ミステリの女王アガサ・クリスティーが当時、別名義で出版したという隠れた名著が本書。
ポアロやマープルといった名探偵は登場しない。
密室殺人も起きない。
中年期の夫婦問題を描いた作品です。
本書を読んだきっかけは、同世代の女友だちから勧められたから。
実は彼女は夫の不倫や、それにともなう離婚の危機などに直面しており、かねてから私は相談に乗っていました。
(なにせ、私自身離婚しており、男性側の見解を話せる、という点で、相談の適任者なのだ)
聞けば聞くほど、彼女は悪くなく、夫に責任があり、彼女自身もそう思っているものの、本作『春にして君を離れ』を読んで、その自信が大きくぐらついたというのです。
主人公の女性は、ひょんなことから長旅に出ることに。
そこで、これまでの夫との関係や、子どもたちの関わり方に思いをはせる。
彼女は家庭を守るために必死で、自分が信じる正しさを全うしよう、よき妻、よき母であろうと、夫を、子どもたちを導いてきた。
しかし、それは本当に、家族が望んでいたことだったのだろうか?
私は、夫や子どもたちの気持ちを汲んでいたのか?
私が導いてきた選択は、本当に正しいものだったのだろうか?
そんな疑問が次々と浮かび……
私の友人は、本作で繰り広げられる主人公の独善的な振る舞いを見て、
「これ、私だ……」
と痛切に感じた、とのこと。
正しいと信じてやってきたことが、知らず知らずに夫の不興を買っており、それが今の夫婦の危機を招いていたのではないか……。
男性である私からすると、主人公の女性はただただ、いやな女。
もはやサイコパスで、まったく共感も感情移入も出来ない存在でしたが、実は
「私もそうかも…」
と思ってしまう既婚女性は多いのかも?
ある意味、他のミステリ作品より「ゾク」っとする一冊です。
TOP画は、本作のイメージより離れて、お洒落なワンピース姿で描いてみました。
イラストのご依頼は、メッセージ、または見積もりにてご連絡ください♪