【連載小説】第18話 金色の王国

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午後6時
『ゴールド』のシャンデリアが一斉に灯る。
総勢50人の女性が同時に息を潜めた。
香水の香りが混ざり合い、
空気そのものが甘く重たい。
ここは店ではなく
金色の王国だった。

店長から細かい指示や注意事項があり
今月のナンバーワンの発表!
『ナンバーワンは今月も奈那子さんです!』
と純白の着物の彼女は立ち上がり賞金をもらった。
年齢は30歳代の半ばくらいだろうか
スリムな体にボリュームをもたせた髪型が妙にアンバランスだったけれど
その仕草や体から発する色気は男性が虜になってしまう魔法の力があるようだった。

そしていよいよオーナーの環ママの月に一度の教示が始まった。
環ママが立ち上がると全員の背筋が伸びた。
『みなさん、愛と欲の関係、わかる?』
微笑んでいるのに、目は笑っていない。
『愛されない女に、欲は集まらないの』
誰かが息を呑む。
『だから努力しなさい!甘えた瞬間、ここでは終わりよ』
その声は柔らかいのに
氷のように静かだった。
『その努力は裏切らないわ、さあ、今月も楽しみましょう』
短い話しだったがその内容はかなり深かった。

そして最後に新人紹介が始まった。
『さて今月の新人紹介に移ります。まずは雅子さんどうぞ。
雅子さんはあの老舗のラビアンローズのナンバーワンで
今日からここのメンバーとなりましたので宜しくお願いします』
『みなさん宜しくお願いします』と雅子は一礼した。
その瞬間、
最前列の奈那子がゆっくりと拍手をした。
音は小さい。
だが視線は鋭い。
それは歓迎ではなくて
宣戦布告だった。

雅子は名刺をすべて前のお店に返した。
だが雅子の中からは消えていない。
銀座に生きる女は
感情だけでは動かない。
データは財産でもあり武器にもなる。

開店と同時に
白い胡蝶蘭が次々と運び込まれた。
それはまるで季節外れの雪のようだった。
奈那子の視線が、冷たく滑る。
そして雅子は誰にも気づかれず微笑んだ。
これからが本番だ!
奈那子は立ち上がり、
雅子の横を静かに通り過ぎた。
その肩が、わずかに触れる。
偶然ではない。
金色の王国は、
新参者を簡単には歓迎しない。
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