【連載小説】第19話 王座の条件

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『ゴールド』に入ってから三ヶ月。
雅子の席には、常に人の輪ができていた。
売上表の一番上に
その名前が載った日、
奈那子は一度も視線を合わせなかった。

『大越さん、ねぇ、今日お店が終わった後どこかへ行かない?』
と雅子は神妙な顔で誘った。
『珍しいね、雅子ちゃんからなんて』
大越の声が少し弾む。
雅子は笑った。
今日はおとすと決めていた。
でも、それは身体ではない。。。

雅子がターゲットにしたのは、
馴染みの大越さんだった。
というのも大越さんは小さな町工場から今や日本を代表する企業の
経営者となり財界でも有名人だった。
大越は最初に会った時からどこか癒される不思議な魅力があった。
そしてシャンパンや高級ワインなど言いなりであけてくれる
言わばホステス好みの太客だった。

静かなバーで、
雅子はゆっくりと過去を語った。
貧しさ。
恐怖。
二度と戻りたくない日々。
語り終えた時、大越はグラスを握りしめていた。
『そうだったのか、雅子ちゃんも苦労したんだね。
いや実は今日雅子ちゃんからアフター誘われて
いいことあるのかななんて期待してたんだよ。
でも今日はいい話きかせてもらったよ。
生きることの貪欲さっていうのかな、
俺は努力を惜しまず生きてる人間が男女問わず好きなんだ』
その目は、欲望ではなく尊敬だった。
雅子は内心で息を吐く。
、、、勝った!

『大越さんありがとう。こんな話を誰にも言ったことがなかったの。
だって哀しすぎるもの。実際の話だって誰も信じてくれないと思うし』
『いや俺は雅子ちゃんを会社あげて応援するよ』
その一言は
軽い酔いの勢いではない。
財界の男が
一人の女に賭ける宣言だった。

目的は果たさなかった。
だが、大越は帰っていった。
満足げに。
触れられなかったからこそ、
手に入れたくなる。
愛を与えれば欲が動く。
欲が動けば、王座は近づく。
ゴールドの女王は、
もう遠くなかった。

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