選択肢が見えてきます。
3. 「犯人探し」より「これからの解決」を
職場でのミスが起きたとき、多くの組織は「なぜ起きたのか?」という原因究明に時間を割きます。もちろん再発防止には必要ですが、人間関係においては、原因追及は「犯人探し」になりがちです。
アドラー流の心の整理術では、意識をこちらに向けます。
「今起きたことを踏まえて、次はどんな関係を築きたいか?」
目的を「円滑な業務遂行」や「心地よいチーム作り」に置けば、誰かを責めるエネルギーを、具体的な解決策へのエネルギーへと変換できるはずです。
実践のヒント:まずは「体」を整えることから
心理学のテクニックを職場で実践するには、実はかなりの「心のエネルギー」を消費します。
心がヘトヘトな状態では、冷静に「目的論」で考える余裕は生まれません。
もし、どうしてもイライラが止まらないときは、睡眠不足ではないか、食事がおろそかになっていないかを振り返ってみてください。しっかりと休み、心身の土台を整えること。それ自体が、アドラーの言う「困難を克服する勇気」を持つための第一歩になります。
おわりに
「原因」は過去にあり、変えることはできません。
でも「目的」は今ここにあり、自分の意思で変えていくことができます。
明日、職場で誰かの言動にモヤッとしたら、心の中でこう唱えてみてください。
「この人の目的は何だろう? そして、私のこれからの目的は何にしよう?」
その一言が、あなたを自由にしてくれるはずです。