これまで、外部の専門家を「経営者の立場で、探して入れる側」の時もあれば、私自身が外部の専門家・PMOとして、クライアントのプロジェクトの中(部署や特命チームへ)に入ることも数多く経験してきました。
その両方をやっている立場から見て、外部の専門家が入ってもうまくいかない場合というのがあります。これには、スキルのミスマッチといった表面的な問題や、外部の専門家の質や能力の話になることもありますが、そこへ至る前に、より根本的な問題があります。それは──
外部に依頼するための業務設計が存在しない。
うまくいかない外注業務の多くは、そこが詰まっている場合が多いです。
外部に何を依頼するのか、定義されていない
外注がうまくいかない案件では、何を業務として外部に依頼するかが、明確に切り出されていない場合があります。
事業全体の中で外部に切り出すべきスコープは何か。どこからが社内責任なのか。外部はどの深さで関与するのか。事業スコープのコンセプトとの関係性は作れるか。これが整理されないまま契約が結ばれると、コミュニケーションが成立しなくなり、衝突を生じさせ、プロジェクトは歪み始めます。
それは、業務設計がないまま、外注先の肩書きと経歴だけを頼りに「この人なら何とかしてくれるだろう」と依頼してしまう。これが問題の始まりです。
※何も考えず外注へ丸投げして問題ない場合もありますが、それはそれとして、ここでは横においておきます。
アサインと起用
アサインという言葉(行為)がありますが、「アサインする」は、すでに設計された体制や役割が前提にあり、決まった枠に人を配置する行為です。誰が何を担当するかが整理された後の、実行フェーズに近い。つまり、業務設計での役割定義が終わった後の配置といえます。
一方、外注の業務設計は、起用するというニュアンスに近い。この「起用する」は、事業やプロジェクトの目的やコンセプトを踏まえ、誰を、どの位置づけ、どのように関与させるべきかを判断する行為です。そこには、探索、見極め、期待値の調整、役割設計といった意思決定のプロセスが含まれます。これは「定義がまだ固まっていない段階の意思決定」といえます。
アサインは「パズルのピースをはめる作業」で、起用は「パズルの絵そのものを描く(=業務設計)プロセス」と言えるでしょうか。
外部の専門家は「答え」ではない
外注がうまくいかなくなる可能性の高い案件は、業務設計がされず、判断軸が定義されていない場合が多いのです。
この設計がないまま、「とりあえず外部に入ってもらおう」と話が進んでしまうと、外注がうまくいくかどうか以前に、構造的に厳しいスタートになります。
これが整っていれば、外部の専門家は加速装置になります。整っていなければ、どれだけその外部の専門家が優秀でも、混乱を増幅させる存在になりえます。外注は「答え」ではなく「構造を映す存在」であり、そのプロジェクトの設計状態を、そのまま映す鏡だといえます。
成果物が明確な外注も、同じ構造で歪む
ここまでPMOのような伴走型の外注について述べてきましたが、ここで言う「外部への依頼」は伴走型支援に限りません。
図面やWebサイト、商品やサービスシステムなど、成果物が明確な外注でも、その成果物のコンセプトと制作進行における多様なリスク分析について、どこからを社内の判断とするのかの整理がないまま依頼される外注は、成果物が明確であっても、構造的には同じ歪みを起こします。
業務設計プロセスを言葉にする価値と共通理解
人間ですから、言葉一つの意味合いをどのように解釈するのかは、それぞれ異なります。だからこそ、「何を依頼し、何を社内で担うのか」を業務設計として明文化し、外部と共有する。このプロセスがあって初めて、外部の専門家は本来の力を発揮できるのです。