転職によって自宅と職場がぐっと近くなり、私の昼休みがまるで自由時間のように変わりました。これまでは昼休みといえば、診察室の隅で机に突っ伏して、ひとときの安らぎを求めてうとうとするのが関の山。患者さんを診る合間のわずかな休息時間は、実際には体も心もほとんど休まらず、むしろ疲れを引きずったまま午後を迎えることが多かったのです。でも今では、昼になると職場を抜け出して家へ戻ることがちょっとした楽しみになり、仕事の中での「第二のスタート」のように感じられています。たかが数百メートルの距離ですが、家に帰るという行為がこれほどリフレッシュに繋がるとは、以前の私には想像もつきませんでした。
まず家に着くと、最初に布団に飛び込んで仮眠を取ることがほとんどです。やはり、自宅のベッドで寝るのと職場で机に突っ伏して寝るのとでは大違い。たとえ10分程度の短い昼寝でも、家の布団で仰向けになって目を閉じると、体がしっかりと休まっていくのを感じます。仮眠の時間はわずかですが、昼間の仮眠は「午後の自分」をリセットし、気持ちをリフレッシュさせてくれる大切な時間。起きるとまるで新しい一日が始まるかのように、気持ちが切り替わるのがわかります。布団の柔らかさに包まれて、「自分も患者さんに負けないくらいケアされている」と、ふと安心感すら感じるひとときです。目覚めた瞬間に体中が軽くなった気分で、「よし、これで午後も頑張れる!」と自然にやる気が湧き出てくるのです。
昼寝の後は筋トレの時間です。私は以前から筋トレを続けており、今年の目標として「懸垂ができるようになる」というチャレンジを掲げています。懸垂は思っていた以上に背中の筋力が必要で、少しずつ懸垂のための筋肉を鍛えています。この取り組みが、小さな自信につながっているのも事実です。「今日も少しずつ懸垂に近づいている」と感じながらのトレーニングは、やがて目標に到達する日を夢見させてくれるものです。筋肉が少しずつ反応し、腕の力が日に日に増していくのを感じると、この昼休みの時間がただの休息以上のものだと実感します。目標に向かって一歩一歩進んでいるこの積み重ねが、午後に患者さんと向き合うためのエネルギーにもなっていると感じます。
その後は、外に出て軽く散歩をすることも習慣のひとつになりました。昼の光を浴びることがこんなに気分転換になるとは、以前の私は知りませんでした。診察室の中で仕事をしていると、空調の効いた閉鎖的な空間にいるせいか、季節の変化を感じにくく、気持ちもややこもりがち。しかし、昼に外に出て太陽の光を浴びることで、体内時計がリセットされるような気がして、気持ちもすっきりとリフレッシュされます。歩きながら少しずつ空気に触れ、季節の風を感じると、自分の心が日常の喧騒からふと離れて「自然」という広がりに包まれるのです。秋の風がさっと頬をかすめると、気持ちまで秋晴れになり、午後の仕事への意欲が自然と湧いてくるのが不思議です。さらに、自宅にいる間にちょっとした片付けをするのも密かな楽しみです。以前は仕事が忙しすぎて、家の中がどうしても散らかりがちで、気がつけば休日にまとめて片付けるということが多かったのですが、昼休みの時間を使ってリビングやキッチンを少しずつ整えておくと、なぜか自分の頭の中まで整った気分になれるのです。日々の診療の合間にさっと片付けをすることで、「今やるべきことを、今やる」という感覚が心地よく感じられます。このちょっとした片付けが、午後も清々しい気持ちで患者さんに接するための下地を作ってくれているのかもしれません。
こうして昼休みを自分の好きなように過ごせるようになったことで、毎日の生活が少しずつ豊かに感じられるようになりました。以前の昼休みがただの「仕事の合間の時間」だったのに対し、今ではこの時間が自分を癒し、整え、リフレッシュするための大切なひとときとなり、午後の診療にも心身ともに準備万端で臨めるようになっています。振り返ってみると、この小さな変化が私の生活に与えた影響は大きく、体も心も、余裕をもって毎日を楽しむことができるようになったのだと気づかされます。自分がリフレッシュしてこそ患者さんにもより良いケアが提供できることを、しみじみと実感しているところです。転職して職場が近くなり、昼休みが「プチ贅沢」の時間に変わったことで、人生が少しだけ豊かになったような気がします。