【連載小説】第44話 代償の代価

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都内の古びたマンション。

狭いワンルームの空気は、どこか重たかった。

かつての広い部屋とは、まるで違う。

けれど——

その違和感すら、
美涙にははっきりと見えていなかった。

結城の視線が、
すべてを覆い隠していたからだ。

『もう3日も休んでるのよ……』

『まだそんなこと言ってるのか』

軽く笑う。

『あんな店にいる方がもったいない』

『君にはもっと上がある』

その言葉は、
優しくて——

どこか逃げ場がなかった。

『でも……誰にも言わずに来ちゃって』

胸の奥に、小さな棘が刺さる。

『戻ってみろよ』

『絶対に引き止められる』

『今がチャンスなんだ』

迷いを断ち切るような声。

『……わかった』

そう言った瞬間、
何かが決まってしまった気がした。

——そして翌日。

新宿のクラブ『G』。

豪華なはずの店内は、
どこか古びていて、息苦しかった。

『今日から出勤できるかな?』

笑顔の裏に、
圧のある声。

『まだ何も聞いていませんが』

その一言で、
空気が変わる。

『後で説明するから』

その投げやりの言葉がどうしても馴染めそうにないと思った。

そして美涙は逃げるように店を出た。

——違う。

ここじゃない。

そう思った。

けれど——

『もうバンスしてる』

結城の言葉が、すべてを変えた。

『……バンス?』

『前借りだよ』

時間が止まる。

『俺が受け取った』

その一言で、
すべてが崩れた。

『勝手に……?』

怒りよりも先に、
絶望が来た。

『俺のためだと思ってくれ』

その声は、
もう優しくなかった。

その時、ようやく気づいた。

——最初からお金が目的だったのだ。

けれど逃げるには、
もう遅かった。

『……いくら借りたの?』

『50万』

短い沈黙。

『わかった』

その一言で、
すべてを引き受けた。

——翌日。

美涙は一人で店に向かった。

『50万、ここにあります』

冷静な声だった。

『これで、終わりにしてください』

その瞬間——

ようやく、自由になった。

代わりに、
何か大切なものを失った。

——電話。

『……美月ちゃん?』

その声は、かすれていた。

『ごめんね……』

『今、駅前にいるの……』

『動けないの』

その言葉の奥に、
すべてが詰まっていた。

助けて——

そう言えない声だった。
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